ブダペストの由緒正しき療養温泉


世界でも類をみない温泉都市ブダペスト。その市内には、数多くの湯処があります。今回は、その中でもハンガリーの古 ( いにしえ ) の湯としても知られ、今でも地元民が足しげく通うルカーチ温泉をお届けします。ブダペスト初の湯治を目的として作られた療養温泉です。

ブダペスト温泉ガイド ~湯温 40℃ 以上~

2018.10.12

ルカーチ温泉の全貌

Lukács Gyógyfürdő ( 以下、ルカーチ温泉 ) の歴史は、12 世紀にまで遡ります。神聖ローマ帝国時代の騎士たちが、現在のルカーチ温泉の近くに怪我や病を癒すための浴場を建てたことから始まるそう。

そして時を経て、湯治治療を目的として建設されたのが、ルカーチ温泉です。国立リウマチ学・理学療法研究所 ( ORFI )* に併設しており、地元民も足しげく通っています。

* ORFI =Országos Reumatológiai és Fizioterápiás Intézet ( 英語名: National Institute of Rheumatology and Physiotherapy )

その人気の秘密は、湯の効能はもちろんのこと、『 適度な規模にある 』と言えます。メインとなる大浴槽の数は多すぎもせず、少なすぎもせず、屋内外合わせて 4 つ。 湯温は、32℃~40℃ と個人の好みに合わせて思いおもいの湯浴みを堪能できます。その他、プールや水風呂、治療用の浴槽や貸し切り風呂、サウナも完備。

特に、日本人にも嬉しいのは 40 ℃ の温かい湯です。ただ、館内は少し入り組んでいることもあり、この湯船を見逃す方がちらほら。

露天風呂がある建物へ来られると、別棟に屋内風呂があることに気づきにくいようです。たいていのガイドブックには外風呂の写真が載っていますので、仕方ありません。ルカーチ温泉は露天風呂だけではないことを知っていただければ幸いです。

地元のリピーターが多い理由

ルカーチ温泉のひょうたん型?露天風呂 手前の大きなバスタブにはジャグジー付き。小さい方は流れるプールならぬ流れる温泉にもなっています。Photo by Yuri

ルカーチ温泉は、地元客のみならず、湯浴み好きな在留邦人たちにも根強い人気があります。先程、『 適度な規模 』とお伝えしましたが、このポイントこそが、地元で好評な所以です。何が『 適度 』なのかをお伝えするために、ブダペストの他の有名どころを在住者視点で辛口コメントしますと、、、

● セーチェニ温泉は大きすぎ、観光化しすぎ、入湯料が高い、40 ℃ 以上の湯がない
● ゲッレールト温泉も観光化しすぎ、入湯料が高い
● ルダシュ温泉も入湯料が高い、週末以外、女性は火曜日しか入れない
● キラーイ温泉は安いけれど、40 ℃の湯船が小さい

逆に、ルカーチ温泉には目立った特徴がないので、上記4つの温泉よりも観光的魅力は劣ります。しかし、地元民が通うには、施設の規模も湯温も『 適度 』であるため、長く愛され続けているのです

32 ℃ の浴槽。向かって右隣りには 40 ℃のお風呂があります。 Photo by Yuri

40 ℃は、日本人にとってはいい湯加減ですが、ハンガリー人にとっては熱め。そのため、熱いお風呂とぬるめの湯船を行ったり来たり。

現地では、健康効果を期待して、熱い湯はサウナのような入り方をしていますまた、浴槽は広いので、順番を待たずとも入られます。この理由で、 40 ℃ のお風呂が超満員になることはめったにないのです。

日本人にとっては熱いというほどでもないですが、10 分ほど入ると汗がにじみ出るほど体はポカポカに。浴場入口には、飲み水場が設置されています。普通の飲用水ですので、のぼせてしまう前に適度な水分補給はお忘れなく。

ハンガリー人は湯が熱いのは苦手なのに、なぜかサウナは人気。サウナに入って体を熱し、水風呂に入って冷やすを繰り返します。温冷交代浴は、当地でもよく知られている健康法なのです。

ルカーチ温泉内には、サウナにこだわっている方のために Szaunavilág ( サウナヴィラーグ / サウナの世界 ) があります。これも地元客を惹きつけているポイントです。

どんなサウナがあるかというと …

Sókristály szauna ( 塩サウナ ) / ヒマラヤ岩塩
Aroma gőzkabin ( アロマ蒸気部屋 )
Infra szauna ( 遠赤外線サウナ )
Finn szauna ( フィンランド式サウナ )
Naturista szauna ( 裸で入るサウナ )
Tepidárium ( テピダリウム ) / 床や壁に接する部分から人体に熱を伝える微温浴室

※ 入場料は、受付で入湯料とは別に 300 円程度をお支払い。

別料金を払わないとサウナには入られない?と思われるかもしれません。大丈夫、スチームサウナや高温サウナは浴場内にもありますので、ご安心を。

効能とメディカルサービス

40 ℃ の湯船。写真向かって左手に飲用の薬用湯スポットがあります。  Photo by Yuri

昔は自然湧出でしたが、現在は地下 140 m からポンプで湯をくみ上げている源泉かけ流し

ナトリウム ( Nátrium ) 、カルシウム-マグネシウム炭酸水素塩 ( kálcium-magnézium-hidrogénkarbonát ) および硫酸塩-塩化物 ( szulfátos-kloridos ) を含む薬用湯。また、フッ化物イオン ( fluoridion-tartalma ) もかなり入っています。

泉質は、美肌の湯とも呼ばれる炭酸水素塩泉。泉色は、無色透明もしくは少々緑がかって見えるかもしれません。湯は、肌触りが良くすべすべ系です。湯上りの肌はつるんとしています。ただ、少し顔が突っ張る感じもするので、必ず保湿クリームを持参。

飲用薬用水場 Photo by Yuri

40 度の湯船横には、飲用の薬用湯あり。それを飲むと、卵が腐ったような、あの温泉独特の匂いが口中に広がります。 決して美味しいとは言えませんが、飲んでみられると湯の成分を舌をもって体験できます。

こんな症状の方に
● 変性関節疾患
● 慢性および亜急性関節炎
● 変形性脊椎症
● 椎間板ヘルニア
● 神経痛
● 骨粗しょう症
● 傷害後のケア
メディカルサービス

水中での牽引 ( Súlyfürdő ) … 医者からの処方箋が必要
泥治療 / 泥パック ( Iszappakolás ) * 
水中ジェットマッサージ ( Víz alatti vízsugármasszázs )
医師によるマッサージ ( Orvosi gyógymasszírozás )
理学療法による治療 ( Fizikoterápiás kezelések )
治療体操 ( Gyógytorna )
薬用水 ( Gyógyivókúra ) … 持ち帰り OK
入浴に関する専門医からのアドバイス ( Fürdőorvosi tanácsadás ) … 受付時間は月曜日から金曜日の 09:00-17:30 の間
マッサージ ( masszázs ) … 種類は多数

* 温泉成分が入った泥を 40 ℃ ほどに温め、それで体全体をパックしていきます。人気があるサービスの一つです!

ルカーチ温泉入口には大理石のプレートが並んでいます。これは、湯治客が傷や怪我が治癒し、その感謝の意を示して贈ったもの。中には 100 年以上前の石碑もあります。 Photo by Yuri

≪ Lukács Gyógyfürdő / ルカーチ温泉 ≫

● 住所 : 1023 Budapest, Frankel Leó út 25-29.
● アクセス : バス 9・109番、トラム 4・6・17・19 番、HÉV 電車最寄り駅 “Margit híd”.
● 営業時間 : 06:00-22:00 ( サウナは 09:00-21:00 )
● 混浴
● 入浴料 平日 : 3 900 Ft ( 約 1,465 円 ) / 休日 : 4 100 Ft ( 約 1,540 円 )
※ キャビン使用の場合は、平日 4 300 Ft、休日 4 500 Ft
※ 朝 8 時までと夜 6 時からの入浴は 3 500 Ft ~ ( 早朝と夜は割引価格 )
● サウナワールドは別料金 。平日 600 Ft 、休日 800 Ft を入浴料に追加で支払います。

普段は、14 歳以下のお子様の利用には医師からの処方箋が必要とされていますが、子どもの日 ( 5 月最後の日曜日 ) は特別なようです!1 年に 1 回程度なら、処方箋なしでも入浴を許可しているとのこと。実際に、子どもの日当日にルカーチ温泉で多くの子どもたちを見かけ、受付で状況を確認しました。年により対応が異なる可能性はありますので、お出かけ前には施設にお問合せください。

● 電話 : +36 1 326 1695
● メール : lukacs@spabudapest.hu

※ 2020 年は、昨年までの料金から全体的に 200 Ft ( 約 75 円 ) ほど値上げしています。
( Ft = ハンガリーフォリント 100 Ft = 約 38 円 2019 年 5 月現在 )


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ABOUTこの記事をかいた人

武田友里

日本ハンガリーメディアート在籍の撮影コーディネーター ( Production Coordinator ) です。神戸大学を卒業後、映画などのロケ地として人気になっているブダペストの大学院でメディアの世界に飛び込みました。現在は、マルチリンガルを活かして、ハンガリーを拠点に中欧・東欧諸国での取材・撮影で走り回っています。