ハンガリーでのアフリカ豚コレラ発生状況

ハンガリーでは、野生イノシシの間アフリカ豚コレラの感染が拡がっています。9 月下旬には、ブダペスト近郊の森林地帯で多数の死亡を確認。家畜の豚の感染例は? 人には感染するの? 豚肉は食べて大丈夫? といった情報をお伝えします。

ブダペスト近郊でもイノシシ大量死亡

欧州連合 ( EU ) 域内で、アフリカ豚コレラウィルス ( ASF ) 感染例が初めて確認されたのは 2014 年。

最初はバルト 3 国、ポーランドなどでしたが、現在はルーマニアやブルガリア、ベルギーなどでも発生しています。

ハンガリーで、野生イノシシにおける感染が確認されたのは 2018 年 4 月のこと。 ( ハンガリー語は afrikai sertéspestis: ASP )

以来、発生は国内北東部に留まっていましたが、本年 9 月下旬に、ブダペスト市西側の森林地帯野生イノシシの約 170 頭が ASF で死亡したことが確認されました

国内での 10 月上旬までの野生イノシシの死亡件数は合計 2000 頭前後。

これまで発生が確認されたのは、国内 19 県のうち 7 県になっています。( なお、アフリカ豚コレラと、豚コレラは違う病気です。)

図: 国内の ASF 発生状況
四角い赤はこれまでの発生場所
四角い青は新たな発生場所

画像出典:Nébih ( 食品安全監督局 )

野生イノシシや豚が感染した場合、発熱やチアノーゼなどの症状を見せ、致死率は 100 % に近いとされます。

ただし、国の動物衛生当局や食品安全監督当局 Nébih によると、国内で飼養する豚については、感染例はなしです。( 2019 年 10 月 8 日現在 )

国内では既に 5,000 頭程度の家畜豚が予防的措置として殺処分になっていますが、この中からもアフリカ豚コレラは確認されませんでした。

( ハンガリーでは ASF は家畜伝染病に指定されています。家畜豚へ感染した場合、または感染が疑われる場合は、豚舎内のすべての豚を処分しなければなりません。有効な治療法はなく、ワクチンも実用化されていないため、拡大防止策は他にないためです。)

人は大丈夫?

アフリカ豚コレラは、豚、イノシシだけが罹る病気であり、人に感染することはありません。

また Nébih は、感染はこれまで野生イノシシのみで、ハンガリー国内で飼育された豚肉、豚加工品については安全と強調しています。

このように、感染豚の肉が市場に出回ることは原則論としてないはず。ですが、仮に、感染した豚の肉や内臓を食べても人体に影響はないとされています。

輸入禁止措置について
ハンガリーで 2018 年 4 月に野生イノシシで ASF が確認されて以来、日本韓国は防疫に万全を期すため、ハンガリー産豚、豚肉等の輸入を一時停止にしています。( 日本農林水産省の発表はこちら )

シンガポールなどは、ハンガリーの一部の地域産の豚肉のみ禁輸措置に。

一方で、隣国セルビアも同様に輸入停止にしていましたが、家畜豚では発生していないことから、10 月に再開を許可しました。ただし、特別な健康証明は必要です。

豚肉価格は上昇

ハンガリーの豚生産者業界団体によると、ASF は中国や東南アジアなどでも拡がっており、世界的に需要に対して供給が減少傾向にあります。

そのため、価格は上昇。いずれ牛肉に追いつく、また部位によっては追い越しうるという見方が一部にあります。

国内では、豚肉価格は年初以来、既に 10 ~ 12 % 高くなっています。

例として、豚モモ肉は、1 キロあたり 900 ~ 1000 Ft から現在は 1,300~1,400 Ft に。

豚ロース肉は現在、1,700 ~ 1,800 Ft 程度まで値上がりしています。( 1 Ft =約 0.36 円、 2019 年 9 月末現在 )

図: ハンガリー国内の豚肉価格の推移と、鶏肉、牛肉との比較
( Ft、キロあたり )

データはハンガリー中央統計局 ( KSH )より。表作成 Ako

豚生産者業界団体の予想では、今後少なくとも 1 ~ 2 年はこの傾向が続くとのこと。

森林散策での注意

9 月下旬に多くの野生イノシシの死亡が確認された地域は、ブダペスト市民が週末に散策やマウンテンバイクを楽しむようなところと重なります。そのため、Nébih は、注意を呼び掛けています。

人には感染しませんが、人や車両にウイルスが付着することにより、周り巡って他のイノシシや家畜豚にも拡がる可能性があるからです。

実際のところ、国で拡がっている感染も、イノシシがさまよい歩いたためではなく、人的なものが原因とみられています。

食品監督局による注意喚起。多くの市民がハイキングで訪れるブダペストの端、 Szépjuhászné ( セープユハースネー )。こども鉄道の駅があります。 Photo by Ako

Nébih は、次のことを呼びかけています。

注意事項

● 食べ物の残りやパッケージは森に捨てずに、必ず所定のゴミ箱に捨てること。

● 死んでいる、または病気のような野生イノシシを見つけても、近づかずに、すぐに Nébih に通報すること。( 06-80-263-244 無料 )

● 独りなった子どもの野生イノシシを見つけても、助けようとしないこと。

● 犬には必ずリードをつける。

● ハイキングの後は、靴やブーツをしっかり洗うこと。消毒剤も使う。

Nébih による、アフリカ豚コレラに関する基本情報 ( ハンガリー語 ) は、こちらから。

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。