ハンガリーで予防接種を受けてみました


2018 年、日本で流行した『 風疹 ( ふうしん ) 』。ハンガリーでは、主に 3 月~ 5 月間に発生する感染症です。当地では稀な疾病となってきているようですが、ある年代の方々には予防接種が奨励されています。その対象者に管理人自身がばっちり当てはまっていたため、抗体検査を受けに行くことに。今回は、ハンガリー滞在で知っておきたい感染症事情とワクチン接種を受けた体験談を綴っていきます。

平成元年生まれまでの方、感染症にご用心

2019 年現在も風疹は、日本で要注意の模様。国立感染症研究所 感染症疫学センターの報告によると、新年を迎えてから既に風疹と診断された患者数は 139 名にのぼっています。( 1 月第 2 週目時点 )

それに対し、ハンガリーの公衆衛生・医療サービス組織 ( ÁNTSZ ) によると、ここ最近の年間報告数は、驚きの平均一桁台。この国を含むヨーロッパ全体で 、WHO ( 世界保健機関 ) の予防接種行動計画に基づき、根絶に取り組んでいることが、効果を発揮しているようです。

当地では、MMR ( 風疹、はしか、おたふくかぜ ) のワクチン接種は義務付けられています。予防注射をする時期は、 1 歳 3 ヶ月 ( 生後 15 ヶ月 ) と 11 歳の合計 2 回 。

ハンガリー子どもの強制予防接種

2018.04.13

「ハンガリーでは、風疹をもらってしまう心配はないんだ!」と思いきや、そういうわけではありません。予防接種を受けているからこそ防げる感染症なのです。

日本では、30 歳 ~ 50 歳代で流行しています。

・昭和 37 年度 ( 1962 年 ) 〜 平成元年度 ( 1989 年 ) までに生まれた女性
・昭和 54 年度 ( 1979 年 ) 〜 平成元年度 ( 1989 年 ) までに生まれた男性

この期間に生まれた人は、ワクチン接種を 1 回しか受けていないそうです。( 現在は 2 回 )

ハンガリーやその近隣地域でも似たような状況となっています。

・昭和 44 年 ( 1969 年 ) から 平成元年 ( 1989 年 ) の間に生まれの方

1 回しか受けていない、もしくはワクチンを接種していないことがあるようです。

この年齢層に予防接種が呼びかけられているのには、もう一つわけがあります。子を授かる可能性があるためです。小児期の風疹感染は通常は軽度なのですが、大人の場合、特に妊婦には大きなリスクが伴います。その影響は、胎児にまで及ぶからです。そのため、特に妊娠を希望しているカップル、その家族に推奨されています。

当ブログ管理人の私は、完全にこの年代に該当。ただ、幼い頃に風疹になったことはあります。一度感染し治癒すると、 “ 多くの人 ” は二度とかかることはないそう。しかし、これは裏を返せば、一部の方は感染する可能性ありともとれます。 “ 念のために ” 、抗体検査をしておくことに。

ハンガリーで育った夫はというと、風疹経験はなし。さらに予防接種も受けた記憶がないとのこと。今後のためにも、予防接種をしておくに越したことはありません。

ハンガリーで抗体検査はどこでできる ?

いざ、検査へ!と思いきや、どこへ行けばすぐに抗体検査や予防注射をしてもらえるのかわからず。夫婦でネット検索。私たちは国の健康保険を持っていますので、まず公立の施設を探しました。

感染症については、Nemzeti Oltóközpont ( 国立予防接種センター ) で対応している様子。最初から電話で問い合わせると、「 先にメールを送ってください。」と言われることが度々あります。そのため、メールを送ってみました。しかし、1 週間過ぎても返事は来ず。

電話をかけてみることに。これもなかなか出てくれません。数日間に何度もかけて、ようやく対応してもらえました。

ですが … 「 当方では、旅行で必要となる注射しかしていません。ブダペスト市内の国立病院や ÁNTSZ に問い合わせてください。」とあっさり断られ … 。 ハンガリー生活あるある、“ たらいまわし ” に合う予感。 

そこで夫と緊急会議。情報を得るだけでもこんなに時間と労力を費やすので、私立機関も見てみることにしました。そこで評判が良かったのは、Budai Oltóközpont és Magánorvosi Centrum ( ブダ予防接種センター & プライベートドクターセンター) でした。

ブダ予防接種センター & プライベートドクターセンター

Budai Oltóközpont és Magánorvosi Centrum の入口は少々わかりづらいです。 Photo by Yuri

住所 : 1117 Budapest, Fehérvári út 82.
電話 : +36 1 794 3980 / + 36 1 445 0700
電話 ( 予防接種のみ対応 ) : +36 20 288 7248
電話 ( 17 時以降 ) : +36 70 700 3333
E-mail : info@budaimaganrendelo.hu / recepcio@bmclabor.hu

【 専門医による診察 】
アレルギー科、痔等に関する外来診療、内科、皮膚科、糖尿病、栄養科、内分泌科、耳鼻科、胃腸科、消化器内科、小児科、血液内科、心臓血管内科、神経内科、婦人科、整形外科、トラウマ ( 外傷 ) 治療、 精神科、心理療法、呼吸器科、リウマチ科、外科、眼科、泌尿器科、予防接種

ABPM ( 24 時間自由行動下血圧測定 ) や HOLTER ( ホルター心電図 ) 、EKG ( 心電図検査 ) 、超音波検査、臨床検査、健康診断 ( 企業向け ) も可。

用語 ー 診療科などのハンガリー名

2018.04.11

まず検査項目を決定。 実は風疹より 〇〇 が危険 !!

助手のスタッフが採血します。  Photo by Yuri

さっそくメールを送信。すぐに返事があり、診察の予約をとることができました。予約時間は 15 時 10 分。ハンガリーの病院はいつも分刻み。遅れてはまずいと思い、10 分前には指定の場所に着きました。院内はとてもキレイです!

待っている間に問診票を記入。診察は、ほぼ予定時刻通りに始まりました。問診票に沿って、今までの疾病経験など質問され、何の抗体をチェックするかを相談しました。

その結果、次の 4 項目に決定。すべて血液検査で判明します。

・ 風疹ウイルス
・ ムンプスウイルス / 流行性耳下腺炎 ( 通称 おたふくかぜ )
・ モルビリウイルス / 麻疹など
水痘・帯状疱疹ウイルス

水痘は、かなり幼い頃に患いましたが、“ 念のために ” 加えました。というのも、ハンガリーでは毎年、3 万人ほどが水痘 ( 通称、水ぼうそう ) を発症しているそう。( 2016 年の年間報告者数は、37,843 人 )

担当医によると、当地では風疹よりも水痘の報告数が圧倒的に多いとのこと。つまり遭遇してしまうリスクは風疹より高く、大人で抗体を持っていない場合は要注意なのです。

血液検査の費用は ?

検査項目も決まり、帰り支度を始めたところ、担当の女医さんが「 何回も来るのは面倒でしょう。”今” 採血していいか受付で聞いてみましょうね。」と何とも有難いご提案 ! ハンガリーで様々な病院に行きましたが ( 本当は行きたくないのですが ) 、こんな対応は初めてです。

普段は、「 医師による診察 ⇒ 採血の予約を取る ⇒ 別日に改めて注射 」の流れ。かつて、ブダペスト 6 区にある Medicover ( プライベートクリニック ) で血液検査をした時は、このような手順でした。今回もそうなると思っていたので、驚きました。

受付係が「 まだ本日分の採血は検査に出していないので、今の時間なら間に合いますよ。」とのこと。15 分程待って、看護師さんに採血をしてもらいました。全て終わったのは、16 時 20 分。1 時間 少々で診察から支払いまで完了です。結果は 10 日もしないうちにメールで送られてきました。

【 料金まとめ 】
① 診察 … 2 700 Ft / 約 1,000 円 ( 初回の登録料込み )

② 血液検査 ( 抗体検査 ) … 合計 24 000 Ft ( 手数料 2 000 Ft 込み ) / 約 9,600 円
各検査の料金は下記の通りでした。
・風疹ウイルス … 5 000 Ft / 約 2,000 円
・ムンプスウイルス / おたふくかぜ  … 6 000 Ft / 約 2,400 円
・モルビリウイルス / 麻疹など 6 000 Ft / 約 2,400 円
・水痘・帯状疱疹ウイルス 5 000 Ft / 約 2 000 円

初診、血液採取、検査で合計 26,700 Ft ( 約 10,680 円 ) となりました。

※ 2018 年 12 月上旬の情報です。当センターでは、国民健康保険は使えません。

Stipendium Hungaricum ( ハンガリー政府からの奨学金 ) に応募する場合は、medical certificate ( 診断書 ) が必要となります。健康状態を示す書類の他に、AIDS ( エイズ ) や Hepatitis A, B, C ( A 型・ B 型・ c 型肝炎 )、その他の疫病にかかっていないかを証明するものです。様々な病院やクリニックで検査できますが、これらの項目も当院で血液検査できるようです。

ワクチン接種と気になるそのお値段は ?

痛そうですが、あれもう終わり?ぐらいの感じでした。 Photo by 夫

検査結果を持って、再び診察へ。判定はといいますと、ほぼ全滅。( 涙 ) 子どもの頃、あんなに苦しんだというのに、調べたものは抗体が消えてしまっていると診断されました。 “ 念のために ” のつもりでしたが、まさか 💦

この日は検査結果の説明だけになると思っていましたが、担当医は「 今日の体調は?妊娠している?何もないなら、注射しましょうか? 」と提案してくれたのです。「 注射は 2 回に分けるけど、1 回来る回数が減るでしょう。」とのこと。同じ日に診察へ来ていた夫も当日にワクチンを打ってもらうことができました。

女医さんと看護師さんたちは、てきぱきと準備。診察室内で待ちましたが、5 分もかからなかったように感じました。注射はチクっと虫に刺されたよう。一瞬の出来事でした。

今回は、予約時間から全てが終わるまで 30 分少々公立病院のように長い待ち時間はないので、通院も足取り軽やか ♪  予約もその場ですぐに取れ、本当に助かりました。思っていた以上にトントン拍子で予防接種は完了です !

【 ワクチン料金 】
Priorix ( MMR ) / 風疹、麻疹、おたふくかぜ … 14 800 Ft ( 約 5,920 円 )
Varilrix / 水痘 … 11 900 Ft ( 約 4,760 円 )
注射代 ( 1 本あたり ) … 1 350 Ft ( 約 540 円 )

1 回目の支払いは、29 400 Ft ( 約 11,760 円 )。ワクチンは 2 回に分けて接種します。2 回目のワクチン投与は、1 回目から 1 ヶ月間あけて行います。2度目も注射代 2 本分 ( Priorix と Varilrix )  2 700 Ft ( 約 1,080 円 ) 。さらに、各種ワクチン料金が発生します。

初診から抗体検査、予防注射を合わせると 85,500 Ft ( 約 34,200 円 )採血なしでワクチン接種のみの場合*は、58,800 Ft ( 約 23,520 円 ) となります。なかなか痛い出費でしたが、将来に後悔するよりも今、注射することを決意しました !

*血液検査の結果や過去のワクチン接種の条件によって、注射の回数を判断されます。1 回で済む方は、採血なしで注射のみの 32,100 Ft ( 約 12,840 円 ) 。

その他、Vaxigrip / インフルエンザ … 5 290 Ft ( 約 2,110 円 ) などもあり。

ハンガリーでは、妊娠を望んでいる方は、2 回目の接種から 1 ヶ月間の避妊を原則としています。これについては、日本では 2 ヶ月間としていますが、当地ではこのように案内されます。

ワンポイント☆ハンガリー語
AIDS ( エーツ ) … エイズ ( 後天性免疫不全症候群 )  ※ 英語表記と同様
bárányhimlő ( バーラーニヒムルゥー ) … 水痘 ( 水ぼうそう )
oltóanyag ( オルトーアニャグ ) … ワクチン
fültőmirigy-gyulladás ( フルトゥーミリジ・ジュッラダーシュ ) … 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ )
hepatitis ( ヘパテティシュ ) … 肝炎 / 型は各々 A ( アー ), B ( ベー ), C ( ツェー ) hepatitis
HIV Virus ( ヒィーヴ ヴィルシュ ) … ヒト免疫不全ウイルス
kanyaró ( カニャロー ) … 麻疹 ( はしか )
mumpsz ( マンプス ) … 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ )
rózsahimlő ( ロージャヒムルゥー ) … 風疹
rubeola ( ルベオラ ) … 風疹
vakcina ( ヴァクチナ ) … ワクチン
védőoltás ( ヴェードゥーオルターシュ ) … 予防接種、予防注射
vérteszt ( ヴェールテシュトゥ ) … 血液検査
vérvétel ( ヴェールヴェーテル ) … 採血
vérvizsgálat ( ヴェールヴィジュガーラトゥ ) … 血液検査
ハンガリー暮らしの健康手帖では、読者の皆様の体験談をお待ちしております!自分の経験が誰かにとって価値ある情報になるかもしれません。海外暮らしに役立つ知恵をぜひ当ブログお問合せからご投稿ください☆

ABOUTこの記事をかいた人

武田友里

日本ハンガリーメディアート在籍の撮影コーディネーター ( Production Coordinator ) です。神戸大学を卒業後、映画などのロケ地として人気になっているブダペストの大学院でメディアの世界に飛び込みました。現在は、マルチリンガルを活かして、ハンガリーを拠点に中欧・東欧諸国での取材・撮影で走り回っています。