アツアツの白いご飯に、生卵とろり。日本では栄養満点と歓迎される「 卵かけご飯 」ですが、外国で同じ勢いで食べているとトンデモナイことになりかねません。
今回は、夏場に多い食中毒の 1 つ、サルモネラ菌について。ハンガリーの卵に印字された番号の読み方についてもお伝えします。( 追記: 最後に、あたってしまった体験談を加えました。)
潜んでいるかもしれない菌
ハンガリーでは、生卵をそのままいただくことはほとんどありません。ヨーロッパの他の国々でも同様。むしろ、生食する日本の方が珍しいと言えましょう。
それは、サルモネラ菌が潜む恐れがあるため。
感染するとひどい下痢、嘔吐といった典型的な食中毒の症状に。発熱を伴うこともあります。
通常、3 ~4 日で症状は治まるものの、子どもや妊娠中の方、お年寄りが感染すると、症状が重くなることがあり、危険な状態にもなりかねません。
サルモネラ菌は 75 度、1 分以上の加熱で死滅します。そのため、まずは火を通すことが一番大事。逆に言えば、生や半熟で食べると感染のリスクが高まります。
また、菌は、生卵の他、鶏肉など生肉にいることも。生肉調理時に、使用した器具や手指から他の食品に菌が移ってしまうこともあるのです。
高温多湿が大好きで、汚染された食品を常温放置すると増殖するので、夏場は発生しやすくなります。
ハンガリーでの感染例は多い?
ハンガリーでも時々、食中毒のニュースを聞きます。中には、レストランでデザート「 madártej ( マダールティ ) 」で集団感染したという話も。
これは、卵白で作ったメレンゲが、カスタードソースの上に浮かんでいるもの。要は、メレンゲに火が通っていないのです。
では実際、ハンガリーではどれくらいの感染例があるのでしょうか ?
2016 年のサルモネラ感染事例は 681 件。うち 76 件は病院で手当を受けました。( 出所:ハンガリー食品安全監督当局 Nébih )
これは、相対的に多いと言えるのでしょうか、それとも少ないのでしょうか?
ハンガリーの国民 1 人あたりの卵の年間平均消費量は 200 ~ 240 個。国全体での消費量にすると毎年 20 億個以上。( 消費量は 2016 年、ハンガリー中央統計局より 1 人あたり年間消費量から推計。 )
そのため、感染してしまうケースは極一部とお分かりいただけるでしょう。しかも感染源は卵だけではないことにご留意ください。
また、ハンガリーでの感染割合が、EU の中で突出して高いわけでもありません。EU 全 28 加盟国の 2016 年の感染症例は、合計 9.5 万件弱でした。( 出所:欧州食品安全機関 EFSA )。
ただ、それでもサルモネラ菌はゼロではありません。
例年、気温が高くなると感染事例も多くなるため、これからの季節は用心に越したことはないでしょう。次に、卵を買う際のポイントをご紹介します。
賢く卵を買うためのポイント
卵のサルモネラ菌感染予防には、まずは賞味期限に注意して新鮮なものを選ぶようにしましょう。
また、国産の方がより安全です ( 輸送時間が少ないことなどから ) 。
さらに、どのような飼育をしているかにも、ちょっと注目してみてください。一般的に、暗くて狭いケージよりも、放し飼い飼育の方が、菌の繁殖の可能性は低いと言われるからです。
EU では、原産国、飼育方法などの情報は、すべての卵に印字することが義務付けられています。
① 飼育方法
0 : オーガニック飼育法 1 : 放し飼い 2 : 平飼い ( 鶏舎の中で放して飼う飼い方 ) 3 : ケージ
② 原産国 ハンガリーは HU
③ 県、もしくはブダペストの番号( 01 ~ 20 まで)
④ その県内(もしくはブダペスト市内の)畜産衛生管理区番号
⑤ 鶏の卵の場合は “ T ”
⑥ ④ の管理区内の鶏舎のある場所
⑦ 鶏舎の登録番号
( 出所 : ハンガリーの食品安全監督局 Nébih )
卵のパッケージには、賞味期限 ( minőség-megőrzési ideje ) が書かれています。( 日―月―年の順 )
ハンガリーでの賞味期限は 28 日です。
XL – 73 グラム超
L – 63 ~ 73 グラム
M – 53 ~ 63 グラム
S – 53 グラム未満
※ 大きさとサルモネラ菌との因果関係はありません!
最後に… 地雷地域への進入は ✖
私の場合、自宅で生卵を使ってティラミスを作ったこともありますが、あたった経験はなしです。
また、和食レストランで、すき焼きに生卵をからめている日本の友人は何人も見てきました。ですが、その後に苦しんだという話も聞いたことはありません。
ただ、日本と同じように「 卵かけご飯を毎日 」は、地雷の埋まる地域に自ら進んでいくような行為。やはりお勧めはできません!
また、サルモネラ菌に限りませんが、食中毒は予防がまず大事。保存に気を付ける以外にも、生肉の調理の際は、まな板や包丁などの衛生も十分心がけてください。
* * * *
「 ハンガリーに住んでいるときに、卵、2 回あたりました! めちゃめちゃしんどいですよ。2 回とも「 生 」ではなく「 半熟 」を食べただけでした。
どんな症状だったかと言うと、夜食べて、朝は大丈夫だったんですけれど、お昼前から下痢が始まりました。午後はなんとなく気持ち悪くなり、下痢もどんどん酷くなり…
夕方には、嘔吐と突き刺さる腹痛で、動けなくなりました。その辺りから熱も出て、39 度を超えるほどに。翌日、熱も痛みも続いていたので、病院に行って手当を受けました。
私はいろいろな食べ物にあたった経験があるんですけど、熱が出るのは卵だけですね」
** 管理人より **
半熟では、「 75 度、 1 分以上加熱 」の安全ゾーンに入らないことがあります。
ハンガリー人の夫は、「 水道水の蛇口をお湯にして、卵の外から 1 分程度流しかければ大丈夫 」と信じて今に至りますが、科学的には証明されていません !
サルモネラ Szalmonella ( サルモネッラ )
卵 tojás ( トヤーシュ )
生卵 nyers tojás ( ニェルシュ・トヤーシュ )
下痢 hasmenés ( ハシュメネーシュ )
吐き気 hányinger ( ハーニインゲル )
嘔吐 hányás ( ハー二ャーシュ )
食中毒 ételmérgezés ( エーテルメールゲゼーシュ )