ハンガリーの妊婦健診制度 ( 1 )

待ち望んでいた小さな命がお腹に宿ることは、本当に嬉しいものですね。でも、特に初めてであれば、自分の体や心の変化にびっくり。また、制度もわからないことだらけで、外国であればなおさらのこと。これから 3 回に分けて、ハンガリーの妊婦健診・検査制度、また当地ならではの特殊事情についてご紹介します。今回は健診等の概要。末尾に便利な表をつけましたのでご活用ください!


ハンガリーの制度と実情

ハンガリーでは日本と同様、お母さんと赤ちゃんの健康状態を定期的に確認する制度がきちんと確立しています。ですので、まずはご安心を。

日本との大きな違いは、国家の健康保険に加入していれば、公的医療機関での定期健診や検査は、基本的に自己負担ゼロということ。出産も無料。でもこの場合、妊娠中の経過をずっと見てくださる医師を選ぶことはできません。出産時は、その日のシフトに入っている医師が担当することになります。

こうしたことから、多くの女性が、普段の診察ではプライベートの診療所に行っているのが現状です。ただ、出産に関しては、設備を整えているところがまだ少ないため、担当医が契約している公立の病院施設を利用、というのが標準的なパターン。このあたりの特殊事情は日本人には理解するのがなかなか難しいため、別の記事で扱います。

次に、妊娠期間の分け方と、健診や検査のおおまかなスケジュールを見ていきましょう。

妊娠期間と分け方

日本では、妊娠してから生まれるまでは「十月十日」とよく言い、生まれるまで「 10か月 」の勘定。一方、ハンガリーは他の欧米諸国と同様に、「 40 週 」と言います。つまり 280 日  (  9 か月と 10 日 ) 。

なぜこのような違いがでるのでしょうか?

それは、日本が「 数え年 」のように 0 ~ 4 週間を「 妊娠 1 か月 」と見なすため。欧米人の方が、体格や食生活の違いから平均的妊娠期間が短い、ということではありません ( 笑 )。

妊娠期間は、約 3 か月ごとの「トリメステル ( trimeszter ) 」に大きく分けます。( 英語は trimester、 日本では前期・中期・後期。)

第 1 トリメステル ( Első trimeszter ) 0 ~ 12 週
第 2 トリメステル ( Második trimeszter ) 13 ~ 28 週
第 3 トリメステル ( Harmadik trimeszter ) 29 ~ 40 週

なお、ハンガリーでは、妊娠期間は「 月 」より「 週 」単位でカウントすることが多いです。

妊婦健診と検査の概略 ( 表付き!)

ママも赤ちゃんも健康に過ごせるように、またリスクがあれば速やかに対応できるように、健診・検査はとても大事。 画像提供:K

赤ちゃんがお腹にいる 40 週という長い期間には、定期健診と検査がいくつもあり、目が回りそうです。私も最初は、妊婦特有の気持ちの不安定さも手伝い、右往左往しました。

まず、どんなものが、いつあるのかがわからない! 当地では、医師が出産までの健診、検査スケジュールを見通せるような便利な表をくださることは、まずありません。

毎回、健診の最後に、「 次はこれとこれをします。●●週間後に来てください 」と言われるがハンガリー式。これは有料のプライベートクリニックでも同様です。そのため、全体像を把握するには、自分で情報を集めないとなりません。( 国家健康保険に加入している場合は、妊娠・出産の健康状態を管理する手帳=A várandós anya gondozási könyve ( várandós kiskönyv ) を地元地域担当の保健婦から入手可能。)

ハンガリーでマタニティライフ ( 2 ) 母子手帳と妊婦健診

2018.12.05

もちろんハンガリーにも、国が定める定期健診、検査の型はあります。これらに、任意で検査項目を追加するかは、医師からの勧めや、自分の希望をもとに決めるのが一般的です。実態としては、国が義務と指定するものは最低限のため、プライベートクリニックのほとんどが幾つかを追加しています。

下記は、プライベートクリニックにおける「 標準型 」の定期健診・検査の構成です。国が義務付けしている項目には を付けてあります。 ( 今回の記事作成にあたっては、人材省省令やクリニックホームページ、国内の妊婦出産関連サイトから情報を得るとともに、プライベート診療を行っている友人の産婦人科医アーゴタの協力を得ました。)

① 定期健診 ( várandosgondozás、terhesgondozás )
12 週まで: 2 ~ 4 週間に 1 度
13 ~ 36 週まで: 1 か月に 1 度  ( もしくは、26 ~ 36 週は 3 週に 1 度。医師や母子の状況によります。)
36 週 ~ ( 最後の 1 か月 ):週に 1 度

※ 定期健診では、血圧、脈、体重、腹囲、尿 ( タンパク質、糖など )、 脚の浮腫、16 週からは赤ちゃんの心音などをチェックします。

※ 国が定める健診は、家庭医 1 回、専門の産婦人科医の健診最低 3 回 ( 各トリメステル ) 、保健婦への訪問最低 3 回 ( 各トリメステル )。

② 血液、尿の一般検査

各トリメステルに 1 回ずつ。
血液検査は、血算 ( 「血球算定」 ) と呼ばれるもので、 ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、赤血球数など調べます。

尿検査では、タンパク質、糖、膿、アセトン体 ( ケトン体 )、ウロビリノーゲン、尿沈渣をみます。

③ 各トリメステルに応じた検査

< 第 1 トリメステル >
上記 ② の一般血液検査に加え、B型肝炎、梅毒の検査、および血液型に関して採血検査。
37 歳以上の場合は、遺伝子異常に関する説明 ( カウンセリング )
歯科健診
内科的な一般健診、心電図 ( 公的医療制度では家庭医が実施 )
子宮がん
感染症であるクラミジア、トキソプラズマ症
眼科健診

< 第 2 トリメステル >
妊娠糖尿病

< 第 3 トリメステル >
胎児の心拍数や子宮収縮などを調べる検査「ノン ストレス テスト」
眼科健診
感染症である GBS、カンジダ症

④ 超音波検査 ( エコー )

実施時期の目安
●   6 ~ 8 週 ( 初診時。子宮内での正常妊娠かどうか確認 )
11 ~ 13 週 → 遺伝子異常のリスクをみる第 1 回目の検査 ( ダウン症、心奇形など )
18 ~ 22 週
30 ~ 32 週
●  36 ~ 37 週

※ 医師によっては、定期健診時に毎回という場合もあります。その方が早産などのリスクを早くから感知できるなど、利点があるそうです。

⑤ 任意
例として、先天性異常のリスクを調べるための精度のより高い検査。11~13 週に受ける超音波検査で、ダウン症など染色体異常のリスクが高く出た場合、医師から希望するか聞かれます。

これらをまとめたのが、下の表です。

次回は、トリメステルごとに、検査内容についてより具体的にご紹介していきます。

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。