ハンガリーの薬局や診療所では最近、” eRecept ” という言葉を見かけることが多くなりました。日本語では電子処方箋の意味です。「 紙 」ではない、「 電子的 」な処方箋。今回は、この制度の仕組み、また、医療情報全体の電子化の取り組みについてもお届けします。
” eRecept ” の仕組み
ハンガリー語で recept ( レツェプト )、もしくは vény ( ヴェーニ ) は処方箋のこと。それに” e ” がつくと、「 電子処方箋 」となります。
eRecept の試験運用は、2017 年 11 月に開始。持病のある夫も、昨年から電子処方箋で薬を得ています。新システムの手順はこんな感じです。
2. その際に医師は、国が中央で管理運用するデータベースに必要な薬、量など入力。
紙ベースの処方箋は、14 歳以下、もしくは患者が希望したときのみに発行します。( 患者本人以外が薬局で購入する場合は、紙が引き続き必要です。)
3. 患者は薬局に行き、公的医療の被保険者番号と身分証明書を提示。
( eSzemélyi igazolvány = 電子身分証明書の所持者は、すでにその中に被保険者番号が含まれているため、それのみで大丈夫です。)
4. 薬局は、国のデータベースにアクセスし、必要な薬を患者に提供。
このお陰で、処方箋紛失の心配はなくなることに。また、いざ買いに行こうと思ったけれど、持参し忘れた!という時も、問題ありません。国内の薬局であれば、どこへ行っても処方された薬を得ることができます。
当初は、2019 年 1 月から完全電子化の予定でしたが、その辺りは、ものごとがよく遅れるハンガリー。政府は昨年、 1 年延長することを決定。19 年 12 月31 日までは移行期間が続き、患者が希望しなくても紙ベースの処方箋発行も義務としました。
その理由の一つは、国内の薬局はすべて準備が完了しているものの、家庭医、診療所、病院の方はでは IT 整備がまだ 100 % ではないため。また整備済みのところでも、使い慣れていないために、様々なトラブルが発生しています。
一方、薬局側によると、患者本人以外の家族などが薬を買いに来るケースが多いとのこと。この場合は、紙ベースの処方箋が引き続き必要です。混乱を回避するためにも、患者の希望にかかわらず、しばらく紙も発行することになりました。
医療情報全体の電子化
電子処方箋は、単独でシステムが構築整備されているというわけではなく、ハンガリーが進める医療情報全体の電子化の 1 つという位置づけです。この全体版は、EESZT ( Elektronikus Egészségügyi Szolgáltatási Tér )、英語ではEHealthと呼ばれています。
EESZTの下では、患者の過去の受診歴、診察所見や検査結果、診断、治療経過処方薬などすべての記録が、国が管理するデータベースに集められます。
情報にアクセスできるのは、患者が登録する家庭医、また受診した専門医など。薬局は、処方された薬の情報のみを確認できます。バラバラに管理されていた情報を中央で集約し、担当医師や薬剤師が必要な部分にアクセスすることにより、医療サービスの効率化を図るのが目的です。
一方で、これだけの個人情報が一元化されると、心配なのがプライバシーの問題。こうしたことから、市民は、自分の医療歴へのアクセスを管理できる権限を持てるようになっています。
具体的には、市民窓口ポータルサイトeeszt.gov.huに入り、閲覧できる人、閲覧できる内容の範囲を設定することができます。設定はいつでも変更可能。元に戻すこともできます。また、自分の記録に、誰がいつアクセスしたかも確認できるようになっています。
EESZT についての詳しい説明はこちら ( 英語あり )
私的クリニック、公的保険非加入者は対象外
国が進める医療情報の電子化は、電子処方箋も含めて、公的医療サービスが対象です。国立の病院、診療所、家庭医はすべてシステムに適合する IT インフラを整備しなければなりません。
一方、プライベートクリニック、私立病院らは義務ではありません。また、外国人で、国家医療保険に加入していない場合は、電子サービスの対象外です。( ですので、紙ベースの処方箋を引き続き受け取ることになります。)
EESZT に関する政府公式サイト: e-egeszsegugy.gov.hu
HVG ” Receptek viharfelhőben – káoszra leltünk az e-egészségügyben is “
24.hu ” Papírt is köteles adni az orvos az e-recept mellé “