「え、小さくなってない?」がわかる、ステルス値上げ表示義務化へ

見かけは一瞬同じなのに「 え、なんだか小さくなってない? 」ということはありませんか。それは「 ステルス値上げ 」のせいかもしれません。2024 年 3 月 1 日から、食品スーパーでは、そういった商品へ注意書きがされることに。その内容をお伝えします。

 

ステルス値上げとは

「 ステルス値上げ 」は、英語の隠密、密かに行うという意味の “stealth” から来ています。ですので消費者に知られずに「 こっそり値上げ 」、ということ。

商品の価格はそのままで内容量を減らして販売するので、縮小すること ( shrink ) インフレーション ( inflation ) を掛け合わせて「 シュリンクフレーション ( 英語:shrinkflation、ハンガリー語:zsugorfláció ) 」とも言われています。

前々からあった手法ではありますが、物価の急上昇で日本も含め、あちらこちらの国でここ 1 ~ 2 年、特に目立つように。

食品の価格の下には、よぉ~く見るとキロあたりの表示もされていますが、消費者は通常、値段そのものしか見ていないとされます。仮にキロあたりの値段を見ても、覚えていることはあまりないとされます。Photo by Ako

 

パッケージ自体はこれまでと全く同じ、またはほとんど同じであるため見分けがつきづらく、「 こっそり値上げ 」した感はぬぐえません。中には内容量が減っただけではなく、品質が低下しているものも。そのため消費者から反感や不信感を招きやすいのです。

ハンガリーの現政府は「 家族を守る 」ことを最重要課題に掲げ、何かにつけて多国籍小売業者を叩いてきているため、これについても見逃すわけがありませんでした。23 年 9 月には声明を発表し、こうした事業者らは「 利益をさらに増やすために隠れた値上げ、品質の引き下げを行っている 」と糾弾。「 断固たる措置 」を講じると約束していていました。

そして今回、告知が義務化されることになったのです。

 

周知義務の内容

国家経済省による政令 ( 24 年 1 月 9 日 発表 ) に従い、主要食品小売事業者は 3 月 1 日からこうした実質的な値上げを表示する義務が課せられます。

対象になるのは、2020 年 1 月 1 日 ~ 2023 年 7 月 1 日の期間に販売していた時よりも、重量または体積が減った場合。周知は原則 2 か月間です。

小売業者だけではなく、ハンガリー国内製造の場合は製造業者、また輸入の場合は輸入業者・卸売業者も、内容量の減少について小売業者に告知する義務が発生することに。これらの義務を怠った場合は、1 商品につき 100 万 Ft の罰金が科せられます。

この措置により、今までよくわからなかったステルス値上げの見える化 が進むと期待されています。ですが、次の 2 つの点で、状況をくまなく把握するのは難しい、というのも事実です。

 

 

すべての店でわかるわけではない

表示義務が課せられているのは、年間 10 億 Ft 以上の売上がある食品小売事業者。スーパーでは、外資系の Lidl、Aldi、Spar、Tesco、Penny、Auchan に加え、ハンガリー系の Coop、CBA、Reál も対象になる見込みです。

これまで政府が課す措置には、規模の大きい外資系だけが対象になることが多かったのですが*、今回は最低売上高が低めに設定されているため、ハンガリー系も含まれることになりそうです。

*ハンガリー系食品小売チェーンはフランチャイズ形式が多く、同じブランドでも売上はフランチャイズ経営店ごとで換算されるため、結果として外資系のように売上が大きくなることがありません。

ただそれでも、全部の店舗が含まれるのかは未知数。さらに、街角にあるような個人経営のお店では表示義務はありません。

加えて、パン屋、ケーキ屋、市場などでもステルス値上げはわかりません。レストランも対象外です。

 

義務は包装済み食品のみ

周知義務があるのは「 包装済み食品 」のみです。つまり、クッキーやヨーグルトなど、あらかじめ袋や容器に入っているもの。例えば、お店のパンコーナーにある主食用パンや菓子パンの重量変化はわかりません。

さらに、非食品に関しては表示義務はなし。洗剤の量が減った、石鹸が小さくなった、というようなことも聞きますが、こうした日用品に関してはわからずじまいとなります。

 

 

こんなものが縮んだ!

TikTok では、ハンガリー語で非常に細かい商品批評をしている termékkritikus ( @termekkritikus ) というアカウントがあります。

それによりますと、例として、以下の商品の内容量の縮小が確認されています。

  • Balaton szelet  ( ウェハース菓子 )1 本 30g ➞ 27g に。コーティングもかつてはチョコだったのに、ココア粉末駆使のチョコ似に替えられ品質低下。
  • Győri Édes  クッキー 1 袋 200g ➞ 180g に。
  • Sió 濃縮果汁リンゴジュース 500ml ➞ 400ml に。しかも果汁 25 % から 12 % に低下。
  • Nesquik 粉末ココア 1 袋 200g ➞ 150g に、大きな袋は 700g ➞ 600g に。

ハンガリーでは昔からあるお菓子。小腹がすいたときに。たかが3グラム、されど3グラム減! Photo by Ako

一消費者としては、値上げしたのであれば堂々と提示してほしいところ。告知義務措置に限界はあるものの、これにより製造業者、小売業者らが顧客に対してより誠実になってくれればと願っています。

 

参考にした記事

Lebuktak a magyar boltok, tényleg az ősi trükkel emelnek árat: 5+1 termék, amit legrammoztak ( Penzcentrum.hu 2023 年 10 月 31 日付 )

ステルス値上げに関する政令
「食品インフレの低下促進のための必要な措置に関する政令1/2024. (I. 9.)
A Kormány 1/2024. (I. 9.) Korm. rendelete
az élelmiszer-infláció csökkentése érdekében szükséges intézkedésekről
ハンガリー官報 2024年第2号 (1月9日付)