近年、日本でも注目されるグルテンフリー食品。ハンガリーも同様に増えています。その種類の多さや普及スピードは、むしろ日本よりも速い印象すらあります。今回はこうした食品の種類、原材料、味、さらに本当に健康に良いのかなどについての情報お届けです。また、外からでは見分けがつきにくい小麦粉代用品のハンガリー語も合わせてどうぞ!
時代は「○○メンテシュ」
ハンガリーでの、何かを除去した〇〇フリー食品 ( ○○mentes / メンテシュ ) の変遷を振り返ると、十数年前からまずはシュガーフリー ( cukormentes / ツコルメンテシュ ) 商品が増え始めました。
その後、炭水化物除去 ( もしくは低炭水化物 ) 商品が登場。 続いて、数年前から破竹の勢いで増え続けるのは、グルテンフリー ( gluténmentes / グルテーンメンテシュ ) 、ラクトースフリー ( laktózmentes / ラクトーズメンテシュ ) です。
今や、砂糖、グルテン、ラクトース ( 乳糖 ) と合わせて、『 3 大 〇〇フリー時代 』突入ともいえるでしょう。
現在では、健康食品店 ( Bio Bolt ) などに行かずとも、街角のスーパーで、かならず見かけるように。また、普通の小麦粉使用商品よりはかなり割高であるにもかかわらず、商品数も増え続けています。
さらに、普通のレストランやケーキ屋さんでも「 〇〇メンテシュ 」を加えるところが多くなりました。グルテーン・メンテシュのパン屋など、パレオダイエット ( * ) 専門店もブダペスト市には登場。また、これらに特化したレシピやお店を紹介する “ Mentes ” という雑誌も発刊されているくらいです。
こうした食品は、もとは糖尿病やグルテンや乳糖不耐症 ( 過敏症、アレルギー ) 、セリアック病 ( ** ) 患者向けでした。でも、そういった具体的な症状がなくても、「 健康に良さそう 」、「 痩せられるかも 」と思う市民が購入していることが、市場の拡大につながっています。
旧石器時代の食事法と言われるもの。昔から自然にあった野菜、ナッツ、肉魚類、油分 ( 一部を除く) は食べて良いが、米、小麦などの穀物、豆類、砂糖などは食べない。
**セリアック病 ( cöliákia )
小腸がグルテンに反応し、炎症を起こす病気。その結果、腹部の膨満感や痛み、下痢、頭痛、疲労感、不妊などの症状を引き起こします。栄養吸収がうまくできないため、貧血や、子どもであれば成長の遅れが見られることも。ハンガリー人の発症率は 100 人中 1 ~ 2 人。ハンガリー語では、lisztérzékenység=小麦粉過敏症と言われることも多いです。
何で代用?
それでは、「 グルテンなし 」は、どのような食品群で購入可能なのでしょうか?
大きく分けると、次のカテゴリーに:
✓ 粉もの ( 食材として )
✓ パスタ
✓ パン
✓ お菓子
グルテンフリーの定義
欧州連合 ( EU ) では、2014 年に法整備がされ、グルテン含有量が 1 キログラムあたり、20 ミリグラム ( 20 mg / kg ) 以下のものを「グルテンフリー」と呼んで良いことになっています。(法規)
小麦粉の代用で使われる一般的なものは、パンやパスタでは、トウモロコシ粉、米粉。一方、お菓子では、トウモロコシ粉に加え、クルミ、アーモンド、ココナッツあたりの粉です。
他にも食材として、たくさんの代用品があります。
( 大きなスーパーや専門店でしか買えないものもありますので、ご注意ください! )
・zöldbanán liszt ( ズルドバナーンリスト ) グリーンバナナ粉
・barnarizsliszt ( バルナリジュリスト) 玄米粉
・burgonyaliszt ( ブルゴニャリスト ) 馬鈴薯粉 ( 片栗粉 )
・darált dió ( ダラールトディオー ) 挽いたクルミ
・dióliszt ( ディオーリスト ) クルミ粉
・földimandulaliszt ( フルディマンドゥラリスト ) 皮付きアーモンド粉 ( アーモンドプードル )
・gesztenyeliszt ( ゲステニェリスト ) 栗粉
・hajdinaliszt ( ハィディナリスト ) そば粉
・kókuszliszt ( コークスリスト ) ココナッツ粉
・konjakliszt ( コンニャクリスト ) こんにゃく粉
・kukoricaliszt ( クコリツァリスト ) トウモロコシ粉
・kukoricadara ( クコリツァダラ ) 粗挽きのトウモロコシ粉(粒状で、ポレンタ粉とも)
・lenmagliszt ( レンマグリスト ) 亜麻仁粉 ( アマニ粉末 )
・mákliszt ( マークリスト ) ポピーシードの粉
・mandulaliszt ( マンドゥラリスト ) アーモンド粉 ( アーモンドプードル )
・nyílgyökérliszt ( ニールジュケールリスト ) 葛粉
・rizsliszt ( リジュリスト ) 米粉
・szezamliszt ( セザムリスト ) ゴマ粉
・tapiokaliszt ( タピオカリスト ) タピオカ粉
・tökmagliszt ( トゥクマグリスト ) かぼちゃの種粉
・zappehelyliszt ( ザプペヘィリスト ) オーツ麦粉
・útifűmaghéjliszt ( ウーティフーマグヘーィリスト ) オオバコ種子粉
グルテンフリーは美味しい ? 監督局が選んだのは…
小麦粉を使わず作った食品の味は、「 かなりのバラツキがある 」というのが個人的な印象です。
クッキーなどのお菓子は全般的にレベルが上がっているようですが、袋入りのグルテンフリーパンはかなり人工的なお味。
パスタは、ほのかにトウモロコシを彷彿させるお味ですが、まぁまぁ OK。ただ、翌日に残ると「 トウモロコシ感 」が強くなります ( 笑 )
食材としての粉は、何度か試作を重ね、美味しいパンケーキが作れました。( ついでにお砂糖の代わりにバナナを投入。卵、牛乳も除去し、アーモンド牛乳で ) お腹にどっしり来る重さはなく、以降、小麦粉アレルギーの息子の友人が遊びに来るといつも作っています。
面白いのは、ハンガリー食品監督局 ( Nébih ) によるテスト。Nébih は時々、テーマを選んで、表示に合った原材料を使っているか等をラボで確認すると同時に、味についても「 ブラインドテイスティング ( 目隠しテスト ) 」で評価しています。2018 年には、グルテンフリーの乾燥パスタも調査しました。
対象になったのは、国産、外国産合わせて合計計 9 商品。
まず、グルテン含有量基準は皆、クリアー。
一方、味、食感、見た目 ( 普通のスパゲッティと比較 ) の総合得点は、次のような結果となりました。( 100 点満点 )
👑 2 位 Nutri Free 64.2 点 ( 500g、 2 642Ft/kg )
👑 3 位 Cornito Tóthék tésztája 60.9点 ( 200g、1 765Ft/kg )
カッコ内は一袋の量と、キロあたりの値段。
( Ft: ハンガリーフォリント。100 Ft = 40 円弱。 2019 年 2 月現在 )
調査の詳細はこちらから。
グルテンフリー=ヘルシー、ではない
セリアック病など、グルテン不耐症の人には、グルテン抜きの食事法は必要不可欠です。一方で、そうではない人たちが、グルテンを悪者扱いしやたらに除去しても、健康的になれる科学的な保証は今のところありません。
むしろ、専門家からは、リスクが指摘されています。
英国医学誌 BMJ で報告された研究によると、自己判断でグルテン抜きを長く続けると、全粒穀物の摂取が減少し、結果として食物繊維の摂取量も大きく減ってしまうとのこと。そのため、心臓および血管の病気になるリスクが増加しうるとのことです。( 参考資料はこちらと、こちらと、こちら )
また、「減量」の点でも、効果は “ ? ” です。逆に、味や食感を小麦粉食品に似せるために、トランス脂肪酸その他の添加物、糖分が加えられるなどし、カロリーは決して低くはならないとされます。また加工の度合いが高くなりがち。そのため、体には負担がかかるという皮肉な結果にも。( 参考資料はこちら )
確かに、粉ものばかり食べていると、体が重く感じる時があります。そのため、私も時には、「○○メンテシュ」を買ったり、作ったりはしています。
でも何事も、素人判断で極端な食事法に走ると、リスクもついて回ることに。きちんとした検査で不耐症が確定したのでなければ、栄養のバランスに気を配り、加工度の低いものを、適量いただくのが一番と個人的には思っています。( 「 グルテン征伐 」をするよりは、白いパンを茶色の全粒粉パンに変えるなど )
また、当然ながら、小麦粉の代替材料 ( ナッツ系、そば粉など ) へのアレルギーがある方は、かならず原材料表記を確認し、十二分に注意してください。