乳がん治療は長丁場。手術を無事に終えたわさびつんこさん ( 40 代、在住約 20 年 )、次はどんな治療に入ったのでしょうか。そしてその結果、抗がん剤治療とはまた違う副作用が現れます。からだのあちこちに不調が。これはいったい……?
休む間もなく次の治療に
昨春から 4 か月半にわたる抗がん剤治療を経て、7 月には手術で腫瘍を無事摘出。でも、そこですべて終わり、万歳!というほど単純ではなかった。
手術後、病理検査の結果を持って主治医を訪れると、今度は「 ホルモン療法 」と「 放射線治療 」を行うと説明を受けた。
ホルモン療法にいたっては、その日に早速注射を一本。気持ちの準備をする間もなく始まった。女性ホルモンの分泌を抑制し、乳がんの増殖や再発を防ぐ。
私のがん細胞がかなりの速度で増殖したのも、この女性ホルモンの分泌が多かったためとのこと。だから、治療は回避できないものらしい。
療法で用意されたのは、 錠剤と注射の 2 種類。
錠剤は、Zitazonium / ジタゾニウムという。成分はタモキシフェンで、女性ホルモンの代表エストロゲンと受容体の合体をブロックする。毎朝 1 錠を服用。本来 2 錠のはずだったが、ちょっとした手違いで 1 錠だけ飲んでいた。
気づいて慌てて主治医に相談すると、生理が無ければそのままでよいでしょうといわれた。処方された半量で生理が止まったことから、おそらくハンガリーの薬は私には強過ぎるのだろう。
注射は Zoladex / ゾラデックスという名前で、ゴセレリンという成分が入っている。乳がん細胞の増殖を抑えるのが目的。4 週間ごと 2 年間打ち続けなければならない。
3 カ月に一度先生に処方箋を出してもらい、自分で事前にまとめて購入しておく。診察日に一箱持参し、主治医が注射してくれる。
注射後の夜はちょっと厄介
ゾラデックス注射の日はどんな様子かというと、受付後にまず血液検査。15 分ほど待つと検査結果の紙が渡される。
私が一番気にして確認する項目は白血球とリンパ球の数値。抗がん剤治療で最も大きなダメージを受けた白血球だ。この数値がなかなか上がらず、血液検査の結果を見ては、一喜一憂する自分がいる。
結果をもって主治医のもとへ。検査結果に基づき、からだの回復度やホルモン治療を受けられる状態かどうか判断される。その他、治療経過の副作用での問題の有無など、一通りのやり取りを終えると、接種となる。
自宅で自分で注射するタイプもあるが、このゾラデックスの針は長くて太い。子宮に近い腹部の奥に打つので、自分ではとても怖くて打てるものでない。
厄介なことに、治療日の夜はいつもより少しイライラする。なので、家族にとっても、「 ママをイライラさせないための要注意日 」として定着しつつある。
ホルモン療法の副作用 ――あちこちに不調
ホルモン療法が始まって 1 か月ぐらい経ったころであろうか。ある日突然、急に30 秒 ~ 数分熱く感じるようになった。そんなことが一日 4、5 回起きた。
しばらくすると、寒がりになった気がする。冬だから当たり前かもしれない。でも家族のだれよりも気温の変化に敏感で、むしろストレスすら感じるようになった。
手足が冷えないよう、毎日、セーターや腹巻は欠かせない。厚手の靴下も履いて過ごす。抗がん剤治療後、髪も伸び始めたとは言え、家の中でも帽子やスカーフは必需品。
2 か月後ぐらいから、なんだか体調がすぐれない。手や腕はしびれ、ひじの関節が痛むようになった。腕を伸ばして軽い物を持ち上げると、肘に痛みが走る。
睡眠中の夜中に熱く感じるときもあれば、明け方は身体が冷えるのを感じたりする。加えて、しびれや痛みのために眠れないことが増えた。
肩こりも日増しにひどくなった。あまりにひどくて、ある日、子供たちに肩もみをお願いした。こんなことは以前はなかったのだが。パンパンに張った肩を彼らに預けながら、自分も幼少時によく祖母の肩をよくもんであげていたなぁ……と思い出が蘇ってきたその時
もしや、これは
「 更年期 」?
この 3 文字が頭にくっきり浮かんだ。
急に熱く感じたのは、いわゆる「 ホットフラッシュ 」だったのだと思う。
そうなのだ、医師は「 この療法では生理が止まります 」くらいしか言わなかったが、不調のどれもこれもが更年期症状に当てはまっていた。エストロゲン分泌を抑制したために、私の体の中では人工的に更年期がつくられたようだった。
最近一番困っているのは、物忘れや記憶力の低下 。
何気なく置いたものを、どこに置いたか忘れてしまうことが多くなった。
数年前、祖母が「 おばあちゃんの知恵袋 」の一つとしてアドバイスしてくれたことを思い出す。
何かをするときには何気なくするのではなく、声に出して「 今から XX をします」、「 XX に XX を置きます 」と言うこと。こうすることで自分の五感をフル活用し、記憶にインプットするのだそうだ。確かにこの方法はとても役に立っている。
揺れ動く心
この 3 月で療養休暇は終了の予定だ。毎月、療養証明書を会社に届けに行く度、同僚が優しい笑顔で迎えてくれる。
「 つんこ、体調はどう? いつ戻ってこれる? 」、「 戻ってくるの待ってるよ! 」
復職のための心の準備をする一方で、このような身体でちゃんと勤務できるものだろうか。普段は前向きな私ではあるもの、今の体調を考慮すると復職に不安になっている自分がいることを否めない。
このようなことを書くと「 ホルモン療法って大変なんだなぁ 」と思われてしまうかもしれない。
でも私の同年代の女性たちも、個人差はあっても同じような更年期症状を持つと聞く。それに、数年続くものらしい。だから特別な事でもなんでもない、と自分に言い聞かせている。
「 多くの方が持つ悩みを、私の場合は皆さんより少し長く付き合うだけのことだ 」
……と、頭ではわかってはいるけれど……
やっぱり不快感から解放されたい気持ちが募るこの頃だ。
つんこの更年期の症状を軽くするためのおすすめ
なんでも頑張りすぎてストレスをためてしまわないように、私が実際に行っている簡単なことを少しだけ紹介しようと思う。
食事:栄養は手作りの食事だけで補えない時はビタミン剤に頼ってみよう。
適度な運動:ラジオ体操や週に 3 ~ 4 回散歩や軽いジョギングなどの有酸素運動。血行が良くなって体内から体を温められる。じわっと汗をかく程度の程よい運動量が好ましく、激しい運動はストレスになるので良くないそうだ。
( おまけ話:このアドバイスは 2 月 26 日 NHK ラジオ番組『 増田明美のキキスギでハンガリーより 』で更年期の過ごし方と心の持ち方を電話相談した時、増田明美さんと有森裕子さんから頂いたアドバイス。日本国内では聞き逃しで放送を聴けます。)
質のいい睡眠:スマホを枕元に置かない。
“ わくわく ”を見つける:わくわくするような好きな事をすることで気分転換。