蚊が媒介して引き起こされる「西ナイル熱」の感染報告数が、ハンガリーで昨年よりも増えています。刺されても発症する人は 1 ~ 2 割程度で大抵は完治しますが、稀に重篤な症状に陥り死に至ることも。本年の発生状況や予防、注意事項をお伝えします。
昨年から倍増は確実
国の公衆衛生保健当局 ( ÁNTSZ ) によると、2018 年年初以来、8 月 12 日までに確認された西ナイル熱感染症例は 42 件。( うち、39 件は国内、3 件は国外滞在中に感染 )
2017 年通年での報告数は 23 件のため、本年の倍超えは確実。また、ここ数年のピーク 2016 年 ( 48 件 ) の記録も塗り替えそうです。
欧州全体でも増加中
欧州の状況を見てみましょう。
欧州疾病予防管理センター ( ECDC ) によると、今年、8 月 16 日までの報告数は計 273 件。国別では、イタリア ( 123 件 ) 、ギリシャ ( 75 件 ) 、ハンガリー ( 39 件 ) 、ルーマニア ( 31 件 )、フランス ( 3 件 )、クロアチア ( 2 件 ) 。特に南、東側の国で多くなっています。
EU 近隣諸国では、セルビア ( 126 件 ) 、コソボ ( 2件 ) 。
ECDC は今年について、感染例が確認された時期は例年より早く、また、数も多くなっていると指摘。
具体的には、その年の最初の例が確認されたのは、2016 年、2017 年は第 28 週 ( 7月半ば ) だったのに対し、今年は第 26 週 ( 6月最終週 ) から。
また、8 月 9 日までの感染例は、今年は既に計 231 件。各週の感染例を表した下図でも、赤線の 2018 年が過去を上回っていることがはっきり示されています。
図: EU 諸国の西ナイル熱 報告合計件数 ( 週ベース )
インフルエンザ似の症状
西ナイル熱は、多くはウィルスを持つ蚊が媒介して発症。人から人への接触感染はありません。また、蚊に刺されても、実際に症状を引き起こすのは 1 ~ 2 割前後とされます。
潜伏期間は 3 日 ~ 6 日。一般的な症状は熱、吐き気、筋肉痛、結膜炎、リンパ節の腫れなど。時に、発疹が現れたり、顔が赤くなったり、光を眩しく感じたりすることも。インフルエンザ症状に似ているため、西ナイル熱への感染と自覚しない場合も多いそう。1 週間程度で症状は治まります。
ウィルス撃退の薬はないため、治療は、解熱剤や鎮痛剤、ビタミン剤、免疫力強化目的のものなどを摂取し、症状の緩和を図るのが一般的。
感染した人のうち、中枢神経が侵され脳炎や髄膜炎など重篤な症状となるのは 1 % 未満。主に高齢者であったり免疫力が低い場合です。( 以上の情報は、東部ハィドゥー・ビハル県の国立外来診療センターの市民への呼びかけ情報より。同県では本年、3 人の感染が確定し、1 人が亡くなっています。)
ハンガリーでは昨年、4 人が亡くなりました。いずれも高齢で慢性疾患を抱えていたようです。本年については、2 人が犠牲に。( 出所: 経済週刊誌 HVG )
効果的な予防方法は ?
予防には、蚊に刺されないことが 1 番。 予防ワクチンは、あいにく ありません。以下、注意点をまとめました。
✔ 蚊が多く出る夕暮れ、夜は注意。この時間帯の服装は、できれば長袖、長ズボンなどで。
✔ 蚊除けスプレーをする。
✔ できれば網戸を設置。( ハンガリーでは網戸のない住宅が多いです。 )
✔ 蚊が多そうな場所を避ける。( 草の生い茂る日陰など。自宅の鉢植えにも必要以上に水やりしない。 )
虫除けスプレーについては、マダニの記事 ( 下 ) で詳しく扱っています。どうぞご参考に。
西ナイル病:Nyugat-nílusi láz
蚊:szúnyog
熱:láz
吐き気:hányinger
筋肉痛:izomfájdalom
結膜炎:kötőhártya-gyulladás
顔が赤くなる:arcpirulás
光に過敏 ( 眩しく ): fényérzékenység
リンパ節の腫れ: nyirokcsomók-gyulladás
発疹: kiütések
脳炎:agyvelőgyulladás
髄膜炎:agyhártyagyulladás