ブダペスト市での粗大ごみ回収方法が、今後大きく変わる見込みです。
現在の「 道路に出し放題 」はもう終わりに。その代わり指定場所への持ち込みになる予定です。これまでわかっていることをお伝えします。
※制度の変更は、首都ブダペスト市内のみが対象です。
新システムとは
2024 年 12 月半ば、廃棄物処理会社 MOHU *が、ブダペスト市内での粗大ごみ回収システム ( lomtalanítás / ロムタラニーターシュ) の抜本的改革計画を発表しました。
*MOHU =正式名称は MOHU MOL Hulladékgazdálkodási Zrt. ハンガリーの石油ガス会社 MOL グループ傘下の会社です。
新システムのポイントは
- 各区に複数の集積ポイントが設置される。どの住民も最大 800 ~ 1000 m以内でアクセスできるようにする。
- 持ち込みは無料。
- 各集積場所での持ち込み可能期間は 1 年に 1 度、3 日間とする。
現在は、自宅前の道路に不要になった家具などを置き、翌朝に回収される方式。1 年に 1 度、区ごとに回収時期が決まっていますが、この期間は大きなゴミが道路に溢れかえり、まるで無法地帯のよう。これを「きちんと管理された場所と方法」で実施するのが狙いです。
本格導入は 2 年後に先送り
MOHU による発表は、市民の間で物議を醸すことに。
というのも、MOHU は市や区との事前協議なく、なんの前触れもなく発表したから。
また、12 月半ばに発表し、翌年 2025 年には導入する、という拙速ぶりでした。
これでは住民がついていけるわけがありません。ブダペストの現在のシステムは実に 50 年も続いてきたのであり、住民にとっては 1 年に 1 度、無料で処分できる貴重な機会なのです。
いくら 各区に複数の収集ポイントができると言っても、何十メートル、ましてや何百メートルも「運ぶ」のはひどく骨の折れる作業になってしまいます。
クルマを持っていない場合はどうすればよい?
クルマを持っていても、そもそも家具など大きすぎて運べない !
など、困惑や反発の声が次々にあがりました。
こうした声を受け、政府と MOHU は計画の修正を余儀なくされることに。
ラントシュ・エネルギー大臣は年明けの 1 月 16 日、本格導入を 2027 年にするとし、2 年間の先送りを発表しました。
それまで 2025 年、26 年については、各区が、
(A)現行システムの維持
もしくは、
(B)新システムの導入
の、どちらかを選べることになりました。
市内には 23 区あり、今後、各区が随時発表していくことになると考えられます。
自分で運べない人はどうする?
MOHU によりますと、集積場所まで自分で粗大ごみを運ぶことが困難な住民については、MOHU が戸別訪問し無料で回収する計画。
そのために、MOHU は地元自治体の協力を得て、こうした住民のデータを収集するそうです。(実際には、自治体がこうした社会的弱者を特定し、対象者リストをまとめることになります。)
こうした対象者にならなかった場合でも、希望すれば自宅まで回収しにきてもらうことは可能。その場合は有償で、1 立方メートルあたり7600 Ft が請求される予定です。
そもそもどうして改革に?
ブダペストの現在の制度は、処分する側からすると便利ではありますが、MOHU は次のような問題があると指摘しています。
- 住民に迷惑をかける
- 数日にわたり駐停車が困難になり、歩行者の妨げにもなる
- 本来、出してはいけない危険物(電化製品、ガラスなど)を出す人が絶えない。( 禁止物については過去記事をご覧ください)
- 都市の景観を損ねる
- 衛生上の問題がある
実際どうかというと……
確かに駐車スペースにゴミの山ができています。
電化製品はダメなのに、お構いなし。
ガラス製品も禁止ですが、この通り。電球が割れ落ちていて、小さな子どもや犬・ねこは気づかずに踏んでしまうかもしれません。ガラス製品でなくても、強風にあおられて何かが飛んだ場合は危険ですね。
観光客がかならず観に行く国会議事堂の前も、粗大ごみの日は無造作に不要物が。これでは景観が台無しです。
その他、捨てられたマットレスにトコジラミなどがついているかもしれない、というような衛生上の懸念もあります。
これらの問題は前々から指摘はされていましたが、このタイミングで制度改革の方向で動きだしたのは、国内すべての家庭・産業廃棄物の回収処理を行う会社 MOHU が 2023 年 7 月に設立されたためです。
政府は「サーキュラーエコノミー (循環経済) 」に向けて様々な取り組みを行っており、廃棄物・資源分野での戦略実施には MOHU が大きな役割を担っています。そのため、全国レベルでプラスチックやビンの回収方法など、制度が変化してきています。
MOHUは、地方の市や村では、既に指定された場所に粗大ごみを運ぶという「管理された方法」がうまく機能していると主張しており、ブダペスト市でも導入すべき時が来たという考えです。
今後、市の新制度導入にあたっては、より細かいルールが明らかになっていくと考えられます。『ハンガリー暮らしの健康手帖』では、随時まとめて情報を更新して参ります。