ハンガリーに来て最初の年、自宅の庭でせっせと草取りをしていた時のことです。見たことのないギザギザ葉っぱがたくさん。これは引き抜かないと ! と、その中をかき分け入ったところ……
蕁麻疹のように脚が腫れあがってしまいました。犯人は、「 チャラーン ( Csalán ) 」と呼ばれる草。でも、素晴らしい効能を備えていることも後で知りました。
チャラーンの「 悪魔 」と「 天使 」の両面、併せてお伝えします。
触ったら最後
チャラーンは、「 イラクサ科 」の植物。
「 イラクサ 」自体は日本にもありますが、ハンガリーで多く植生しているのは「 西洋イラクサ ( 学名 Urtica dioica ) 」という別物です。「 ネトル 」としても知られています。
よく見かけるのは、草むらや森の中。繁殖力が強いので群生していることもあります。高さは 10 ~ 50 センチほど。葉っぱは「 シソ 」や「 ミント 」に似ていて、縁のギザギザが特徴です。
チャラーンに近寄って観察すると、葉っぱや茎には無数の細い毛のようなトゲが !
それが「 悪魔 」の正体。
トゲには、ヒスタミンやギ酸といった刺激を与える液体が入っています。それが破れて皮膚につくと痛みや腫れを引き起こすのです。
私の場合、まず膝から下にチクチクチク!と針に刺されたような感覚が広がりました ( ショートパンツでした💦)
その後、皮膚が熱を持ち赤くなり、大きさの異なる発疹が出現。痛いやら痒いやら。子どもの頃、猫を撫でていて全身に出た「 蕁麻疹 」によく似ていました。
それもそのはず、イラクサは漢字にすると「 刺草 」もしくは「 蕁麻 」。蕁麻疹という言葉もそこから来ているそうです。
ハンガリー語でも、チャラーンによる皮膚トラブル ” csalánkiütés ( チャラーンキウテーシュ ) “ は、蕁麻疹全般のことを指します。
蕁麻疹になってしまったら
当時は何も知らず、痛みとほてりを鎮めるために直感的に冷水シャワーをし、氷をあてただけ。そして、これまた直感的に、食事は刺激物を避け水分を多く摂取。
幸い翌朝には症状は軽くなっており、夕方には蕁麻疹も消えました。
今回、改めて調べてみるといろいろと対処法あり。一般的なものをご紹介します。
- 水と石鹸で洗い流す。( この時こすらないように )
- 重曹と水と混ぜて固めのペーストを作り、症状の出ているところに塗布。
- 掻きむしらない。
- シャワーや入浴はぬるめに。→ 温かいと痛みや痒みが増すため。
- 氷嚢 ( ひょうのう ) をあてる。
- 薬 : 抗ヒスタミン剤入りの薬を服用すると症状緩和につながることがある。
- 軟膏 : ヒドロコルチゾン ( 副腎皮質ホルモンの一種 ) 入りのクリームを塗布すると蕁麻疹悪化を抑える。
参考 : ニュージーランド厚生省 HP 。( ニュージーランドでも多く生息しているそうです。)
※ アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン入りの薬は、ハンガリーでは Telfast 、Claritine などがあります。処方箋なしで購入可能。
また軟膏では Locoid がヒドロコルチゾン入り。こちらは処方箋が必要。
チャラーンの素晴らしい効能
怖いことばかり書いてしまいましたが、一方で、チャラーンは実はビタミンやミネラルなどの宝庫 !
あのトゲさえ取れば大変優れているので、ヨーロッパでは古くからハーブや食用として利用されてきました。まさに悪魔と天使、呪いと滋養の両方を兼ね備えた植物なのです。
成分は、ビタミン A、 B、C、K、その他、βカロチン、鉄分、マグネシウム、ケイ素、ホウ酸、ヒスタミン、クロロフィルなど。作用の代表例としては以下があります。
✔ 体内浄化作用
✔ 抗アレルギー作用
✔ 血行促進作用
✔ 造血作用作用
✔ 血糖値低下作用
✔ 収れん作用
✔ 循環刺激作用
こうしたことから、痛風、リュウマチ、花粉症、アトピー、腎臓結石、膀胱結石、糖尿病、肌荒れ、前立腺肥大、血行不良などによいとされます。
自家製ハーブティーに挑戦!
チャラーンの利用法として身近なのはハーブティー。ハンガリーでもお馴染みです。ハーブの記事はこちら。
私は、過去の経験から、怖くて口にしたことはありませんでした。でも今回、調べれば調べるほど素晴らしい葉っぱであると知り、意を決しました !
まずは、心理的なハードルの低い市販のティーバッグから。恐る恐る飲んでみました ( 笑 ) 。
特段美味しいとも言えませんが、香りも味も青臭さはほとんどなし。苦みもないので、我慢しなくても普通にいただけます。もちろん「 飲んでブツブツ発疹が 」なんてこともありませんでした。
そこで今度は、もう一段レベルをアップ。庭に生えているチャラーンを採ってきて自分でお茶を作ることにしました。
ポイントは、かならず『 加熱 』もしくは『 乾燥 』させること。
そうするとトゲと刺激化学成分が取り除かれ、摂取できるようになります。( 心配な場合は乾燥より加熱がお勧めです。 ) 採る時はもちろん手袋などで防御してくださいね。
葉っぱを洗った後、10 ~ 15 分煮だして完成。
お味は市販のハーブティーと同じでしたが ( 当たり前ですね! ) 、新鮮さでは自家製に軍配があがります。
農薬ゼロ、保存料ゼロの自然のものなので安心。そしてその辺りに生えているのでコストもゼロ ! カフェインもないので夜飲んでも大丈夫です。
1 週間飲み続けて、利尿作用はすぐに感じました。その他の効能についてはまだわかりませんが、個人的に期待しているのは花粉症の軽減。これから 3 か月、秋のブタクサ花粉シーズンに備えて飲み続けてみようと思います。
老舗レストランではスープに変身
チャラーンは他にも活用法があり、老舗レストランGundel (グンデル ) では『 チャラーン入りのスープ 』というのがメニューにありました。
好奇心からオーダーしてみたところ……色はまさにチャラーンで、小さなスミレの花といっしょでとてもきれい。ですが、舌に全神経を集中させても「これこそ チャラーンの味! 」と確信できるほどの強い特徴はありませんでした💦
その他、ペーストにしたり、大量の塩で発酵させたり、いろいろあるようです。皆さまも試されたらぜひ当サイトにご連絡ください!