ハンガリーから一時帰国で成田に到着すると、自分が巨人ガリバーになった錯覚に陥ります。身長の違いもありますが、日本人は、なにしろ細い人が多い! ではいったい、ハンガリー人の平均身長や体重はどのくらいなのでしょうか ? また、肥満問題がよく言われるけれど、どの程度 ? 今回より、「 数字で見るハンガリー 」と題して、市民の健康状況について連載を開始します。
平均身長と体重
早速、ハンガリー人の平均身長と体重を見てみましょう。
身長は、男女とも思ったほど高くはないような…。ただこれは、15 歳からお年寄りまですべての値。20 ~ 50 歳くらいではもう少し高いと思われます。
対して、日本人の平均は、
男性: 167.6 cm、67.0 kg
この数字も、20 歳以上すべてのため、少し低めに出ているようです。
30 ~ 39 歳では、
男性: 171.2cm、69.0kg
これを見ると、ハンガリー市民の方が身長は数センチ高く、体重にいたっては 10 キロ以上重たいことに。どうりで私の他にも、当地で生活して帰国すると体形の変化を自覚する、と言う周囲の日本人が少なくないわけです。
欧州の中では、、、
次に、欧州の中で、ハンガリー人はどのくらいか、と言いますと…
身長では、男女ともに中間グループに属します。
「 最も背の高い国 」は、男性はオランダ。平均身長 ( 20 ~ 49 歳 ) はなんと 182 cm ! 僅差でデンマーク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、ドイツと続きます。ここまでは平均 180 cm 以上。( 出所: OECD )
女性はアイスランドで 168 cm。次いで、デンマーク、オランダ、スウェーデン、ドイツですが、いずれも167 cm 以上で、ほとんど変わりません。
ものすごく大雑把な言い方をすれば、ヨーロッパでは、身長は「 北高・南低 」の傾向にあります。
図 : OECD 加盟国の身長ランキング ( 20 ~ 49 歳、単位:cm、データは 2009 年、 36 加盟国中 21 か国 )
肥満度では欧州ワースト1
ハンガリーは身長では EU 28 加盟国内の真ん中あたりですが、肥満度に関しては不名誉なことに最下位です。
OECD ( 36 か国 ) では、下から 4 番目。ハンガリーの下は、ニュージーランド、メキシコ、米国のみです。( 出所: OECD Obesity-Update 2017 )
試しに、ハンガリー人の平均身長・体重から、肥満度を示す BMI (⋆) を計算してみたところ、
女性の場合、
男性は、
女性の場合は適正体重よりも 9.83 キロ、男性は 14.85 キロオーバーでした。BMI はともに 25 以上と、平均自体が過体重ゾーンに入ってしまっています!
15 歳以上のハンガリー国民のうち、適正体重内は 40.3 %。
一方、過体重、もしくは肥満、深刻な肥満は 55.5 %。痩せ・痩せすぎは 5 %未満でした。
これはやはり、ハンガリアンの脂多め、お肉中心、甘いもの大好きの食生活が最大の原因とされています。とにかくここの人たちは、食べること、飲むことが大好き。
最近でこそ、ブダペストのこじゃれたレストランでは一皿の分量も少ないですが、普通のお店ならば、大きなお皿にお料理が山脈のごとく盛り付けられて出てきます。また、家で人を招く時は、客人に「もう動けない!」と言わせるまでのご馳走でもてなすのが良しとされる文化なのです。そのような習慣に慣れてしまうと、逆に、日本のカフェやレストランで出される品々が「 おままごとセット 」に見えるくらい!
加えて、運動不足気味の生活習慣が、よく問題として指摘されています。
計算法は、体重 ( kg ) ÷ 身長 ( m ) ÷ 身長 ( m ) です。
WHO 世界保健機構の基準では、
18.5 未満 ⇒ 低体重 ( 痩せ )
18.5 ~ 25 ⇒ 普通体重
25 以上 ⇒ 過体重 ( overweight )
30 以上 ⇒ 肥満 ( obesity )
*筋肉体重が多い人には当てはまらないのでご注意ください。
また、子どもには適用しません。
深刻な子どもの肥満
ハンガリーでは、子どもの肥満も深刻。私が住んでいる村でも、適正体重ゾーンを超えていそうな子どもをよく見かけます。
統計を見てみると、6 ~ 8 歳ですら 20 % 、つまり 5 人 に 1 人は過体重か肥満です。( 地域差はあり、ブダペスト市など国の中央部は 18.1 %、国の南部は 27.2 %。 ) 子どもの肥満は大人になっても続くことが多く、将来的に高血圧、脂質異常症、糖尿病、また心筋梗塞などのリスクが高まる可能性が指摘されています。( 出所:国立医薬栄養研究所 OGYEI )
政府はこれまで、糖分・塩分・脂肪分などが高い食品への税 ( 俗にいうポテチ税 ) を導入。 さらに、小学校では、加工度の高いスナック菓子やソフトドリンクの広告掲示・販売の禁止、毎日の体育の授業などを取り入れてきました。
それにもかかわらず、最近のある調査では、ハンガリーのお母さんたちの肥満に対する危機意識は、それほど高くないという結果が出ていました。
それによると、10 歳以下の子どもを育てるお母さんたちが「 最も心配すること 」として挙げたうちトップだったのは、交通事故や骨折。それは当然のこととしても、肥満への心配は、「 風邪をひく 」ことよりも下でした。( 市場調査会社 NRC の 2018 年調査 ) 制度整備のみならず、意識改革や栄養に関する知識の普及も、地道に進める必要があるようです。