ハンガリーで一度は試してみたいのが “Fröccs ( フルッチ ) ”こと、ワインのソーダ (炭酸水) 割り。
ワイン好きの方は「邪道!」と思ってしまうかもしれませんが、当地ではとてもポピュラーな飲みもの。割り方でそれぞれ違う名前がついているほどなのです。しかも国の価値を代表するものとして登録されています。
そんなフルッチを楽しむための完全ガイドをまとめました。
もくじ
国民的な誇りである訳
ワインのソーダ割りは、ハンガリーだけにあるわけではありません。スプリッツァー ( Spritzer ) で知られるように、オーストリアやドイツなどでもあります。
では、なぜわざわざ Hungarikum ( フンガリクム*) に登録されたのでしょうか。
Hungarikumとは、国の価値を代表するような有形無形の文化財で、政府の選定委員会が審査し登録するか決定します。フルッチは 2015 年に登録。
登録当時の資料や報道によると、以下のような事柄が評価されたためでした。
- ワインと炭酸水の配合割合で異なる名前がついている。またそのネーミングが、人間の上下関係を反映したものだったり、風刺が効いていたりとなんともユニーク。種類は 50 種類以上もある。
- 炭酸水を作ることができる「ソーダサイフォン」は、ハンガリー人 イェドリク・アーニョシュ ( 1800 ~ 1895 ) の発明。 この発明がなければ、ここまでフルッチは定着しなかった。( イェドリクは、ダイナモと電動機の発明で有名 )
- フルッチ誕生以来 200 年近くたった現在も廃れることなく、全国津々浦々で皆に愛されていている。さらに新種が出てきたりと、進化を続けている。
- 外国人観光客向けのガイドでも、ハンガリーに来たら「 フルッチを試そう! 」と紹介されるほど有名になっている。
管理人も実は、ハンガリーに来た当初、周囲の人たちがワインに炭酸水を注いでぐぃぐぃ飲むのを見て「 えーー、水を加えるの ? 」と敬遠していました。
が、夏の暑い日に、キンキンに冷えたフルッチをいただいたところ、意外に美味だし喉を潤すには最適。ワインぽい別の飲み物と思えばそう違和感はありませんでした ( ウィスキーや焼酎の水割りもあるわけですし )。
何より良いのは、自分の好みやその時の気分、体調に合わせて配合を変えられること。ノンアルコールもありますよ。
ハンガリーでは、18 歳未満の飲酒は法律で禁止されています。未成年の方はノンアルコールのみにしてください。
いったいどこから生まれた?
ハンガリーでフルッチという言葉が誕生したのは、1842 年と言われています。
政治家・作家だったファーィ・アンドラーシュが自身が所有するブドウ畑での収穫に友人らを招待し、その中にイェドリクもいました。彼は自分で発明した目新しいソーダサイフォンを持参し早速ソーダ割りをつくって披露したわけですが、その時はドイツ語風にSpriccer と呼んだそうです。
しかし、そこに居合わせた詩人ヴルシュマルティ・ミクローシュは「ドイツ語っぽすぎる」とその言葉を気に入らず。炭酸のシュワシュワ音をハンガリー語風に表現し、独自に fröccs と命名しました。気のせいか、文字の感じも泡がたくさんというイメージですよね。
それではどんな種類があるのか、見ていきましょう。
フルッチの種類
フルッチのベースは通常、辛口白かロゼ。お店で「フルッチください」と注文すると、「割合は?」と聞かれることが多いので、少なくとも次の 3 つは知っておくと便利です!
もっとも一般的な3種類
もっとも一般的なのは、200㎖ か 300㎖ の、グラス 1 杯の量です。
マニアック向けバージョン (名前が絶妙 ! )
ここからがフルッチ名付けの真髄。ワインと炭酸水を足した量は 500 ㎖ 以上になってきます。
「大家」や「市長」といったお偉いさんの名がついているものは、ワインの量が多め。
逆に、家の「借主」や「金欠」と名のついたものは、ワイン少なめです。
イラストで示した以外にも、ハンガリー人の伝説のサッカー選手の名を冠した「 プシュカーシュ・フルッチ 」( 別名:ハンガリー対イングランド ) なるものもあります。
これは、今でも語り継がれる対イングランド戦 (1953 年) でハンガリーが勝利したことにインスピレーションを得て作られた比率。プシュカーシュは、マジックマジャールとまで言われたハンガリーサッカー黄金時代を築いたときのキャプテンでした。
まだまだいろいろ
フルッチはその他にも、果物のシロップを足したものや、ワインを入れないノンアルコールのソーダ割りの場合にも使われることがあります。
例えば
- Málnás fröccs ( ラズベリーフルッチ ) : ラズベリーシロップを足したもの。ロゼか赤ワインの kisfröccs にラズベリーシロップを足したものは、Macifröccs ( クマさんフルッチ )とも言います。
- Almafröccs ( リンゴフルッチ ) : リンゴジュース 200㎖ + 炭酸水 100㎖ (ノンアルコール)
- Gyerekfröccs ( 子どもフルッチ ) : ブドウジュール 100㎖+炭酸水 100㎖ (ノンアルコール)
ただここまでくると、普通のレストランの店員さんも知らないことが多いです。クマさんフルッチもお店によっては完全にノンアルコールだったりします。
極上のフルッチにするためのポイント
フルッチは自宅でももちろんできます。美味しくするには以下のポイントに留意してみてください。
- 炭酸水 szódavíz (=szikvíz ) は冷やしておく ( 5 ~ 7 度 )。ミネラルたっぷりのミネラルウォーター ( ásványvíz ) ではなく炭酸水の方が良いとされていますが、あまりこだわらない人もいます。
- ワインも同様に冷やしておく。
- 安かろう悪かろうのワインは避ける。炭酸水を加えて味が改善するわけではありません。最高品質のワインである必要はないですが、一定以上が良いです。
- ワインは辛口白かロゼが合うと言われています、お好みにより選んでください。管理人のお勧めブドウ品種は、中東欧でメジャーな Olaszrizling / オラスリズリングかハンガリー固有の Irsai Olivér / イルシャイ・オリヴェールあたりです。
読者の皆様も、「 こんな飲み方がお勧め 」というのがありましたら、ぜひ管理人までお知らせください!
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