何十年も騙し騙し共存してきた、《 親知らず 》をついに抜くことになりました。ハンガリーでは抜歯はどのように行うのでしょうか ? また歯科医院の様子は ? 「 痛いのが大の苦手 」な管理人自らの体験談です。
とうとう抜歯宣告
ハンガリーに住んでもうすぐ 24 年。義理親戚に歯医者の M さんがいるため、普段の治療は彼女のところにずっと通っていました。
親知らず ( bölcsességfog ) 、なかでも左下のは、これまでにも痛むことが時々あり抜歯を勧められていました。でも放置してしまっていたのは、耐えられないような決定的な痛みにはならなかったから。そしてなにより、痛みに極端に弱く苦手なので、単純に「 怖い 」というのがありました。
しかしある日、Mさんにとうとう「 もう抜くしか選択肢がない 」と宣告される事態に !
親知らずが前に生えている奥歯を押すので、その奥歯の被せ物がよく外れていたのですが、今回は外れた調子に歯の一部まで欠けてしまったのでした。
ハンガリーでは日本と同様、M さんのような一般歯科医 ( fogorvos ) は大がかりな抜歯まではしません。そのため専門の口腔外科医 ( szájsebészet ) を紹介してもらいました。
1 本でなく 2 本
紹介されたのは、Dr. Bogdán és Dr. Gyenes という医師の名前をそのまま冠した総合歯科医院 ( ブダペスト12 区 ) 。予約は19 時過ぎと、仕事が終わってからの時間帯で助かりました。
訪れたのは 5 月下旬。コロナ感染が完全に収まったわけではないので、簡易の検温を受けたり、外国渡航歴など所定の紙に記入する必要はあり。ですが、ワクチン接種の有無はまったく聞かれませんでした。( 私は既に2 回の接種完了済みでしたが )
担当医師のところに行くと、まずは別室で口腔周囲の全体像を撮影する「 パノラマレントゲン ( panoráma röntgen ) 」を撮影。
親知らずのことだけなのに大袈裟だな、これで料金どんどん上昇したらどうしよう……と思いましたが、部分的なものより全体像を見た方がよくわかるから、とのことでした。
あっという間に撮影が終わり、その画像を見ながら医師が一言。
「これは親知らずと、その前の奥歯、2 本抜かないと」
ひぇ~!!
心の中で叫びましたが、炎症が起きてしまっているので必要云々と説明を聞き、もう身を預けるしかありませんでした。
いよいよ抜歯
「 手術 」に入る前に、担当医が一通り工程を説明。
まず局所麻酔から。親知らずはほぼ横向き埋没タイプのため、最初は歯茎を切開します。その後、かなり大きなドリル音がして顎に響く感覚、また、時々締め付けられるような感覚があるとのことでした。
あぁやだなぁ …...
心の中で半べそになりながら「 何分くらいで終わりそうですか? 」と質問すると、「 そうですね~、2 本だから、私の予想では 30 分くらいかな 」と返ってきました。
「 では口開けてください 」とついに開始に。
来ました来ました、口の中で道路工事でもされているような感覚 !!
ただ実際のところ、不快感はあっても、麻酔が効いているので「 痛み 」はありませんでした。先生が時折、「 はい、奥歯は抜けました 」などと実況中継をしてくれたのも、あとどのくらいで終わるのか想像できて少し気が楽になりました。
そしてようやく
Kész!(= できました !! )
と言われ、傷口を縫合して無事終了。時計を見たら、所要 25 分でした。
抜歯後から抜糸まで
医師によると、抜歯後少なくとも 3 日間は痛みが強くなり頬も腫れる、そして次の 3 日間は徐々によくなるだろうとのこと。ただ、個人差があることに加え、炎症が起きると痛みもひどく長引くと言われました。
服用するよう言われた薬は 3 種類でした。
- 抗生物質 Augmentin ( 抗菌薬 ) → 炎症を防ぐため。朝夜 1 回ずつ ( 処方薬 )
- 整腸剤 Normaflore → 抗生物質が腸内の善玉菌まで殺してしまうので、それをなるべく守るため ( 市販薬 )
- 鎮痛剤 Cataflam ( 市販薬 )
その他に、次のような注意を受けました。
- 3 日間は禁止 ( 歯を抜いた穴に出来た血の塊 「血餅」がはがれないようにするため )
– 吐き出し
– ぶくぶくうがい
– 吸うこと - 頬が腫れたら、氷をあてる。ただし 3 日間のみ。10 分あてて 20 分休む。やり過ぎないように。
- 痛みがあるうちはスポーツは控える
- 飲酒、長風呂は控える
- 食事は抜歯した側とは反対の方で
薬で散々な目にあうことに
抜歯後、麻酔が切れてからの痛みや腫れは、思ったほどではありませんでした。
しかしひどかったのが、翌日午前中に服用した抗生物質。数時間して吐き気がし、一向に収まらず。ついに嘔吐してしまいました。整腸剤を合わせて飲んでいましたが、まるで善玉菌すべてが白旗上げて全滅しまったかの様子。
こんな薬を毎日 2 回、1 週間もとても続けられないと医師に電話して泣きついたところ、別の抗生物質を紹介されました。
実はその抗生物質でも激しい下痢になったことがあると答えたところ、どうやら私はペニシリン系薬物がだめだと判明。医師もあきらめ加減で、それなら飲まないで様子を見ましょう、となりました。( この時のほっとした気持ちと言ったら !! )
ただその後、抜歯したところだけでなく、顔の左半分や頭、首も重く痛み、鎮痛剤が手放せませんでした。
抗生物質をストップしたので変な菌が顔の奥まで入ってしまったのかと恐れながら、抜歯から 1 週間経過。抜糸のため歯科医を再訪問しました。
抜糸は不快感ゼロで終了。ただ医師によると、やはり炎症が起きてしまっていました。
そのため消毒し、歯科医院が薬局でオリジナル調合してもらっているという小さな薬を傷口に入れることに。その後 4 日間毎日通い、消毒&小さな薬を繰り返し、ようやく痛みもひきました。
今後は 4 ~ 5か月後、奥歯を抜いた場所に骨がどの程度再生したかを見てから、インプラント治療に入る予定です。
値段や総合的な印象は?
合計 70,000 Ft ( 約 26,500 円 ) でした。医療のため、付加価値税 ( VAT ) はかかりません。
内訳は、親知らずの抜歯が 50,000 Ft、奥歯が 20,000 Ft。
もちろん安いとは言いません。私の親知らずは埋没タイプだったので普通の抜歯よりも高め。
しかし初診料は特になく、パノラマレントゲン代、抜糸、消毒 & 小さな薬もすべてこの料金に含まれていたため、プライベート歯科医院としては妥当な印象です。( プライベートクリニックのため、ハンガリーの国家医療保険はカバーしてくれません。)
パノラマレントゲンだけでも、別の場所で行えば 最低でも 5000 Ft はします。
総じて、個人的には満足しています。実は義理親戚 M さんは、奥歯まで抜歯したことにやや疑問の目を向け 2 度目の通院時にわざわざついて来てくれたのですが、担当医とレントゲン画像を見ながら話し納得。「 判断は間違えてなかった 」と。
在留邦人の間でも、ハンガリーの歯科医のレベルは全般的によいと言われています。また多くの医師が英語やドイツ語を話します。
私が行った歯科医院も、ウェブサイトで英語表示はないですが、担当医には始めから ” English? Magyarul? ” と聞かれたほど。
歯はほったらかしにしておいて自然治癒してくれるものでもないので、もっと早く抜歯しておけばよかったとさえ思う今日この頃です。