からだの痛みや不調は誰にとってもつらいものですが、「 からだが資本 」の職業の人にとってはなおさらのこと。
ブダペストで活動中のダンサー・振付家の鳥谷部歩美 ( とやべあゆみ ) さんは、左膝が痛むように。そのため、公立病院の整形外科を初めて訪れました。悪いことを聞く方が多いハンガリーの病院ですが、実際どうだったのでしょうか。また、民間のオステオパシーに行った体験談を共有してもらいました。
さて、どこへ行くべきか ?
膝に痛みが出たのは 1 月中旬頃のこと。椅子に座るとき、階段を上り下りする瞬間に痛みが走りました。
ダンサーにとって身体のメンテは不可欠。早速、日本人柔道整復師の松尾院長 ( TE.A.TE Clinic ) に診てもらいましたが、その際に病院の整形外科にきちんと行くことを勧められました。
ただ、私はハンガリーで整形外科を訪れた経験がなく……。どこへ行くべきかとても悩みました。
いろいろとネットで調べたり、周りに聞いたり。「 暮らしの健康手帖 」の管理人さんにも聞き、私立整形外科病院 EMINEOと、ハンガリーのスポーツ選手らがよく体のメンテに通っているという Országos Sportegészségügyi Intézet ( 全国スポーツ健康病院 ) を紹介してもらいました。
まずは家庭医へ--言っておけばよかった、あの言葉
結局はまず家庭医 ( háziorvos ) に相談してみることに。公立はまだ行ったことがなかったので、試しに行ってみようと。私はハンガリーの国家医療保険に入っているため、診察は無料になります。
当日の家庭医訪問は、ハンガリー人のフラットメイトについてきてもらいました。特に何を診てくれるわけではなく、手書きで症状が書かれた病院への紹介状をもらっただけでした。
それを持って病院に行くように、と。「 運が良ければすぐ診てもらえるし、そうでなければ予約してきて 」と言われました。
紹介されたのは、3 区にある聖マルギット外来総合診療所 ( Szent Margit Rendelőintézet ) 。 ( 日本では、「病院」という感覚の大きな総合診療所になります )
なるべく早く診てもらいたかったので、その足でフラットメイトと同診療所に向かいました。
受付では、予約は最短で 10 日後と。その日は仕事の都合でどうしても休めないと告げると、3 週間半後になりました。それでも周囲に言わせると、「 普通なら1か月待たされる 」とのこと。
ただ、後になって知ったのですが、家庭医に「 緊急 」と一言書いてもらっていれば、すぐ診てもらえるはずだったのです。
ハンガリーではその一言があると、24 時間以内に患者さんを診察しなければならない決まりがあるそう。私の職業はダンサーなので、この負傷も緊急扱いされるべきだったのですが、家庭医が書き忘れていたのでした。
ようやく診察
そして 3 週間半後。診察の日がようやく来ました。
最初に整形外科 ( Ortopédia ) の先生のところへ。脚を見せ、普段踊っていることや症状を伝えたところ、「 まぁ使い過ぎだね、とりあえずレントゲン撮ってきて 」と。英語を話す先生だったので、コミュニケーションには問題ありませんでした。
レントゲン撮影を終えて整形外科の先生のところに戻ると、「 やはり使い過ぎ、軟骨が柔らかくなりすぎている 」と。診断書に書かれたのは Ízületi fájdalom ( 関節痛 ) と、Chondromalacia patella ( 膝蓋軟骨軟化症 = しつがいなんこつなんかしょう) *でした。
*膝蓋軟骨軟化症は、膝の皿の下にある軟骨が柔らかくなってしまった状態。繰り返し負担がかかることで徐々に軟骨が変性軟化します。
特別な薬を処方されることはなく、摂取するよう言われたのは軟骨を補うためのサプリ。2 – 3 種類見せられ、どれが良いか選んでねと言われました。値段や原産国がそれぞれ違いましたが、私は結局、ニュージーランド産の Zöldkagyló kapszula ( 緑イ貝*カプセル ) に。
3か月分で160 錠、6000 Ft ( 約 2100 円 )。診療所併設の薬局で早速買って帰りました。
*緑イ貝=ムール貝の一種
並行的にオステオパシーにも
話が前後してしまいますが、病院の整形外科の診察日を待つ間、プライベートのオステオパシー* PhysiOsteo Budapest ( ブダペスト 12 区 ) にも行ってきました。診察日まで何もしないことに、不安を感じていたためです。
*オステオパシーとは代替療法のひとつで、手による身体調整法
ここの先生には昨年からお世話になっており、患者のことを一人の人間として本当によく診てくれます。初診では、これでもかというほどの数の質問を受けます。
他の医者と違うところは、痛みがあるところを診るだけでなく、痛みが作られている大元を見つけ出し、トータルで対処法を提案してくれることです。
先生に指摘されたのは、やはり軟骨のこと。
自転車を 1 日 30 分こいで、その間、軟骨と軟骨の間のオイルを作り出すように言われました。また、太ももの前側の筋肉が縮んでいるのが遠因になっているので、伸ばす回数を増やすようにと指導されました。
結果はどうなったかと言いますと、自転車は持っていないので実はできずじまい。
太ももの前側の筋肉伸ばしは、最初のころ一所懸命しすぎてしまったのか、一時期、痛みはなくなるどころか逆に強くなってしまいました。そのため、その後は伸ばす強さや回数は様子を見ながらすることに。でも適度に続けることで、楽になるように感じてきました!
この後、前述の整形外科の診察があり、そしてオステオパシーにももう一度行き、痛みは、以前より減ってきている感じです。このような身体の不調は、もともと一瞬で治るものとは思っていませんので、サプリも今ある分だけは飲み切るつもりです。ストレッチも続けようと思います。
意外に悪くなかった公立診療所
ハンガリーの公立医療機関については、正直なところ期待していませんでした。
予約はかなり先になってしまいましたが、診療当日は意外なほどスムーズでした。聖マルギット診療所は、外国人が多く住むような場所ではありません。でも、整形外科の医師も、レントゲン担当の若い医師も気さくで英語がペラペラで、「 こういう人も公立に働いているんだ 」と新鮮な驚きでした。
受付はハンガリー語のみでしたが、対応は親切でした。
また、新型コロナのためだったのでしょうか。患者も少なく、長く待たされることもなし。病院受付から診察終了まで、35 分ほどだったと思います。
ハンガリーの病院については悪いことを聞く方が多いのですが、場所や人にもよるのかもしれません!
ブダペストに来て約 5 年。 ZeroPlus DanceWorks のダンサーとして国内外で公演の傍ら、クラシックバレエやコンテンポラリーダンスの指導を行っています。ハンガリー在住の日本人の方々向けに、ストレッチクラスも主催しています。