3 人産んだら 1000 万 Ft ( 約 370 万円 ) もらえる ? 国外からも関心を集めたハンガリーの大盤振る舞いの家族政策が、開始以来もうすぐ 5 か月になります。
これまで何人くらいの人が「 産みたい、産もう! 」という気になって補助金に応募したのでしょうか ? また人口は増加に転換 ? など、国内のニュースをまとめてお伝えします。
応募は予想以上
政府が今年の冬に発表した《 新家族政策 》は合計 7 項目。そのうち 4 項目は、7 月 1 日にスタートしました。中でも話題になった 2 つの項目について見ていきます。
3 人出産で 1000 万 Ft
この支援策は「 融資 」ですが、3 年以内毎に 3 人産めば、最大 1000 万 Ft ( * ) を返さなくてもよい =つまりもらえる勘定に。この額は、ハンガリー人の平均年収の 2.5 倍に相当します。
政府による広報動画 ( csalad.huより)
申請数は 5 万件を突破するという好調ぶり。( 政府の 11 月 18 日発表による。出所: 政府公式サイト kormany.hu )
ハンガリーの人口は約 980 万人です。また、ここ数年の年間出生数は 9 万人前後のため、この重みがおわかりいただけることでしょう。
( *Ft = ハンガリーフォリント、100 Ft ≒ 37 円、2019 年 11 月現在 )
大家族マイカー購入で 250 万 Ft 補助金
この措置では、子ども 3 人以上の家族が 7 人乗り乗用車を購入する場合、最大 250 万 Ft の補助金が給付されます。3 人目の子どもは妊娠 12 週から申請可能です。
政府による広報動画 ( csalad.huより)
この補助金は返済の必要なし。丸々もらえるので超お得です。
これまでの申し込みは 2 万件に。既に 3 000 件近くが承認されました。
ハンガリーの新車乗用車販売台数は約 14 万台弱 ( 2018 年 ) だったことを考えると、この申請数は今後、市場全体にも影響を与えるほどになります。
需要が予想を大きく上回ったため、政府は 10 月に予算積み増しを決定したほどです。
これまで最も多いのはダチア ( Dacia、ルーマニアのメーカーでルノーグループ傘下 ) 。お手頃価格であることが受け入れられているようです。「 補助金を得れば 210 万 Ft から!」といった宣伝も見かけます。5 人乗りの新車ですら、これほど安価なものは稀です。
図: 補助金成約済み約 3 000 件のうち、ブランド内訳 2019 年 11 月 13 日現在
人口は ?
次に、実際に人口増加の気配が見られるのかどうか、見てみましょう。
ハンガリー中央統計局の最新の人口統計 ( 2019 年 1 ~ 8 月期 ) によりますと
〇 出生数 58, 254 人 ( 前年比 1.9 % 減 )
〇 死亡数 87, 726 人 ( 同 0.2 % 増 )
と、引き続き死亡数の方が 3 万人近く多くなっています。このままであれば今年も例年と変わらず、 3 ~ 4 万人の自然減少になりそうです。
また、合計特殊出生率は1.46 人と、政府の目標 2.1 人には遠く及びません。
もっとも、出生数への効果を見るにはまだ時期が早すぎるでしょう。
措置の開始は 7 月 1 日であったことに加え、妊娠期間自体が 9 か月あります。そして何より、都合よく即座に妊娠できるわけでもありません。
そのような中、政府が成果を強調しているのは婚姻数です。
近年は年に約 5 万組が結婚していますが、今年は年初来 8か月で 4.3 万組を超えています ( 前年同期比 18 % 増 * ) 。
月ベースでみると、特に今年の 8 月は急激に伸び、1.1 万組以上。前年同月比で 33 %も増加しました。
( * 婚姻数には再婚数も含まれています。)
真の転換まで第 2 弾、第 3 弾も
オルバーン首相は、これまでも大胆な家族政策を多く行ってきたものの、出生数はまだ少ないと認めています。( 出所 : 2019 年 9 月、ブダペストでの人口問題サミットにおける基調講演 )
しかし「 移民受け入れ断固拒否 」には変更なし。あくまでも「 ハンガリー人の増加 」を図ります。そのため、ここ最近は街のあちこちに「 ハンガリーは子どもファースト ! 」、「 家族が一番 ! 」、「 未来の赤ちゃんへ支援 ! 」などとするポスターが貼られている状況です。
オルバーン首相は、出生率が増加へ真の転換を迎えるには、「 子どもを産む方が、産まないよりも経済的により良い暮らしになる 」と保証されることが必要と述べています。その状態への到達は、国による財政支援が必要不可欠とし、今後も第 2 弾、第 3 弾の手厚い家族政策をまとめる方針を明らかにしています。
( 当記事で掲載した情報およびデータはすべて、2019 年 11 月 24 日現在に入手しうるものです。当サイトでは、今後もハンガリーの家族政策についてアップデートしていきます。)