ようこそサロンナ王国へ

ハンガリー人の食生活で切っても切り離せないものが 『 Szalonna / サロンナ 』

日本語にすれば 『 ベーコン 』 ですが、その種類の多さや奥深さは日本人の想像をはるかに超えています。どんな種類があり、どんな風に使うのでしょうか。「 脂身は苦手で 」と遠ざけず、豊かなサロンナ王国に足を踏み入れてみませんか?

用語 肉の部位 ( 豚肉編 )

2019.05.15

ハンガリー人とサロンナ

ハンガリーでも、パックに入ったお馴染みのスライスベーコンは”bacon szalonna ( ベーコンサロンナ )”として売られています。

でも昔ながらの風味豊かな物は、やはり塊に限ります。市場やスーパーの肉販売コーナーにずらりと並んだ姿は圧巻。地元の人たちは、ここから「 Xグラムください 」、または手で示しながら「 このくらいください 」と買っていきます。美味しいと評判が高いお店の前には、よく行列ができています。

 

それにしてもハンガリーのサロンナは、それぞれ形も違うし、脂だけの真っ白なものから肉部分が多いものまで多種多様です。

こんなに多いのは、次のような違いがあるから。

  • 使う部位 ➞ 日本で売られているベーコンは通常、バラ肉です。ハンガリーではそれに加えて、腹の肉、ロース、背脂など様々。
  • 味付け ➞ 塩だけでなく、ニンニク、コショウ、ベイリーフ、パプリカ粉などが加えられていることも。作る人によって配分量は違います。燻煙はアカシアやシラカバが主流。これこそが旨味がグーンとアップする秘訣です。
  • 調理方法 ➞ スモークだけ、茹でるだけ、茹でるのとスモーク両方、焼くなど。
  • 豚の種類 ➞ 「 食べる国宝 」として知られるマンガリツァ ( Mangalica ) のサロンナは当然ながら高級品。

 

こんな塊を買ってどう使うのか、というと、ハンガリーではそのまま食べることがとても多いです。その際は、パン、スライスした玉ねぎ、パプリカなどと一緒に。

まるでハンペンのような脂身だけのサロンナ。バター代わりにパンと。バターよりもコクがあり、燻製ならではの旨味があります。Photo by Yuri

 

そして塊を長い串に刺して、皆で火を囲んで炙っていただく、というのも当地のアウトドアでの楽しみ方。 ( 後述 )

 

また、料理の時も欠かせません。今でこそ健康上の理由で植物油を使う人も多くなりましたが、ハンガリー料理は、ラード、もしくはサロンナをじっくり炒めて味と香りを出してから、大量の玉ねぎとニンニクを炒めるのが本来の基本工程。これこそが「 コクと旨味 」の素なのです。脂身だけのものを使ったり、肉部分もあるものを使ったり。それは料理する人の好みによります。

用語 油と脂

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次に、9 つの代表的なサロンナを見ていきましょう。

 

 

代表的な 9 種 ☆ 便利な早見表

 

 

一度は試したいサロンナBBQ

ハンガリー滞在中、一度は試したいのが szalonnasütés ( サロンナ シュテーシュ) です。

簡単に言うと、サロンナ塊のバーベキューハンガリー人は、外国人に説明する際に伝統的な ❝ Hungarian BBQ ❞と呼ぶ人も。

 

Photo by Atti

 

使うのはだいたいこんな脂肪オンリーの csemegeszalonna / チェメゲサロンナ。 火が通りやすいようにパイナップルみたいな切り込みも入れて、長い串に刺したら準備完了。

火で炙って、ぽたぽたと下にたれる脂をパンにつけながらいただきます。

 

Photo by Atti

 

「 えーー  」

と、画像を見て心の中で叫んだ方もいるかもしれません。

 

でもハンガリー人にとっては、誰もが小さい頃から経験する楽しいイベント。これは独りではなく、気の合う友人らとするからこそ盛り上がります。みんなで火を囲んで座り、わいわい喋りながら食べ物をゆっくり味わうとなぜか親睦が進むのは、古今東西同じ。

パンには、スライスした玉ねぎなどお好みで加えます。極めてシンプルな食べ物ですが、燻製サロンナの良い香りが立ち込め食欲をそそります。お酒はやはりハンガリーの果物蒸留酒パーリンカがお勧めです!

 

先日、在住 1 年のシュラフさんが、ハンガリー人のお宅で経験したというので感想を伺ってみました。

シュラフさん

日本人にとったら不安いっぱいの見た目……

と思いながら恐る恐るかじったらびっくり!!

意外にしつこさがなく美味しい、薫りが深い。

自分で火加減を調整できるので「 炙り 」から「 焼き 」まで楽しめるし、玉ねぎやパプリカパウダーなどで自分好みにカスタマイズできます。なので声を大にして言いたいです。「 ただの脂身と侮るなかれ 」。

 

後で発覚しましたが、シュラフさんが食べたサロンナは、燻製マンガリツァ脂だったとのことです ( 確かに美味しそう )。

管理人自身は、ハンガリーに来たばかりの頃にサロンナシュテーシュの洗礼を受けたことあり。実は食べた晩に胃痛に苦しみ、のたうち回りました。もともと胃がハンガリー人のように逞しくはないのです。

以来、真っ白なサロンナは遠慮していますが、肉入りは調理の際に重宝しています。お気に入りはちょっとお高めですが Erdélyi szalonna / エルデーィサロンナ。炒飯に入れてもいいですよ。

 

※表内の画像は Ako 撮影

参考文献
”A nagy szalonnahatározó” (NLC)

ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。