ここ数週間、天然痘に似た「 サル痘ウイルス 」の感染例が欧米を中心に相次いで報告されています。ハンガリーでも先日、初の患者を確認。
専門家によると、新型コロナウィルスのようなパンデミックになる可能性は低いとのこと。そのため過度に恐れる必要はないようですが、万が一、感染した場合、また感染者の「 濃厚接触者 」になった場合はどうしたらよいのでしょうか。ハンガリーでの対応についてまとめました。
ハンガリーでの感染状況
ハンガリーで初めてのサル痘ウイルス ( majomhimlő ) 感染者が確認されたのは 5 月 31 日。
公表されたのは、38 歳の男性であること、症状は軽く現在は隔離中であることのみ。アフリカやその他の感染が確認されている国へ渡航歴があったのかも不明です。
隣りのオーストリアやスロベニアでは既にウィルスが確認されていたため、ハンガリーでも時間の問題とされていました。
その後、6 月 10 日には、ブダペスト在住の男性 (35歳)、ペシュト県在住の男性 (24歳) も感染と発表されました。症状はいずれも軽く、自宅で隔離中とのこと。これにより、国内で確認されたのは合計 3 人に。
WHO ( 世界保健機関 ) の 6 月 4 日の発表によりますと、 サル痘ウイルスを風土病としない 27 か国、780 人の感染を確認済み。
ヨーロッパでは、英国が 207 人と最も多く、次いでスペインが 156 人、ポルトガルが 138 人、ドイツが 57 人、フランスが 33 人となっています。* 死亡したケースは今のところなしです。
*WHOの最新公式データ発表は 6 月 4 日ですが、テドロス・アダノム事務局長は 6 月 8 日の記者会見で、既に29 か国、1000 人以上の報告を受けていると明らかにしています。
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こんな症状ならば、感染の疑いあり
ハンガリーの保健当局 NKK ( Nemzeti Népegészségügyi Központ ) が国内医療機関に配布したサル痘対応マニュアルによりますと、感染が疑われるのは以下の場合です。
- 発疹があり、サル痘以外の原因が疑われないこと。
- 加えて、他の症状がある場合。例として、
- 38.5 度以上の発熱
- 頭痛
- 疲労感
- リンパ節の腫れ
- さらに、サル痘の患者と密接に接触していた、もしくは、症状が現れる前 21 日間にサル痘が流行している国に滞在していた場合は、感染の疑いが高くなります。
まず、どこへ相談すればよい?
上記のような症状がある場合は、まず家庭医 ( háziorvos ) に相談するよう求められています。
外国人で家庭医登録をしていない場合、プライベート診療所に連絡を取ってみてください。
現在、在ハンガリー日本商工会が「 無料の 医療相談・通訳サービス 」を運用しています。ハンガリー在留のすべての邦人が利用可となっていますので、こちらもお勧めです。
いずれにしても、確定診断には検査が必要。医師は、患者の感染の可能性が高いと判断した場合、検査所に必要なサンプルを送ります。
国内初の感染者の男性の場合、採取されたのは、血液、尿、唾液だったそうです。
感染したら隔離
検査で陽性が判明した場合、発疹が完全に治るまで隔離が義務付けられています。
かならずしも病院など当局が指定したところである必要はなく、自宅でも良いようです。
その際、注意事項として以下が挙げられています。
- ペットとの身体的接触を避ける
- 免疫不全の人との身体的接触を避ける
- 性交は禁止
NNK のムッレール主席医務官によりますと、サル痘ウイルスには大きく分けて『 コンゴ盆地系統群 』と『 西アフリカ系統群 』の2 種類の遺伝的系統群があり、欧米で確認されているのは後者。この西アフリカ系は、人から人への感染リスクは低く、また軽症で済むとされています。
大半の場合が、特別な治療をしなくても 2 ~ 4 週間で回復するとのことです。
濃厚接触者になったら
感染者が確認された場合、NNK は過去 21 日間に濃厚接触があった人の調査を行うことになっています。
濃厚接種者とは、患者と密接な接触があった人、性的接触があった人、同居人です。
濃厚接触者は、発疹など症状がない限り、隔離義務はありません。
ただし 21 日間は注意事項として以下が挙げられています。
- 他の人やペットとの身体的接触を避ける
- 子ども、妊婦、免疫不全の人との身体的接触避ける
- 性交はしない
予防
NNK によりますと、濃厚な接触がない限り感染する可能性は低く、従って、一般市民の間で流行するリスクも低いとのこと。
予防は標準的なもので、基本的には手指衛生となります。
以下は、日本外務省が「 サル痘の流行地で心がけるべき感染予防対策 」として掲載している項目です。※ハンガリーは「 流行地 」ではありませんので、すべてが当てはまるわけではないことにご留意ください。
- 症状のある人の飛沫・体液等との接触を避ける。
- 石けんと水、またはアルコールベースの消毒剤を使用した手指衛生を行う。有症状者が使用した服、寝具、タオル、食器等に触れる際は特に手指衛生に気をつける。
- サル痘を保有する可能性のあるげっ歯類等のほ乳類 ( 死体を含む ) との接触を避け、野生の狩猟肉 ( ブッシュミート ) を食べたり扱ったりすることを控える。
- イベント等、大勢の集まりに参加する場合は、人と適度な距離を取ること。
予防接種
現在、サル痘に特化したワクチンはありません。ただし、天然痘ワクチンによって約 85 %発症予防効果があるとされています。( 日本厚生労働省 )
このワクチンに関しては、日本では 1976 年に定期接種から除外に。( ハンガリーでは1979 年 )
NNK は、現段階では、集団接種は必要なしとの見解を示しています。
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■ WHO 世界保健機関 Multi-country monkeypox outbreak: situation update
■ 日本外務省 サル痘の発生状況
■ HVG NNK eljárásrend: Gyanú esetén a háziorvosoknak 24 órán belül jelenteniük kell a majomhimlős esetet (2022年6月2日)
■ RTL Klub Virológus: Nem kell félni attól, hogy a majomhimlőt bárki elkapja az autóbuszon