基礎食品 30品で価格抑制措置 肉類や乳製品が対象

ここ数か月、食品の値上がりがまた激しくなっていると感じませんか? 特に卵、小麦粉、牛乳、植物油など。実際、統計でもこの傾向が確認されており、全体のインフレ押し上げにもつながっています。

ハンガリー政府は常に「 家族を守る 」とアピールしてきただけに、こうした状況を受け、3 月 17 日から、小売業者に対して基礎食品30品目の価格を規制する措置を発表。本記事では、その内容をまとめました。

 

小売業者の「儲け」を制限する規制

 

今回の措置では、30 品目の価格そのものに上限を設けるのではなく、小売業者のマージン率を最大 10%に制限します。

小売マージン率とは、仕入価格と販売価格の差のこと*。

例えば、スーパーが 1 000 Ft で仕入れた場合、販売価格の上限は 1 100 Ft。それ以上の 1 200 Ft や 1 300 Ft で販売することは認められません。

*法律上、厳密にはリベートを差し引いた仕入価格と販売価格の差がマージン率として計算されます。

 

なお、小売業者のプライベートブランド ( PB ) 商品の場合は、もともとマージン 10 %で販売されていることが多いため、本年 1 ~ 2 月の平均マージン率が上限となります。

 

措置の概要
  • 対象品目
    豚肉、鶏肉、牛乳、乳製品など 30 品目 ( 具体的なリストは次の項目をご覧ください )
  • 実施期間
    2025 年 3 月 17 日 ~ 5 月末 ( 状況に応じて延長の可能性あり )
  • マージン率規制の対象者
    ・食品スーパーなど、2023 年の純売上高が 10 億 Ft 超の小売業者
    ・小規模店舗や市場は対象外
    ・ネットストアも対象  ( 食品販売が主要事業である場合 )
  • 供給量の義務
    小売業者は、対象の品目について「 薄利だから 」と販売量を意図的に減らすことはできない。2024 年の平均日販と同じ量を継続的に供給する義務がある。

※ マージン率や供給義務に違反した場合、罰金が科される。特に重大な違反があった場合は、店舗またはオンラインショップの営業停止 ( 最大 6 カ月間 ) もありうる。

 

 

対象となる 30 品目

留意点
  • 肉類は生鮮、冷蔵、冷凍すべてが対象。また形状も、骨付き/皮付き/フィレ/カット/スライス/ひき肉など問わない。包装の有無も問わず、すべてが対象となる。
  • 乳製品については、無乳糖 (ラクトースフリー) 製品も対象。

 

なぜ今、制限措置?

ハンガリーのインフレ率は、2022 年以降、前年比で二けた台の高進が続き、食品価格はピーク時に 45 %も上昇しました。当時は買い物のたびに、叫びたくなるほどでした。他のお客さんが、一度手に取った商品を棚に戻す光景も珍しくありませんでした。

その後、2024 年初めには一旦沈静化したものの、年後半から再び上昇。本年 2 月のインフレ率は 5.6 %、食品価格は 7.1 % 上昇し、EU 域内でも最も高い水準という不名誉な状況です。

 

 

なかでも、小麦粉 ( +44.3% )、卵 ( +24.7% )、植物油 ( +27.5% )、牛乳 ( +22.5% ) など、日々の生活に欠かせない食品に限って大きく値上がりしています。

 

卵 10 個で、昨夏は 700 Ft 前後だったのに、今では 1000 Ft 前後。Photo by Ako

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オルバーン首相が率いる政府は、来春の総選挙を控え、本年を「 飛躍の年 」と位置付け、経済成長を促すため数々の施策を打ち出しています。しかし、インフレが再燃すれば成長の足かせとなるだけでなく、市民の家計を直撃し、不満が募れば政治的にも大きなマイナスとなります。

こうした背景から、政府は当初、小売業者と協議し、自主的な値下げを求めました。一部のスーパーや食品で若干の値下げはあったものの、政府は「 期待を大きく下回る対応だった 」と判断。こうした経緯で、強制的な措置に進んだのです。

 

 

期待される効果は?

ナジ・マールトン国家経済大臣は、小売マージン率制限措置の導入により、対象食品の価格が 10 ~ 15 %下落すると予測しています。

さらに、これらの品目は消費者物価指数に占める割合が大きいため、インフレ全体も 2 ポイント程度低下すると見込んでいます。

ただし統計には、4 月分 (  5 月半ば発表 ) から反映される見通しです。消費者物価指数は毎月 20 日までのデータを集計するため、3 月のインフレ率 ( 4月半ば発表 ) にはほとんど影響しないでしょう。

ナジ大臣は、予想どおりにインフレが下がらなければ、マージン率制限の適用期間を 5 月末以降も延長するほか、価格統制措置の再導入も辞さない構えを示しています。

一方で懸念されるのは、小売業者が 30 品目のマージン率を引き下げた分の減収を補うために、他の食品の値上げに踏み切る可能性

措置導入後、牛乳や卵などの価格がどの程度下がるのか期待が膨らむ一方、他の商品の値動きも注意深くチェックする必要がありそうです。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。