ハンガリーでマタニティライフ ( 4 ) 緊急入院でサバイバル

ハンガリー在住 6 年目の駐在妻 ゆうさん ( 女性、30代 ) の連載 『 ハンガリーでマタニティライフ 』 第四回目となる投稿です。日本人夫婦がハンガリーで妊娠、出産するまでの体験談を連載で綴っています。今回は、突然の出血で緊急入院、そこからの病院サバイバル生活をお届けします。

ハンガリーでマタニティライフ ( 3 ) 周囲の環境

2019.02.22

ハイリスク妊娠とわかって

Photo by Yuri

妊娠 25 週目 の健診で、担当医から前置胎盤だと告げられました。母体と胎児を繋ぐ胎盤が、正常よりも低い位置にあり、子宮の出口を覆ってしまう状態です。そのため、Veszélyeztetett terhesség ( ハイリスク妊娠 ) 扱いとなったのです。

そこからはいろんなことができなくなりました。今までは、医師からの制限はほとんど無し。自分の判断で行動していましたが、この時からはそうもいきません。入院の必要は無いものの、大出血に備えて「 病院から遠く離れないように 」とのこと。

2-3 時間のフライトでも飛行機はダメ。車移動は、何かあれば病院に直行できるので、許可はされました。ただし、病院があるブダペスト市内に留まるのが原則。

いつ何が起こるかわからない状態で不安でしたが、「もしも出血したら」に備えて、病院では細かな指示をもらいました。

私のようなハイリスク妊娠の場合は、どこの病院でも診てもらえるわけではありません。新生児集中治療室 NICU ( Neonatal Intensive Care Unit ) があり、母親に輸血などの処置ができる設備があるのは国立の大病院だけなのです。そのため、どこの病院へ行けばいいか、そこへは自宅からどの道順で行けるか、どこに駐車場があって、どの入口から入れるか、夜中の駆け込みはどうするか、など具体的に教えてもらいました。

「あれ?ハイリスクの緊急事態では、救急車は呼べないの?」と思われた方がいるかもしれませんね。もちろん、呼んでも構いません。しかし、実際のところ、救急車はあてにならないことがあるのです。タイミングが悪いとすぐに来てくれないこともあります。救急車の到着を今か今かと待つぐらいなら、自家用車で行く方が確実な場合も。

車がない在留邦人の方もいらっしゃることと思います。その際は、予めお医者さんに相談し、救急車以外にも病院への移動手段、最短ルートを想定しておいてください。

真夜中の大混乱

お出かけの際は、パスポートは忘れずに  Photo by Yuri

そして妊娠 28 週目 ( 7カ月目 ) の真夜中、恐れていた出血が…。

「もしも」をどんなに頭でシュミレーションしていても、実際に動いてみると手間取ります。リハーサルしておけばよかった…と痛感。特に外国で緊急の場合、言葉が違うと情報がスッと頭に入って来ず、パニックになります。避難訓練ならぬ出産前訓練はしておくべきだなと思いました。

例えば、できるだけ早い段階で、担当医から教えてもらった病院へのルートを夫と一緒に事前に通ってみるのは大事。実は、私たちは本番に道を間違えてしまったのです。第二子の出産といえど、普通に陣痛が来たのではないので、夫婦ともに大慌て。その状態で不慣れな道を行くのは至難の業でした。

その他、まだ3 歳の娘を家に置いて夫と二人で病院には行けません。真夜中だったこともあり、夫は寝ている娘を抱え、私は自力で歩いて車に乗り込み病院へ。この時、深夜も想定して、予めご近所さんに娘をお願いしておけばよかった、と悔やみました。

そしてこの出発時点で私は大きなミスを犯したのです。それは、、、パスポートの不携帯!

一瞬、要るかもしれない…と頭をよぎったのですが…。

「必要なら、後で取りに戻ればどうにかなる!それより早く私を病院へ運んで~!」という気持ちが先行し、結局、身一つで出発したのです。このせいで、後から大変なことになるとは知らず…。

ハンガリーをはじめ、海外で出産される方は、ビザや住所カードだけでなく、常にパスポートを携帯しておくことをおすすめします。一体何が起こったのか、その珍事件は次回、息子が生まれた時の体験談で綴ります。

幸運にも、妊婦健診を担当していたプライベートクリニックの医師は、その日、駆け込んだ病院に当直していました。ハンガリーの産婦人科事情は別記事をご覧ください。

ハンガリーの妊婦健診制度 ( 3 ) 特殊事情

2019.01.18

今までの経過を知っている先生がいたことで少し安心。幸い、出血は少なく、止まったため、しばらく入院して様子を見ることに。

サバイバル入院

ある日の夕食は、まさかのパンとサラミのみでした。 Photo by ゆう

国立病院への入院初日、私たち夫婦は日本のサービスとは全く違う環境に驚きの連続でした。例えば、以前に当サイトの体験談にもありましたが、病院食が貧相なことは衝撃。リアルに自分が体験するとかなりショックな出来事でした。

初日は、病院に駆け込んだ事情もあり、食料や水も十分に持参しておらず。支給されるものも大したものはありません。自分で買いに行きたくても、元気に動ける体ではなく、院内のどこに売店があるのかもわかりません。翌日に夫が来るまで耐えるしかありませんでした。

お友達からの差し入れは、身にも心にも沁みました。 Photo by ゆう

妊婦であろうと、産後の授乳をする母であろうと、食事内容に変化なし。夫は仕事と娘の育児、家事でてんてこ舞い。代わりに現地のママ友たちが日替わりで食事を運んでくれて、本当に救われました。夫婦ともども、皆さんの助けには感謝してもしきれないです。

その他、当地での入院は、トイレットペーパー含め、何でも自宅から持ってこないといけません。ハンガリー人の妊婦さんたちは、スーツケースに生活必需品を大量に詰めて病院に来ていました。ここでは、それぐらいの準備が必要なようです。

この環境の中、出産までの1ヶ月、産後から退院までに1ヶ月の合計2ヶ月を過ごしました。その中で、特に印象に残った入院体験を 3 つお話しします。

ナースコールがない件

私のところには、緊急事態に看護師さんを呼べるナースコールなし! 実際にモノ自体はあるようです。おそらく数がかなり少ないのか、何度頼んでも今はないと付けてもらえず。結局、最後までナースコールボタンはありませんでした。

では、緊急時はどうしていたのかといいますと…

どうしても看護師さんの助けが必要な時、そういう場合に限って周りには人がいません。ボタンがない上に、私は起き上がれない状態。どうしよう、と必死に頭をひねりました。

その時、ベッドの横にあった小さな棚テーブルが目についたのです。素材はロッカーのような感じ。叩けば大きな音が出るのではと思い、バンバンと手で打ちました。すぐに気づいて、スタッフが飛んできてくれました。

しかし、かなり原始的な手段でうるさく、周りにも迷惑をかけるので、ナースステーションの電話番号を教えてもらうことに。

そして、別の日。また激痛が走り、今度は教えてもらった電話番号にかけました。すると、いつもの看護師さんの寝起きな声が聞こえてくるではないですか…。なんと、夜勤明けで家で寝ていたそう。まさかの個人の携帯電話番号を教えてくれていたようです。結果的に、電話に出た彼女がナースステーションの看護師に知らせてくれたのですが、かなりビックリでした。

プライベートが丸見えな件

入院していた部屋 Photo by ゆう

退院するまで本当につらかったのは、部屋に仕切りカーテンがなかったこと。

日本の病院とはあまりにも違うので、個室をお願いしたのですが、妊婦用ではないと入れてもらえず。しぶしぶ大部屋で入院生活を送ることになりました。その部屋では妊婦ばかり 6 人が一緒に生活をするのですが、各々の空間を作るためのカーテンがありません。

24 時間ひとりになれる場所はなく、誰かがお見舞いにくれば全てが筒抜け。旦那様方も来られますから、見知らぬ男性が部屋を出入りします。全く落ち着けません。

普段なら気にしないようなことでも過敏になってしまうことも。

例えば、体臭。食べる物も違いますから、ハンガリー人のそれと日本人は違って当然。ただ不慣れな匂いを四六時中嗅いでいるとかなりきつい。入院時は夏場で、クーラーが効いていない部屋だったので、皆さん汗をかきます。それが更に匂いを増幅。

また、つわりで苦しむ妊婦さんにも仕切りがありません。そのため、吐いている姿までもが見えてしまうことがあり、こちらまで気分が悪くなることも。

音や匂いでイライラしてしまって本当につらかったです。イヤホンを持参して、音楽を聴いたりしてなるべく外的刺激を避けるようにしました。

見間違えられる件

ちょうど同じ頃、中国人の女性が入院していました。彼女はすでに出産を終えた状態。私は出産前でした。一見すればわかりそうな気がしますが、なんと、医師は私を産後の中国人女性と間違えたのです。

出産後のお腹の状態を確かめるために、その先生はまだ息子が入っている私のお腹をぐっと押そうとしました。驚いた私は思わず払いのけ、後ろに控えていたドクターたちも「その人はまだ妊娠中!」と言ってくれたおかげで、深刻な事態にはならず。

以前、お見舞いに来てくれた友人が、中国人女性の部屋に案内された時は笑い話になりましたが、これは笑えません。この出来事から間違えられることに物凄い恐怖を覚えてしまったのです。

ハンガリー人にとって、アジアの人たちの顔は区別しにくいことは理解できます。しかし、ここは病院。間違ってすみません、では済みません。医療スタッフも不足してるようですし、実際にスタッフの入れ替わりも激しかったのは事実です。全てのスタッフが私のことを知っているわけでもありません。

見間違えられたあの日から、注射や薬をもらう時も自分で「これは本当に私のためのものか」を念入りに確かめるように。

ネガティブキャンペーンのようですが、これから当地で出産される方々に恐怖を与えるつもりではありません。「 自分自身で気を付けなければ 」と知っているだけで防げることはたくさんあると思うのです。それに、言葉の壁があっても寄り添ってくれる病院スタッフはちゃんといます。怖いことばかりではありませんから、心配しすぎないでくださいね。

良いように例えるなら、ハンガリーでの入院生活はバックパッカーでホステル住まいをしているような感覚を味わえます。最初は、「えぇぇ… 」と思っていたことも慣れてしまえば、何とかなります! ちょっとした冒険気分で挑めば、仰天な環境も面白く感じてくるはずですよ。


ハンガリー暮らしの健康手帖では、読者の皆様の体験談をお待ちしております!自分の経験が誰かにとって価値ある情報になるかもしれません。海外暮らしに役立つ知恵をぜひ当ブログお問合せからご投稿ください☆

ABOUTこの記事をかいた人

ゆう

ハンガリー在住 6 年目の駐在妻。夫と 3 歳になる娘、愛猫と暮らしています。当地で第 2 子を妊娠、出産したばかりです。趣味は、ハンガリーの民芸ビーズ。現地で師匠から習得しました。ビーズでアクセサリーなど作ることが大好きです。