EUの新型コロナ「デジタル証明書」、ハンガリーではどうやって取得 ?


7 月 1 日から、EU 共通のコロナ証明書システムの正式運用が開始になりました。この証明書があれば原則、EU 域内は自主隔離や検査義務などなく自由に移動できます。

ハンガリーで既に発行されている免疫証明書との互換性はどうなっているのでしょうか。また、中国製やロシア製ワクチンを接種した人が認められるかどうかも気になるところ。 こうした疑問に加え、便利な各国の対応早見表を掲載しています。旅行を計画されている方は、ぜひご確認ください。

EU の証明書は「何を証明」 ?

EU 共通証明書 ( 正式名称は EU デジタル COVID 証明書 EU Digital COVID Certificate ) は、新型コロナウィルスに免疫がある、もしくは現時点で感染していないことを証明するものです。

具体的には、次の 3 つのうちどれかを証明することに。

  1. ワクチン接種
  2. 検査で陰性
  3. 感染後に治癒

証明書は、デジタル ( スマホなどモバイル用アプリ ) もしくは形式。その中の QR コードを読み込むとデータが表示される仕組みで、その国の言語と英語が併記されます。

申請できるのは、EU 市民や EU に合法的に居住している外国人で、発行は無料です。

共通のシステムに参加しているのは EU 全 27 加盟国、およびアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス。

EU 承認のワクチン ( ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ヤンセン ) の接種を完了し 14 日以上経過している方については、これらの国々どこでも隔離義務、別途検査陰性証明の提出義務なく入国が可能になります。

それぞれについて、留意事項をまとめたのが以下の表です。

出典: ハンガリー政府コロナ対策本部欧州委員会の情報をもとに、ハンガリー暮らしの健康手帖でまとめ

ハンガリーが独自に承認したシノファーム、スプートニクVを接種した方も、EU 証明書の取得自体は可能です。ですが、これらは EU では未承認のため、有効として認めるかどうかは各国の判断に委ねられます。

COVID 証明書は、身分証明書やパスポートの代わりをするものではありません。渡航の際にはお忘れなく。

※ 当地では期間限定で、PCR 検査や陰性証明書の取得に関わる通訳サービスを無料で受けられます。詳細は過去記事で。

ハンガリー在住の方々へ、期間限定で医療通訳サービスと抗原検査キット

2021.07.03

18 歳未満の子どもは ?

ハンガリーを含め EU 域内では、ファイザーの接種が 12 歳から認められていられます。そのため、接種していれば証明書の取得は可能。

家族で旅行した場合、親が証明書を持っているものの子どもが持っていない場合、子どもだけが別に入国後に隔離を義務付けられることはありません。しかしその場合、年齢により子どもに対して PCR 検査等陰性証明の提出義務を課している国がほとんどです。

EU は 6 歳未満の子どもに検査は課さないよう加盟各国に勧告はしていますが、これも各国の判断によります。渡航前には必ず目的地のルールをチェックしてください。

 

ハンガリー国内で接種した場合、どうやって入手する?

この EU デジタル証明書を実際に発行するのは、EU 機関ではなく各国当局です。そのため、ハンガリーでワクチン接種などした場合、ハンガリー当局に申請します。 (*)

* EU 域内で渡航予定のない方は、EU デジタル証明書を取得する必要はありません。

 

筆者の紙版証明書。EU域内でデザインは統一されています。 Photo by Ako

 

ややこしいのは、ハンガリーは 3 月から既に独自のプラスチックカード式の「 コロナ免疫証明書 」を発行し運用していたこと。その後 5 月からはスマホなどにダウンロードできるアプリも導入しています。既にお持ちの方も多いのではないでしょうか。

プラスチックカードの QR コードには現在、ワクチンの種類および接種日もすべて示されるようになりましたが、 EU デジタル証明書として使えるわけではないのでご注意ください。

このカードはあくまでも国内、およびハンガリーが 2 国間で入国規制の相互免除協定を締結している国のみです !!  対象の 国については、下の過去記事をご覧ください。

ハンガリー・コロナ情報 ( 26 ) 追加緩和、マスク全面解除など

2021.07.02

 

スマホアプリの QR コードにも同様に EU 必要データが示されるように。(*)  しかしこれは EU システムと完全に互換性があるわけではなく、新たなアプリが入手可能になった際に交換しなくてはいけないとのこと。 ( 政府対策本部の 7 月 1 日時点の発表 )

*iOS版はEESZT Lakossagi、アンドロイド版はEESZT alkalmazasというアプリ。しかしアプリダウンロード後に、PCなど別の端末で国の運営する電子医療情報管理システム EESZTの画面も開き、QRコードを読み込んだり表示されるコードをスマホに打ち込んだりと手順は煩雑です。ユーザー評価も星 1、2 がほとんど。

 

こうしたことから、もっとも取得が確実でわかりやすいのは、現時点では「 紙版 」と言えるでしょう。

紙版の取得方法を、社会保障番号 ( TAJ-szám ) を持っている場合、持っていない場合に分けて見ていきましょう。

EU 証明書アプリ、配布開始 (7月20日追記)

EU デジタル COVID 証明書のアプリのダウンロードが 19 日から可能になりました。ただし、ハンガリーの社会保障番号(TAJ番号)を保有し、電子行政サービス窓口《Ügyfélkapu》に登録済みであることが必要です。

◎Apple/App Store:EESZT Lakossági
◎Google Play/GooglePay: EESZT alkalmazás

手順についての動画(YouTube、ハンガリー語)

【注意】既にハンガリー国内版の免疫証明書のアプリをダウンロードしていた場合でも、アプリの更新が必要です。更新後、手順に沿って電子行政サービスに登録しているユーザーネームとパスワードを入力し、再度手続きして完了となります。

 

※これまで国内版免疫証明書のアプリダウンロードには、スマホ以外にもPCなどで電子行政サービスのサイトにアクセスしQRコード読み込み、コード番号受け取りなど手順は複雑でユーザーから非常に低い評価になっていました。

新しい EU 証明書版は端末はスマホ一つで済みます (ダウンロードが初めての場合、更新の場合ともに )

社会保障番号 ( TAJ ) ありの場合

TAJ szám は、ハンガリー国家社会医療保険の加入者に割り当てられる 9 桁の番号。国際結婚などによる永住、国費留学、自営業や現地採用されている方々が通常持っています。

紙版は、EESZT* のウェブサイトにアクセスし、自宅で PDF 文書をダウンロードし印刷が可能。ワクチン接種、検査陰性、治癒のどの場合でもこのサイトで大丈夫です。ただし、 政府の電子行政サービス窓口《Ügyfélkapu》に登録済みである必要があります。サイト言語は今のところハンガリー語のみです。

*EESZT は、国が運営する電子医療情報管理システム Elektronikus Egészségügyi Szolgáltatási Tér の略

 

政府対策本部による、証明書「 紙版 」取得方法の動画。 ( ハンガリー語のみ )

最後の「 証明書のダウンロード ( igazolvány letöltése )」をクリックしても PDF 文書が現れなかった場合は、ポップアップブロックの有効・無効の設定を疑ってみてください。

筆者は Google Chrome を使っていたところ PDF 文書が現れず、「 スプートニクを接種したからか ? 」と疑念が膨らみましたが、ポップアップ設定のためでした。EESZT のサイトのみ許可するよう設定を変更して解決しました。 ( Chrome のポップアップ設定変更方法はこちらから )

 

自宅でのプリントアウトがよくわからない、プリンターがないなどという場合は、政府行政窓口 ( kormányablak**) か、家庭医に赴き発行を申請することもできます。政府行政窓口では、事前予約は不要です。

**kormányablak の調べ方は在ハンガリー日本大使館が掲載しているこちらの情報をご参照ください。

 

社会保障番号 ( TAJ ) なしの場合

在ハンガリー日本大使館によりますと、社会保障番号のない方は政府行政窓口 ( kormányablak ) に直接申請します

申請先の行政窓口の検索はこちらから

調べ方はこちらをご参照ください。

申請後、その場で証明書 ( 紙版 ) が発行されるとのことです。( 在ハンガリー日本大使館の新型コロナ関連の最新情報はこちら )

 

早見表 : どの国がどのワクチン受け入れ? 

デジタル COVID 証明書は、これまで見てきたように、EU 域内共通とは言ってもすべての国でまったく同じルールというわけではありません。

ハンガリーでワクチンを接種した場合、一番の心配事は、スプートニクV、シノファームを認めてもらえるのかどうか。

これは国によりバラバラで、例えば隣国オーストリアはシノファームは認めているのに、スプートニクVは認めていません。一方、ハンガリー人に人気の夏の旅行先クロアチアは、どれもOK  ( クロアチアはハンガリーと別途、2国間で入国規制を相互免除する合意をしています。)

仮に EU 未承認のワクチンを認めていない国でも、PCR 陰性証明を別途取得すれば渡航は可能ですが、やはり面倒と言えば面倒。費用も時間もかかるため不利になった感は否めません。

以下の表は、ハンガリーのニュースサイト Telex.hu がまとめた EU 加盟国を含む欧州各国のワクチン有効性受け入れ状況です。

その他、各国の入国規制、国内での制限措置概略は EU 公式サイトの Re-open EU で確認できます。もっとも、各国の措置はよく変更され複雑なため、渡航前には目的地の国の公式サイトをチェックするようお勧めいたします。

 

公的機関によるコロナ関連情報

 

【免責事項について】「 ハンガリー暮らしの健康手帖 」は、情報発信の際、正確を期すために法令確認など最善の努力をしています。しかしながら、法律の専門サイトではなく、正確性・完全性を保証するものではありません。詳細につきましては、必ず関連公的機関の公式サイトをご参考にされるか、直にお問い合わせください。

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。