ハンガリーの妊婦健診制度 ( 2 )

今回は、第 1 、第 2 、第 3 トリメステル ( 初期、中期、後期 ) のそれぞれにおける、健診や検査をより具体的にご説明していきます。ハンガリーの制度をおおまかに把握していただければ幸いです。


ハンガリーの妊婦健診制度 ( 1 )

2019.01.11

第 1 トリメステル : さぁ、初診!

生理がいつもより遅れていて、「 もしかして妊娠かも? 」となった場合、ほとんどの方はまず、市販の妊娠反応薬 ( terhességi teszt ) で確認することでしょう。

当地でも、薬局やドラッグストアで 1000~3000 Ft ( 約 400 ~ 1200円 ) くらいで簡単に入手可能。ハンガリー語がわからなくても、ほとんどの製品は、説明書の絵で使い方がわかるようになっています。

ハンガリーでマタニティライフ ( 1 ) 妊娠そして病院探し

2018.06.13

陽性が出たら、いよいよ初診。生理予定日より 2 週間後くらいが良いようです。( 妊娠 6 ~ 8 週に相当。) あまり早すぎても、超音波検査 ( エコー ) で赤ちゃんの袋 ( 胎嚢 ) が見えないことがあります。逆に遅すぎると、子宮外妊娠など異常妊娠の場合、危険な状態になりかねません。

ハンガリーでの初診内容は、日本とほとんど同じです。

初診時に行うこと ( 標準型 )

・問診 ( 最終月経開始時、月経周期、出産経験の有無、持病、薬など )
・出産予定日の算出
・計測 ( 血圧、脈、尿、体重など )
・超音波検査 ( ultrahang vizsgálat )
・第 1 トリメステルに行う検査に関して説明 ( 一般的な血液、尿検査、子宮がん、感染症、歯科、眼科など )

初診の際の超音波検査の最も重要な目的は、「 妊娠が正常に成立しているか 」をみること。

具体的には、次の 3 つを確認します。
・胎嚢が子宮の中に認められるか ( 子宮外妊娠していないか )
・赤ちゃんの心臓が動いているか
・赤ちゃんの大きさ ( 順調に成長しているか )

*この超音波検査では、赤ちゃんがまだ小さいため、お腹の上からではなく経腟タイプ ( 膣内に挿入 ) が使用されることも多いです。

第 1 トリメステルの検査 ( 数多し ! )

第 1 トリメステル、つまり妊娠初期に行う検査は、第 2 、第 3 トリメステルに比べて多いです! でも、これから健康な妊婦生活を送り、赤ちゃんの成長を支えるにはどれもこれも重要。検査はしっかり受けましょう。

● 一般的な血液検査
各トリメステルに行う、血算 ( 「血球算定」 vérkép ) と呼ばれるもので、 ヘモグロビン ( hemoglobin ) 、ヘマトクリット ( hematocrit ) 、赤血球指数 ( VVT index )、白血球数 ( fehérvérsejt szám ) 、血小板数 ( vérlemezke szám ) など調べます。 プライベートクリニックでは、その他に、甲状腺ホルモンやビタミンD、腎臓、肝臓機能を検査項目に加えることが多いです。

● 一般的な尿検査 ( vizelet vizsgálat )
タンパク質 ( fehérje ) 、糖 ( cukor ) 、膿 ( genny ) 、アセトン体 ( aceton、ケトン体 )、ウロビリノーゲン ( urobilinogen )、尿沈渣 ( üledék ) をみます。

● 特別な血液検査
第 1 トリメステルだけ行うもので、B 型肝炎 ( HBsAg ) 、梅毒 ( VDRL、Szifilisz ) のチェック。

● 血液型に関する検査 ( vércsoport )
血液型 ( ABO 型、rh 型 )

● 歯科健診 ( fogorvosi vizsgálat )

● 眼科健診 ( szemészeti vizsgálat )

● 内科的な一般健診、心電図 ( EKG )

● 子宮がん検査 ( cervix rák )  過去 6 か月に行っていなければ推奨されています。

● 感染症であるクラミジア ( chlamydia ) 、トキソプラズマ症 ( toxoplazmózis )

こうやって挙げると数がとても多いですが、血液および尿検査は 1 度にまとめてできます。また、プライベートクリニックでは、その他の検査も同じ施設内で効率よく周って実施できるようにしているところもあります。担当医とご相談ください。

「 遺伝学的エコー検査 」

第 1 トリメステル中には、通常であれば妊娠 11 ~ 13 週で、定期健診がもう一度あります。その際に、 2 回目の超音波検査を実施。

この検査は、 「 妊娠第 12 週の第 1 回遺伝学的超音波検査 」 ( A 12. heti első genetikai ultrahang vizsgálat ) と呼ばれ、赤ちゃんの成長具合に加えて、先天的な染色体・遺伝子異常 ( ダウン症 Down-kór など ) を見ます。

国からは、「 義務 」と指定されていて、ここは日本とは少し違うところ。当地では、37 歳以上の妊婦さんには、遺伝子疾患に関する説明 ( カウンセリング ) も定型の健診制度に含まれます。

第 1 回遺伝子学的超音波検査の結果はこんな感じ。医学用語でわからないことも多いので遠慮せず聞きましょう。 Photo by Ako

この超音波検査は、専門の医師が別に行います。( 中には、産婦人科担当医が超音波専門資格も持ち合わせていることもあり、その場合は同じ先生。)  首の後ろに浮腫があるかどうか、また指の長さ、指の数、鼻の大きさ、心臓の様子などを確認。通常はお腹の上からですが、わかりづらい場合は経膣タイプになります。

ダウン症などの発症を調べる追加検査 ( 任意 )

「 第 1 回遺伝子疾患超音波検査 」は、ダウン症などの確定判断にいたるものではありません。あくまでも可能性をみるもので、精度は 80~85 % 。

検査結果と妊婦年齢などを合わせて、発症している確率が高いと推定され、妊婦側が追加検査を希望する場合、複合テストNIFTYテスト羊水検査など幾つかあります。

複合テスト、NIFTY テストは、お母さんから血液を採取、また超音波検査との組み合わせのみ。羊水検査は、子宮に針を通し、小さいながらも羊膜に穴をあけるものです。そのため、破水や、合併症、流産をおこすリスクが伴います。

精度については、NIFTY テスト、羊水検査では、ほぼ確定すると捉えられています。( ただ、NIFTY テストは国家医療保険適用外で、 20 万 Ft = 約 8 万円 と非常に高額。一方、羊水検査は国家医療サービス内であれば無料です。)

複合テスト ( kombinált teszt / combined test ) : 母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせたもの。
NIFTYテスト ( Non-Invasive Fetal TrisomY test ) : 新型出生前診断 ( NIPT )*の一種で、母体の血液のみで検査。*正確には、「 無侵襲的出生前遺伝学的検査=non-invasive prenatal test 

第 2 トリメステル : ちょっとゆっくりに 

安定期に入る第 2 トリメステルは、定期健診は 1 か月に 1 度なります。検査もそれほど多くなく、比較的ゆっくりできます。自分自身の経験を振り返っても、お腹もまだそれほど大きくはなく元気に動けるので、旅行に行ったりして、一番楽しい時期でした。また、赤ちゃんの胎動を初めて感じることができ、喜びやワクワクが高まった時期でもありました。

定期健診以外では、次のような検査があります。カッコ内は実施時期の目安です。

● 超音波検査 ( 18 ~ 20 週の間 ) 第 2 回遺伝学的検査に相当。
● 一般的な血液、尿検査 ( 24 ~ 28 週の間 )
● 妊娠糖尿病検査 ( terheléses vércukor vizsgálat、75 g OGTT ) ( 24 ~ 28 週の間 )

第 2 トリメステルのみ実施するのは、妊娠糖尿病の検査。それまで糖尿病の傾向がまったくなかった方でもかかることがあるので、大変重要な検査です。

検査は「 75 g 経口ブドウ糖負荷試験 」と呼ばれるもので、日本でも実施されています。前夜から絶食し、翌朝、空腹のまま採決し血糖値を測定。その後、ブドウ糖 75 グラムを溶かした水を飲み、120 分後に採決し血糖値を測定します。これが、食べるのが楽しい妊婦にはとても苦痛だったりしますが、そこは我慢です ( 笑 )

第 3 トリメステル : 波形で感じる命

いよいよ出産に向けて最終コーナーに入る第 3 トリメステルでは、定期健診の間隔も狭くなります。担当医師や母子の状態によりますが、36 週からは週に 1 度に。(  26 週頃から 3 週に 1 度、というケースもあり。)

予定日を超えた場合は、さらに健診頻度が上がります。

検査には次のものがあります。

● 超音波検査 ( 30 ~ 32 週の間 ) 第 3 回遺伝学的検査に相当。加えて、36 ~ 38 週の間にもう一度実施、という医師も多いです。
● 一般的な血液、尿検査 ( 36 ~ 37 週の間 )
● GBS、カンジダ感染症 ( GBS=B csoportú Streptococcus、Candida ) ( 35、36 週までに )
● ノン ストレス テスト ( NST: kardiotokográfos szűrővizsgálat ) ( 38、39、40 週 1 回ずつ )
● 眼科健診 ( szemészeti vizsgálat ) 必要に応じて実施 ( 出産で力むことで網膜剥離などのリスクがあるため)

GBSカンジダは、出産時に赤ちゃんが産道を通ることで感染しうるものです。検査で陽性となった場合は、抗生物質などで治療します。

第 3 トリメステルの検査の目玉は、何と言っても「 ノン ストレス テスト ( NST ) 」。出産という人生一大イベントが間近に控えていることを、いやでも感じずにはいられません。

これは、出産を迎える準備ができているかどうかを見極める検査。陣痛などストレスがない状態で実施します。具体的には、吸盤のようなものをお腹につけて、固定するベルトをお腹に装着。モニターには、赤ちゃんの心拍数や、お母さんの子宮の収縮具合が波形状に表示されます。日本の病院でもお馴染みのテストです。

所要時間は 15 分で済むときもあれば、30 ~ 40 分くらいかかるときもあり。検査中に赤ちゃんが寝てしまっていると、グラフが反応しないためです💦

NSTでの波形。赤ちゃんの心拍数は 120 ~ 160 回 / 分と、とても速いです。 Photo by Ako

波形を見て、「 もうすぐ会えるんだな 」という喜びと、初めて親になる責任の重みと不安でいっぱいになったのを思い出します。テストは通常、助産師さんが担当するので、心配なことはどんどん聞いておくことをお勧めします。

最後に

生まれました! 画像提供:K

外国での妊娠、出産で不安が沢山あるのは、極自然なことと思います。冷静になって考えると、不安の何割かは、たいていは、言葉がわからない、制度がわからない、勝手がわからない、意味や目的が理解できない、ということから来ているものです。

そのため、わからないことは医師に「 遠慮せず 」質問することがとても大事。この記事では、妊婦健診検査に関して一通りご紹介しましたが、妊娠経験は十人十色。本記事に当てはまらないケースも多々あることは、どうぞご承知おきください。そうしたことからも、医師とは、なんでも質問できる信頼関係が築き上げられると良いですね。

また、周囲のハンガリー人の親戚や友人、在留邦人も、妊娠出産経験があれば、たいていの人は親切にしてくれます。ひとりで悶々と悩まず、ぜひ、いろんな人の助けを借りて、安心して出産を迎えられるよう、お祈りしています。

次回は、妊娠出産の制度以外の面で、知っておきたいハンガリーの特殊事情についてです。

( 記事作成にあたっては、人材省省令やクリニックホームページ、国内の妊婦出産関連サイトから情報を得るとともに、プライベート診療を行っている友人の産婦人科医アーゴタの協力を得ました。)

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。