地元民に愛されるレトロな奇観温泉


温泉大国ハンガリーにある “ 世界でも珍しい奇観を楽しめる温泉 ” をご紹介します。ここでは、観光案内本に載っている王道からちょっと外れた、地元民が通う昔ながらの湯スポットを取り上げます。ブダペストから日帰りできる距離にあり、子ども連れも OK !  尚且つ、お財布にも優しいお得な湯処です。

温泉が生み出す純白の石灰棚 エゲルサローク

中には入れませんが、外から写真は撮れます。 Photo by Yuri

ブダペストから東北へ 130 km ほど行ったところにあるエゲルサローク( Egerszalók )。人口 2000 人ほどの小さな村ですが、わざわざ出かける価値のある温泉スポットとして大人気です。 というのも、ここには、世界でも大変ユニークな「 真っ白な石灰棚 」があり、それを見ながら湯を楽しむことができるから。その姿は、あの世界遺産になっているトルコの絶景温泉郷「 パムッカレ 」を思い起こさせます!*

* 規模はパムッカレより小さいです。そのほとんどが天然の産物ですが、一部、風景を整えるために人の手を加えています。

Saliris Resort ( サリリス・リゾート ) ホテルと屋外風呂  Photo by Yuri

この村で、もっとも有名な温泉施設は “ サリリス・リゾート ( Saliris Resort Spa & Konferencia Hotel ) ”  です。200 以上の客室をもつホテルに、大小の温泉プールやサウナ、エステが併設されています。宿泊はもちろんのこと、日帰り利用も可。すぐ脇に石灰棚がのぞめるとあって、国内外から多くの観光客が訪れています。日本語ガイドブックでも、よく取り上げられています。

でも今回、とっておき情報としてお届けしたいのは、その大型施設の目と鼻の先にある「 小さな湯浴み処 」です。地元民には愛され続けているにもかかわらず、知名度は低め。エゲルサロークには行ったことはあるけれど、このお風呂には入っていない、あるいは気づいていない方が意外と多いかもしれません。

安い&6歳以下無料のローカル湯

上の左写真向かって左にゆるい坂を上るとサリリス・リゾートに到着。 Photo by Yuri

「 小さな湯浴み処 」は、ハンガリー語で Nosztalgia strand ( ノスタルギア・シュトランド ) と呼ばれています。その意味は、 「 ノスタルジックな野外風呂 」。外風呂のみで、最高湯温は 38 ~ 39 度のため、春や夏におすすめの湯処です。エゲルサローク名物の白い石灰の塊もちゃんと見えます。

実はここ、サリリス・リゾートの巨大施設の一部で、同じ会社が経営しています。それなのに、入湯料は 1 500 Ft ( 約 590 円 ) とかなりお得! ホテル併設のスパ利用料は大人 5 800 Ft ( 約 2 290 円 ) なので、その 3 分の 1 にも満たない激安ぶり。

しかし、なぜ少しだけ離れたところにぽつんと佇んでいるのか? なぜそんなに安いのか? そして、なぜ「 ノスタルジック 」なのか? 疑問が湧いてきます。その秘密は、この温泉郷の地形と開発の経緯にあるようです。

石灰華とリゾートホテルは小さな丘の上にあります。サリリスが建設される前、もともとあったのは小山のように堆積した石灰棚。そこから湯は坂を下って流れ、平地になったところに「 温泉の池 」のようなものができたそうな。地元の人々はこれはいい!とその湯に浸かっていたそう。

それが現在のノスタルギア・シュトランドの原形です。ただ、設備は整っていませんでした。

その後 2000 年代に入り、石灰棚の横の斜面が切り開かれ、一大リゾート地としてサリリス ( * )  が建設されました。その際、素朴な「 温泉の池 」もホテル開発会社の所有となり、まとめて整備。脱衣所もきちんと備えて正式な浴場としてオープンしました。

*サリリスは、もともとは “ Hotel Rogner Thermal Spa ” として 2008 年に建設。

かつては、村に住む人たちが野趣溢れる露天風呂を楽しんでいたことから、開発会社は 1970年代、80 年代の雰囲気を残せるよう配慮したのです。「 ノスタルギア 」と命名したのもそこに由来します。料金も、彼らが引き続き気軽に訪れることができるように、と安めに設定したそうです。

さらに、 6 歳未満のお子さまは入浴料無料! キッズやシニアにも割引があります。

Nosztalgia strand
住所 : 3394 Egerszalók, Forrás út 4.

アクセス : ブダペストからは電車かバスでエゲル ( Eger ) まで行き、そこから市内バス。( 約 3 時間 )
⇒ 電車は、Budapest Keleti pályaudvar ( ブダペスト東駅 ) からの乗車がわかりやすいです。
⇒ 直行バスは 5:55 と 14:30 に Stadion autóbusz-pályaudvar から出発。エゲルまでの便も頻繁にきます。
⇒ 車は M3 経由で 1 時間 30 分程度。

駐車場 : 1 日 450 Ft ( 約 180 円 )
料金 : 大人 1 500 Ft , 6-14 歳の子どもと 65 歳以上は 1 200 Ft
※ エゲルサロークに住んでいる方は、住所カード等を提示すると 950 Ft ( 年金受給者は 600 Ft )

営業時間
日曜日 ~ 木曜日 09:00 – 23:00 ( 入浴は 22:30 まで )
金曜日、土曜日 09:00-01:00 ( 入浴は 00:30 まで )
※ 9 月以降は開業時間が 30 分遅くなります。

【 サリリス・リゾート 】
Saliris Resort – Spa Conference Hotel
住所 : 3394 Egerszalók, Forrás u. 6.
受付電話 : +36 36 688 600
予約電話 : +36 36 688 608
メール : sales@salirisresort.hu

( Ft = ハンガリーフォリント 100 Ft = 約 40 円 2019 年 3 月現在 )

エゲルサロークは、日帰り良し、宿泊もできるハンガリーの温泉リゾート地です。

泉質&効能

Photo by Yuri

湯は、カルシウム、マグネシウム、炭酸水素塩が主成分となっており、硫黄もかなり含んでいます。そのため、湯は心持ち白濁しているよう。湯船をのぞいてみると白い浮遊物『 湯の花 』が見られます。この正体は、温泉の成分からできたものなので、垢やごみが浮いているわけではありません。寧ろ、本当の温泉の証、といえるでしょう。

こんな症状の方に
関節や背中、腰の痛み
運動によって引き起こった炎症
整形外科や脊椎の外科手術後のリハビリテーション
婦人科系の炎症をともなう病気
乾癬や湿疹

カルシウムには抗炎症作用があり、硫黄は関節軟骨に重要な働きをするため、関節炎に特効があるとされています。

深刻な心血管疾患の方、熱をともなう病気や感染症を患う方、皮膚に怪我をしている方、悪性の腫瘍がある方、尿失禁の症状でお悩みの方のご利用は推奨されていません。

ハンガリー暮らしの健康手帖では、読者の皆様の体験談をお待ちしております!自分の経験が誰かにとって価値ある情報になるかもしれません。海外暮らしに役立つ知恵をぜひ当ブログお問合せからご投稿ください☆

ABOUTこの記事をかいた人

武田友里

日本ハンガリーメディアート在籍の撮影コーディネーター ( Production Coordinator ) です。神戸大学を卒業後、映画などのロケ地として人気になっているブダペストの大学院でメディアの世界に飛び込みました。現在は、マルチリンガルを活かして、ハンガリーを拠点に中欧・東欧諸国での取材・撮影で走り回っています。