ハンガリーの人たちにとって、クリスマスは家族や親しい友人で祝う最大の行事です。日本のお正月におせち料理が欠かせないように、ここでもこの季節ならではのご馳走やお菓子があります。どんなものがあるのでしょうか。絞るのは難しいのですが、あえて 5 品についてご紹介します!
もくじ
食卓の王者ハラースレー
12 月 24 日のクリスマスイブには肉類を控えることになっているので、食卓に載るのは魚です。
中でも定番中の定番は halászlé / ハラースレー ( = 魚のスープ ) 。当地のレストランでは季節を問わず注文できますが、この時期の消費量が群を抜いて多いのは間違いなし。
入れるのは ponty ( 鯉 ) が主流。そう、鯉なんです !!
たっぷりのパプリカ粉や玉ねぎ、ニンニクを入れて煮ますが、それでも特有の匂いや味は残ります。最近でこそヘルシー志向で魚を食べるハンガリー人も増えてきましたが、大半が 「 魚? んーーー苦手」と拒否してしまいがちなのはこのせいかと疑っています。
自分で作ると川魚特有の臭みがとれない、魚の処理方法がわからない、という人も多く、出来合いのものを買ってくる場合も。
鯉の代わりに、harcsa ( ナマズ ) を使うこともあります。
もっとも現地の人たちからは「 ハラースレー自体が好きじゃない 」という声をよく聞きます。そんな時には、魚のフライやムニエルをご馳走に。また使うのも川マスや鮭など、要は魚であれば何でもよいよう。魚がどうしてもダメな子どもには、フライドチキンなどが用意されます。
煮込むほどに美味しいトゥルトゥット・カーポスタ
25 日、26 日は töltött káposzta / トゥルトゥット・カーポスタが一般的です。カーポスタ (=キャベツ ) で包んだものという意味で、つまりロールキャベツのこと。
なーんだ、ロールキャベツ? と思うなかれ。
ハンガリーのロールキャベツは、日本のとはちょっと違うのです。巻くときに使うキャベツの葉っぱは、かならずザワークラウト。煮込むときも、大量の千切りザワークラウトを周りに敷き詰めます。( 煮込むときはもちろんパプリカ粉、そして燻製ハムやベーコンも入れます。 )
ザワークラウトはキャベツを塩だけで漬けた発酵食品ですが、乳酸菌が本当にいい仕事をしてくれて、ほのかな酸味が癖に。ハンガリー人でこれを嫌いという人には今まで会ったことがないですし、日本人の口にも合うこと請け合いです。
そしてもう一つの特徴は、中味はひき肉だけでなくおコメも入っていること。これにより、ザワークラウトから出た汁がより一層、中味に染み込むようです。
ハラースレーと違って、トゥルトゥットカーポスタは皆さん、家庭で作っています。
温めるときは電子レンジでなくて、ぜひお鍋で。何度も温め直して煮込むと味が深くなると言われています。
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ベイグリ。あなたは「 クルミ派 」、それとも「 ケシの実派 」?
これなしのハンガリーのクリスマスはあり得ないのだろう、というのがぐるぐる巻いたお菓子 beigli / ベイグリ です。
外側の生地はほんのり甘く、発酵させて作ります。ただ、パンというよりは、ソフトなクッキーという食感。
中味はいろいろありますが、甘くした mák ( ポピーシード、ケシの実 )と dió ( クルミ ) が双璧をなしています。
ハンガリー人は「 ポピーシード派 」か「 クルミ派 」で分かれているうえに、レーズンを入れるのが良いとか良くないとか、よく盛り上がっています。もちろん両方好きという人も。
ちなみに両方とも、悪を遠ざける、豊かになる食べ物と言われ、縁起が良いです。
そして、ハンガリー人にとってもう一つ重要な点は、生地と中味の割合。 1 対 1 が理想とされ、皮はなるべく薄い方が好まれているようです。
ですが、これをうまく作るのは大変。皮を薄くすると、焼いたときにひび割れたり、さらに爆発してしまったりするんです。
作る時間がない、失敗のリスクを回避したい、というときは出来合い品を買ってきます。管理人ももっぱら購入派です。買う時はぜひお菓子屋さんやパン屋さんで。スーパーで売っているような大量生産されたものは、生地がたいてい分厚くて黄金律を守っていないうえに、味もいまいちです。
香りがクリスマスなメーゼシュカラーチ
ハンガリー版ジンジャーブレッドクッキー mézeskalács / メーゼシュカラーチも、この季節には欠かせません。
ベイグリに比べれば作るハードルはとても低いし、いろんな型で抜いたりアイシングで絵を描いたりするのも楽しい作業。なにより、焼いている間にシナモンなど香辛料の良い香りが漂い、クリスマスムードを盛り上げてくれます。
数週間日持ちするので、クリスマスツリーの飾りにするのもいいですよ。その場合は、焼く前に爪楊枝などでやや大きめに穴を開けておきます ( 穴が小さすぎると焼いている間にふさがってしまいます )。焼きあがって冷めたら、糸を通して吊るします。
メーゼシュカラーチに入れるべき必須スパイスは……
- シナモン ( fahéj )
- クローブ ( szegfűszeg )
- ショウガ ( gyömbér )
その他にお好みで▽
- カルダモン ( kardamom )
- 八角 ( csillagánizs )
- ナツメグ ( szerecsendió )
それぞれの配合割合がよくわからない場合には、専用スパイスミックス mézeskalács-fűszerkeverék も便利です。製菓材料コーナーか、スパイスコーナーで見つかります。
薄力粉 ( finom liszt ) だけではなくライ麦粉 ( rozsliszt ) を加えると、しっかりした特徴のある味になります。これについても、メーゼシュカラーチ用の粉 ( Mézeskalácsliszt ) という既にブレンドされたものがあり、当地のスーパーではお馴染みの粉もの製品ブランド Nagyi titka ( 銀髪おばあちゃんの絵が目印 ) *などからでています。
*Nagyi titkaの場合は、薄力粉 80 %、ライ麦粉 20 %。もっとしっかりした味がお好みの場合は、ライ麦粉 50 % でもOK。当地には色がそれほど茶色っぽくない világos というタイプもあります。ライ麦は入れたいけれどあまり茶色にしたくない場合はこちらを使ってみてください。
また、ベーキングパウダーではなく重曹 ( szódabikarbóna ) を入れます。
そして、たっぷりのハチミツを入れるのが特徴。ここは美味しい国産品をぜひ。生地に卵は入れません。
ハンガリーではしっとり”puha ( やわらかい )” ままのメーゼシュカラーチが良いとされているようで、この季節には、どうやったら puha のまま保たれるのかという記事をネットでよく見かけます。
飾っても飾らなくてもサロンツコル
Szaloncukor / サロンツコルは、ハンガリーのツリーにぶら下げる伝統的なお菓子です。外側はチョコレートで薄くコーティングされていて、中は、マジパン、ゼリー、サクランボやキャラメルのクリームなど、驚くほど沢山のフレーバーがあります。
これについての詳細は、共同管理人 2 人で総力を結集して ( ! ) 記事にしましたので、こちらをぜひご覧ください。
でも、ツリーに飾らなくても構いません。テーブルに置いておくだけで◎。それは包み紙がキレイだから。
正当なサロンツコルは、両端がフリルの白い紙でまず包み、その上に模様のついたきらびやかな紙の二枚重ね。まるで昔のどこそこの貴族御用達のお菓子みたいです。
加えて、包みを開けるときのカサカサという紙の音や、指先で感じる感触が、高級感をもう一段盛り上げてくれます。
老舗ブランドのものは、やはり量り売りタイプよりは価格が高いだけあって美味しいです。ただ手が出ないほどお高いということではないので、1 年に 1 度、いかがですか? 華やいだ気分になれること、間違いなしです!