ウクライナ危機ーーハンガリーでの生活に影響?

ハンガリーの隣国であるウクライナへのロシア軍による軍事侵攻。多くの人が「まさかこの時代にこんなことが」と言葉を失い、恐怖や怒りなど様々な感情に襲われたのではないでしょうか。

ハンガリーで暮らすうえでは今、パニックになる必要はありません。ただ、刻々と変化する現在の状況を把握しておくこと、ハンガリー政府の基本スタンスや政策を知っておくことはとても大事です。重要なことをまとめました。

生活はほぼいつも通り

2022 年 2 月 27 日、日曜日のブダペスト市中心部。Photo by Nahoko

ハンガリーでの生活は、隣の国で戦争が起きているとはまったく思えないほど平和です。

ただ、上の小見出しで「 生活はいつも通り 」とせず「 ほぼいつも通り」としたのは、やはり直接関係なくても影響が出ているところ、そして今後出そうなところはあるため。

どんなことがいつも通りで、どんなことには影響が出ているのか、まとめてみました。

  • 食糧、医薬品:いつもと同じように手に入ります。特定の商品が品不足というニュースも今のところなし。

 

  • 銀行業務:ATM、銀行 / クレジットカード利用 を含め通常通りです。
    ただし、EU 制裁の対象になったロシア Sberbank ( ズベルバンク) のハンガリー支店は営業停止中。
    もっともハンガリー国内では小規模銀行のため、影響がおよぶ人は限定的です。

 

  • 為替:ロシア侵攻後、ハンガリーの通貨フォリントは主要通貨に対して軒並み低下しています。
    市場では2 月 28 日、1 ユーロ = 372 Ft 程度となり史上最安値を更新。日本円では、100 Ft =35円を切っています。例えばこれから日本へ一時帰国 / 帰国のため航空券をフォリントで購入される場合、価格が上昇しそうです。

 

  •  自動車燃料:十分あります。また現在、高インフレ対策の一環で、ガソリン ( 95 オクタン ) とディーゼルの給油所での価格は上限 480Ft / ℓ に抑えられているため、価格変動もなし。

 

  • 家庭用電気・ガス料金:国が料金を統制しているため、影響は今のところなし。政府はエネルギー分野はEUの制裁にも含まれていないと説明しています。また天然ガス備蓄も十分とのこと。

 

  • インフレ:自動車燃料、家庭向け電気ガス、6つの基礎食品 ( 小麦粉、砂糖、ひまわり油、豚もも肉、鶏むね肉、牛乳) の価格が現在統制されているため、国内ではある程度は守られているとは言えます。
    .
    しかし既に高インフレになっていたところ、この非常事態でさらに加速、長期化する懸念が深まっています。エネルギー価格は世界的に高騰しており、今後さらに輸送コストが上昇するのは不可避。フォリント安とあいまって、輸入製品の価格も押し上げられそうです。なお、ハンガリー国立銀行はロシアの軍事侵攻前に、2 月のインフレは 8.5% 近くになると予想していました。

 

  • 飛行機:EU 制裁のため、ハンガリーを含む全加盟国の領空におけるロシア航空機の飛行は禁止。ロシアは対抗して、これらの国の航空機のロシア上空飛行を禁止しています。
    そのため、ブダペスト発モスクワもしくはサンクトペテルブルク行きもすべて欠航に。( 通常であれば、Wizz Air、アエロフロートが運航しています )

ウクライナへは当然ながら全便欠航となっています。また、ヨーロッパとアジアを結ぶ路線も、ロシア上空を飛べないため、運行に少なからず影響が出ているようです。( 3 月 9 日追記:日本と欧州を結ぶ便はかなり欠航になっています。また、運航される場合も変更が多いようです。ロシア上空を飛べずに南回りになるため、最低でも2~3時間は余計にかかります。記事の末尾に体験談を加えましたのでご覧ください。)

上限価格ぎりぎりの 479.9 Ftとするところが多いです。市場価格ならば 510 Ftは行っています。Photo by Ako

 

 

ハンガリー政府の基本的な考え方

ハンガリーは NATO (北大西洋条約機構)、また EU (欧州連合) の加盟国。

ですが、オルバーン首相はこれまでプーチン大統領と緊密な関係構築を図る一方、EU 欧州委員会らに「 ブリュッセルが権力を拡大しようとしている 」などと盾突くことが多かったため、ウクライナ危機での出方が注目されていました。

実際は、プーチン大統領について他の欧米指導者のように厳しく非難することこそないものの、EU、NATO と足並みを揃えることは強調。

かなり厳しい EU 制裁パッケージにも、またウクライナへの武器供与のための資金拠出などについても、拒否権を行使することなく支持してきました。

一方で、何度も繰り返しているのが、ハンガリー人の安全第一のため「 隣国の戦争に加わることはない、巻き込まれてはならない 」ということ。

そのため、ドイツなどのようにハンガリーが独自に武器をウクライナに供給することはなく、さらに EU や他の EU 加盟国が武器輸送のためハンガリーを経由することも拒否しています。

 

ハンガリー政府基本スタンス
  • ウクライナの主権と領土の一体性を支持する
  •  EU、NATOとともにロシアの軍事行動を非難する
  •  隣国の戦争には参加しない。ハンガリー人の安全が最重要であり、参加しないことが国益にかなう。
    そのため、
    派兵しない
    武器も供給しない
    EU(その他の国)がウクライナへ武器供給する際、ハンガリー領土・領空の使用は許可しない
  • 戦争は解決にならない、外交努力での解決を求める
  • EU制裁は支持する
  • ウクライナ避難者への人道支援は行う
  • ハンガリーへのエネルギー供給は確保する

 

ウクライナからの避難者、続々到着

ブダペスト市西駅の様子 ( 2022 年 2 月 28 日 )。 ウクライナでは国民総動員令が発動され、18 ~ 60 歳の男性は出国禁止のため、ハンガリーに到着する避難者もほとんどが女性と子ども。その他、ウクライナに滞在していた外国人就労者や留学生など。Photo by Atti

 

ハンガリー政府は、ウクライナへの軍事支援は拒否している一方、人道的支援は積極的に行うと表明しています。

ウクライナからの避難者に対しては、容易に入国できるよう難民庇護申請ルールを改正。国境には人道的支援向けにも兵士、警察を多く動員しています。

オルバーン首相は反移民で知られますが、「遠くから来るイスラム系移民と、ウクライナ・ロシア戦争からの避難者の区別は誰でも簡単につく。(中略) ウクライナにとって隣国ハンガリーは友人である」と述べています。

ハンガリーの東部、ウクライナと接する国境検問所は全部で 5 か所。平時には夜は閉まる小さな検問所も、今は 24 時間往来が可能です。

 

 

2 月 24 日のロシア侵攻以来、ウクライナからは 50 ~ 60 万人程度が脱出。

行き先で一番多いのはポーランドで 35万人程度。

次に多いのがハンガリーで、2 月 28 日朝 8 時までに合計 85,400 人が入国しています ( 出所: ハンガリー警察 ) 。

ハンガリーと隣接するウクライナのザカルパート州は、歴史の経緯からハンガリー系住民が多いところ。そのため、ロシア攻撃開始直後はハンガリー語を母語とする人たちが多く避難してきました。しかし現在は、ウクライナ語を母語とするウクライナ人の流入の方が多くなっているそうです。

大半の人は入国後の数日以内には、親せきや知人を頼って国内の違う町、さらに別の国へ移動。国境付近では人々が続々と到着しており待ち時間も長くなっていますが、混乱に陥っているということはないようです。

 

28日には、国内東部から多くの人が列車でブダペスト市西駅に到着。

駅ではボランティア団体が避難者の到着を待っていて、食料、ベビー用品、衛生用品などを配布 ( 2022年2月28日 ) Photo by Atti

 

駅ではボランティア団体が食料を配布するほか、

① 空港に行きたい人
② 行き先がない人
③ ポーランドなどに鉄道で向かう人

の 3 カウンターがあり、それぞれ支援しているそうです。

②の人には、ブダペスト市や団体が宿泊施設をオファーしています。

 

国際便に影響 2022.03.09 追記

すみれさん
私は現在、家族の事情で日本へ一時帰国しています。いざ、ハンガリーへ戻ろうとした矢先、ロシアがウクライナへ侵攻。

現地に住む友人たちやその家族が頭をよぎり、ものすごいショックを受けていました。きっと皆さんも憤りや深い悲しみ、虚しさ、様々な想いを抱いておられると思います。

ハンガリーの隣国で起こっていることは理解していたつもりでしたが、まさか、フライトが全便欠航になり、我が家に帰られない事態になるとは……。

もともとの予定では 3 月半ばに日本出発でしたが、航空会社から欠航の知らせ。予約取り直しのため同社のウェブサイトを見ましたが、4 月でも運航本数が激減しているうえに当初計画していたルートはなく、先も見通せない状況です。

命の危機にさらされてはいませんが、ハンガリーに残してきた家族といつ再会できるのかわからない悲しさは言いようがありません。

そして、飛行機で外国へ移動するというのは、平和があってこそ成り立つものなのだと改めて感じました。今は変更便情報を待っているところですが、何よりも一刻も早く、外交に必要のない戦争をやめてほしいと願うばかりです。

その他、日本郵便は欧州を中心とした約 20 カ国・地域への国際郵便 ( 国際スピード郵便 EMS と航空便 ) の引き受けを停止。ハンガリーについては、残念ながら航空扱いの小包郵便物は差出不可となっています。詳細は、日本郵便公式ホームページから確認できます。( ここをクリック )