電気ガス、気をつけないと請求額が数倍に!? 


ハンガリーでは8月から、安く抑えられていた電気ガス料金制度が変更に平均使用量以上は、何倍もの料金が課せられることになりました。そのため、ハンガリー人の間では、物価高騰と同じくらい今、話題になっているテーマです。在住者として知っておくべきことをまとめました。

平均超過分の料金は数倍に

家庭向けの電気ガス料金については、そもそも 2013 年から制度上安く抑えられる仕組み*になっており、事実上の価格統制が行われていました。

*ハンガリー語では、rezsicsökkentés / レジチュッケンテーシュ ( = 光熱料金の圧縮 ) と言います。

そのためここ数か月の世界的なエネルギー価格の上昇にも関わらず料金はそのままで、欧州連合 ( EU ) の中でもハンガリーは最も安い国の1つだったのです。

オルバーン首相率いる現政権は、本年 4 月の総選挙でも「 制度を守り抜き、家族を守る 」と有権者にアピール。

しかし、国有エネルギー会社の調達価格と統制価格の差があまりにも開きすぎ、国からの補填が増大し財政を圧迫することに。そのため、安い料金対象の縮小を余儀なくされました。

具体的には、使用量が国内全住宅の「 平均使用量 」以内であれば、これまで通りの安い料金が適用にしかしそれを上回る超過分については、電気は統制料金の約 2 倍、ガスは 7 倍超となります。期間は当面、本年 8 月 1 日から来年 7 月 31 日までです。

 

平均以内かどうやって確認?

共同住宅内にあるガスメーター  Photo by Yuri

制度変更で、まず頭に浮かぶのは「 うちの使用量は、平均以内 ? 」ということでしょう。

1つの確認方法は、備え付けられているメーターで 1 日あたり、1 週間あたりの使用量を見てみること。しかし現在は夏のため、暖房シーズンの冬の使用量まで把握するのは不可能です。

もう1つの方法は、昨年1年分の請求書を確認すること。これは既に当地に1年在住していることが前提とはなりますが、そうでない場合は大家さんに過去の状況を尋ねてみてください。

ハンガリーの電気ガス料金の支払い方法には、次の2つがあります。

  1. 毎月、自分で電気ガス会社にオンラインで報告し支払う。ただし、電気ガス会社による検針も 1 年に 1 度はある。
  2. 月々では前年使用量をもとにして請求される一定額を支払うだけで、検針が行われたらその翌月に使用量に応じた従量料金を支払う。検針は通常、半年~ 1 年に 1 度程度。こちらの方法をとっている家庭の方が圧倒的に多いです。

単純計算して、過去 1 年 ( 21 年 8 月~ 22 年 7 月) の請求額合計が、

電気は 90,720 Ft

ガスは 176,400 Ft

までに収まっている場合は、使用量は平均以下ということになります*。

*これはあくまでも「単純計算」です。実際の料金制度はネットワーク使用料金その他が入りもっと複雑です。

 

何平米のアパートから要注意なのか

Photo by Atti

政府は、全世帯のうち 75% の使用量は平均以下のため、制度変更でも影響を受けない」と強調しています。しかし、本当にそうなのでしょうか?

そもそも、全住宅の「 平均使用量 」というのには、夏場にしか使わないセカンドハウスも含まれているそう。そのため、専門家のホロダ・アッティラ氏 ( 元エネルギー担当次官 ) は 50 % 程度は平均使用量を超過しているだろうと指摘しています。 ( 出典:RTL Klub なお、政府はガス使用量が年間 400㎥ に満たない住宅は計算から外したと説明)

いったい、どのくらいの大きさのアパートから平均使用量を超える可能性があるか、少し周りに聞いてみました。

すると、70 平米弱のアパートに一人住まいをしている日本人 A さん ( 20 代 ) のケースが、年間電気料金 8.4 万フォリント、ガス料金 17.1 万フォリントとほぼ平均でした  ( 下表参照 )。

Aさんは日中は不在ですが、夜や週末はだいたい在宅。自炊も結構しています。ただ、7月と8月、および 1 月は一時帰国していました。

表作成: Ako

使用量は、生活スタイルや、家族構成により大きく左右されます。そのため、これより小さいアパートでも平均使用量を超えることは大いにありますのでご注意を。

またアパート自体が「 天井が高い 」、「 暖房システムが古い 」、「 窓から隙間風が入り、断熱効果が低い 」、「 備え付けの冷蔵庫がとても古い 」などがあると、使用量は増大してしまいます。

 

夏と冬では異なる使用量、どうやって計算?

制度の変更が発表されてから、市民が最も心配しているのは、冬の料金がどうなるかということ。ハンガリーの家庭での暖房は、ほとんどがガス。夏のガス使用量は月平均の 144 ㎥ 以下に収まっていても、冬はそれを軽く超えると懸念されています。

国有エネルギー会社 MVM は、下図のように月ごとの平均使用量を算出。前述の支払い方法 ①を選択している人は、毎月の使用量がこの範囲内に収まっていれば安い料金のまま。これを超えれば、超えた分だけ高い料金を支払うことになります。

 

毎月のガスの想定平均使用量

(単位:㎥ )

出典:Portfolio.hu

 

しかし例えば、8月はほとんど不在で使用量は平均 15㎥ にも届かない 5㎥、逆に 12 月は平均量を 10㎥ 上回る 307㎥ だった場合はどうなるのでしょうか?

MVM によりますと、「 平均使用量までは安い料金 」というのは、「 1 年間の平均使用量 」のこと。そのため、各月に生じる平均より下もしくは上という状況も、2023 年 8 月に 1 年を通した合計使用量を見て調整するのだそう。

一方、② の支払い方法の家庭は、引き続き前年の使用量をもとに毎月料金が請求されます。そのため、昨年の使用量が平均を上回っていれば、請求金額も大きくなります。

例えば昨年のガス使用量が平均 1,729 ㎥ を上回る1,900㎥ だった場合、これから1年に毎月請求される額は高い料金も足されることに。しかし今後1年、節約を頑張って仮に1700㎥ で抑えた場合は、来年 8 月の検針後に差額は返金、もしくは次の年の請求額から減額されるそう。

逆も真なりで、今後1年の使用量が前年より高ければ、検針後にどーんと請求されることもあり得ます。

 

大家さんときちんと話す

現在、賃貸でハンガリーに住んでいる方は、なるべく早く大家さんときちんと話し確認しておくことをお勧めします。

当地では電気ガスの名義変更の手続きが煩雑であるため、賃貸住宅で入居者が変わる度に変更することはほとんどありません。その代わり、大家が立て替えて後で請求したり、もしくは毎月一定額を光熱料金として請求し、実際の使用量がそれより多くなった場合に追加請求するというパターンが多いです。

この新らしい料金制度は大家さん達にとっても初めてのことなので、蓋を開けてみるまでわからないということはあるでしょう。新制度下で請求書が届いていない段階で、毎月一定の光熱料金支払額の引き上げを通告された場合は要注意。引き上げの根拠をしっかり説明してもらい、どうすることが双方にとって最善なのか話し合ってみてください。くれぐれも便乗値上げにならないように。

一つ、トラブルを避けるためにしておいて損のないのは、電気、ガスともにメーターの写真を今すぐ撮って記録に残し、大家さんと共有しておくこと。その後退去する際に、もしくは来年 7 月末にメーターを見れば、使用量がどれほどだったかわかります。

特に、来年の7月末までハンガリーにいない方は、入居時と退居時にきちんとメーターで確認するようにしてください。

 

【参考資料】
制度変更に関する政令:官報2022年121号 ( ハンガリー語 )

MVMの、よくある質問 & 回答 ( ハンガリー語 )

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。