ハンガリーでは、どんな集まりでもほぼ必ず登場する『 ポガーチャ ( pogácsa ) 』。小腹がすいたときにいただく《 おつまみパン 》です。塩味のスコーンとも呼ばれています。
たいていはお店で買ってきますが、作るのも実はそれほど大変ではありません。レシピも星の数ほどあり。
今回はそのなかでも「 世界一簡単 ( おそらく ) ! 」なカッテージチーズを使ったポガーチャの作り方を紹介いたします。
基本材料はたった 4 品。発酵する必要もなく、工程もシンプルです。そして最後は、ポガーチャの「 おつまみ以上 」の意味についても掲載しています。
材料
( 直径約 4 センチ、約 35 個分 )
① カッテージチーズ ( túró ) 250 g
② 強力粉 ( búzarétesliszt 通常は簡単に rétesliszt と言います) 250 g
③ 無塩マーガリン ( margarin ) 150 g もしくはバター
④ 塩 ( só ) 小さじ2
※イーストもベーキングパウダーも必要ありません。
▼その他
⑤ 卵 ( tojás ) 1個 ( 焼く前に、生地の表面に塗る分 )
⑥ おろしたチーズ ( reszelt sajt ) 今回は使っていませんが、焼くときにお好みでトッピング
レシピは、基本材料 ( カッテージチーズ、粉、マーガリン ) がすべて同量ずつ ( “egyensúly tészta”) というものをもとにしています。ただ、日本人の私には「 マーガリンが同量はあまりにも多すぎない !? 」 と、減らしてあります。
ハンガリー人友人らは、翌日に余ったポガーチャのパサパサ防止には、油分を思い切ってこれだけ入れるべき、と力強く主張するのですが…。これだけ減らしても、まぁまぁしっとりしていて大丈夫かと思います。
- カッテージチーズ
ハンガリーではよく使われる食材で、容器入り、袋入り、バターのような包装紙で包んだタイプがあります。お店では牛乳など乳製品周辺で売っています。通常、túró と言うと、牛のカッテージチーズ ❝ tehéntúró ❞ のこと。羊のカッテージチーズは ❝ juhtúró ❞ で、塩分が強く、味も特徴があります。お好みで、牛と羊のカッテージチーズ半々にするのも良いです。
- 粉
薄力粉 ( finomliszt ) でもOK。薄力粉の方が少し軽い感じになるようです。
- マーガリン
Sütőmargarin ( 製菓・製パン用の無塩マーガリン ) を使っていますが、もちろんバターでも構いません。
さぁ作ろう!
ハンガリーには、クッキー型のような「 ポガーチャ専用の型抜き ( pogácsa szaggató ) 」があります。
1 個ずつ用はもちろん、一度にたくさんできるように列になっているものや、ハチの巣型などがあり、見るだけでも楽しいです。ただ、それほど頻繁に作るのでないならば、何かの蓋などで十分代用が可能。
私が今回使ったのはプラ製のサプリ容器の蓋。直径 4 センチ程度が、一般的な小型ポガーチャに一番近い大きさかと思います。コップでもできますが、割れないくらいの厚みのあるものを使ってください。蓋の中と外にも打ち粉をすると型抜きしやすくなります。
ハケもあれば便利ですが、なければキッチンペーパーを折りたたんで代用できます。
生地を伸ばす麺棒はあった方が良いです。でも、それほど薄く伸ばす必要はないのと、しっかりした生地なので、手でもできないことはないと思います。
☆ 本格的なポガーチャは、生地を薄く伸ばしてそれを何度か折りたたんでから型抜きします。ここでは簡単にしたかったので、それも省略。
旅立ちにポガーチャ
私が初めてポガーチャを焼いたのは、息子が幼稚園生のとき。もう、十数年前になります。幼稚園では四季折々の集いで、手作りのお菓子やポガーチャを持ってくるよう、よく言われたからです。
ハンガリー人の友人に、「 超簡単、失敗するはずがないレシピ! 」と教えてもらったのがこれ。生地をこねる段階から型抜きまで、子どもと一緒にできるのも良い点です。
その後、幼稚園の卒園式で、みんながポガーチャ入りの小さなポシェット ( tarisznya ) を受け取るという伝統を知りました。卒園生はその袋を肩に掛け、クラスメイトの肩に手を置いて列になり、園舎を歩いて回ります。それが、お世話になった学び舎へのお別れの挨拶なのです。
ハンガリーの民話では、英雄である主人公が冒険のような旅に出る際、必ず持って行くのが ❝ 窯で焼いたポガーチャ( hamuba sült pogácsa ) ❞。
幼稚園や小学校、高校の卒業式でも、これまでの生活を終え、人生の新たな章に向けて旅立つ子たちに持たせます。
ポガーチャを入れるのは、食べ物に困らないようにという意味。
袋にはその他に、塩、土、硬貨を入れることもあります。
「 塩 」は人生が味わい深い豊かなものになるように
「 土 」はどこの土地でも根を生やせるように
「 硬貨 」は貧窮しないように
との願いが込められているそう。クラスメイトの記念写真が入っていることもあります。( 出所: eduline.hu )
…と、ポガーチャは単に日常的にパクパクいただく以上に、大きな意味を持っています。
どなたでも簡単に作れますので、ぜひぜひお試しください!
追記 ☆ 「 私たちも作ってみました!」
記事を公開して以来、「 早速作ってみました ‼」 とたくさんのお便りをいただきました。ハンガリーに限らず、日本やその他の国からも届いており、嬉しい悲鳴をあげています。
いただいたコメントを総じてみると…
☆ 生地は一晩くらい寝かせた方が膨らみが良い。余裕がある方は生地を折り畳むと、食感もアップ。食べるときに断層を剥がせるので楽しい。
☆ チーズを乗せた方が美味しい。 ( お酒が進みそう!)
といった感じでしょうか。
その他、いろいろな工夫や ( 時に驚きの ) アイデアも盛り込まれていますので、ぜひご参考に。
日本在住の皆さんから
クッキー型を使われたのが愛らしく、ハンガリー在住者にとっては新鮮です。( 当地のポガーチャは円形か 6 角形のみ ) 画像付きで紹介いたします。
夕方仕込んで、冷やして、夕食後に焼いたのですが、やめられない止まらない…. 素朴で、美味しい~。
マーガリンは健康上あまり使わないほうがいいと聞くので、無塩バターで作りました。あと、家には薄力粉しかなかったので、薄力粉で。
また、型抜きには、ハートとお花型のクッキー型抜き用を使いました。( うちにあったサプリの蓋ではうまく外れなかったので )
娘と一緒作ったのですが、塩分に関しての二人の共通意見は「おやつとしてはチーズなし、つまみとしてはチーズ乗せ」です。ワイン飲むなら断然チーズ乗せ。
実は、生地を冷蔵庫で休ませている間にワインを飲み始めて…。生地伸ばし、型抜きの時もワイングラス片手に、でした😅
なので、出来上がりに若干バラつきがあるんですけど、ほろ酔い気分でも失敗しない、ホント、世界一簡単ですね。発酵もないし、強力粉でなくてもいいし。
今度はカッテージチーズもいろいろ探してみて、アルコール摂取しない状況で作ってみます!
甘くないので、ワインのつまみにサイコーです😆
Facebook のポストを見て、勝手にリレー(笑)
直径 4 センチで型抜いたけど、焼いたらつまむのにちょうど良い 3 センチくらいになって、つまみ食いが止まりません。
ハンガリーに行ったことがない
ポガーチャも食べたことがない
味は、パンとスコーンとパイの間って感じでした。
これで果たして合っているのだろうか?いつかハンガリーに行って本物を食べる時のお楽しみ。
知らない料理を作るのって楽しかった!
ビールがほしくなりました。朝なのに!🤣
一晩寝かせた方が、材料がなじんで落ち着いた感じ。
あと、伸ばす前ですが、3 回ほどたたんでみました。
(パイ生地つくるときのように )
そうしたら狙った通り、層ができました! あとは、生地を包んでいたラップに打ち粉して、ラップの上から麺棒で伸ばしました。
これで洗い物も簡単に!
ハンガリー在住の皆さんから
せっかちなので、生地を冷蔵庫で寝かさず作ったのが左。
一晩寝かして、薄く伸ばして重ねるを 3、4 回繰り返してチーズをのせて焼いたのが右。
寝かす時間で膨らみが倍増することに驚きました。
実は二晩寝かせたものを別日に焼いたのですが、一晩寝かせた時よりさらに膨らんで驚愕しました 笑 ( 写真撮るのを失念 )
時間によって生地にどのような変化が起こるのか、、、?すごく不思議です。
塩味については、塩分を気にして、レシピにある小さじ 2 より少なめ 1.5 位にしました。
1 回目焼いた時は塩味が恋しくて少々物足りなかったので、同じ生地での 2 回目のベイク時は、塩分補給もかねてチーズをのせました。
そうするとやはりより美味しく、塩は小さじ 2 は最低あったほうがいいように思いました。
いつもパン屋さんで焼きたてを狙って頬ばっていたのですが、 おかげさまでこれからはいつでも自分の家で焼きたて😄が食べられます。
簡単で美味しいレシピを本当にありがとうございました 🙇♀️
丁度いい型がないし、Sajtos rúd も多分似たような材料で、売られてるのも太さとかバラバラだし…
細かいことは気にしないで包丁で切ろう!と言うことで切りました。
ポポリさんのコメントを参考にし、一晩寝かせることに。
あとはクロワッサンのように畳んで伸ばしてを 10 回くらいやりました。確かに寝かせて数回畳んで焼いた方がふんわりになり、厚みもでました。何ででしょう?
前回作ったマンガリツァラードのは、子どもらに「お肉の匂いの不思議な味のポガーチャだった」と言われてしまい…。今回の方 ( バター使用 ) が断然好評でした 😅
とても作りやすいレシピなので、次はヤギのチーズで挑戦したいです。
今度は medvehagyma ( 俗称クマネギ ) を入れてみました! ( 2022 年 4 月)
みじん切りして塩をふって、しばらくした後水気を絞り、生地に練り込みました。塩揉みを入れるので、生地に塩は入れませんでした。
今回は体力の都合で、二晩冷蔵庫でねかせたところ……グルテンが頑張ってくれてよく膨らみました。
型抜きはロンドン土産の小さなジャムの瓶で。
ビールとそれはそれは合うらしいですが、下戸なので試せず残念です。
おいしいのに当たらなかったんですね。
でも家で作ったら、塩味もハンガリーっぽく、かといって塩加減も悪くなく。
大きさもちょうどいいし、みんなパクパク食べてました!
最初なので半分の材料でしてみましたが、もう売り切れ。
改めてレシピを教えていただきありがとうございました!
ポガーチャを初めて食べたのは、夫の会社のスポーツチームの全国大会に応援に行った際、社員の方が手作りしてくれたものでした。
最初はなんてしょっぱいんだろう ! と思ったのですが、段々とその塩気とチーズの風味が病みつきに。ケーキ屋を覗けば Krémes / クレーメシュ ( 甘いものが苦手な私が好きになった、初めてのハンガリアンケーキ) と一緒に買い求めていました。そして、とうとうこちらのレシピを見つけ、ハンドメイドに挑戦 ( 笑 )
レシピは薄力粉とバターに変更し、1 日半寝かしたあと何回か折りたたんで型抜き。型は、SPAR で売っていたポガーチャ専用の丸形の型抜き ( 4cm ) を使いました。
売っているポガーチャは切れ込みが入っていたので、卵を塗る前に見様見真似でナイフで格子に切ってみました。
たたむときの厚さが均一ではなかったためか、うまく膨らまなかった部分もありましたが、時間がたつと余熱でフワッとした食感に。
今回は粉チーズ、クミンシード、何も載せないノーマル、の 3 種類を作ってみました。
焼いた直後は túró ( カッテージチーズ ) のクセの強さに負けていましたが、時間が経つにつれトッピングの香ばしさアップ ! 特にクミンは最高のおつまみになりました。
次に作るときは、行きつけのケーキ屋さん風にセサミをまぶしてみようと企んでいます。
混ぜてこねるだけの簡単レシピで、小腹が減った時にひょいっとつまめる気軽さが良いです。レシピをありがとうございます。
その他の国から
日曜日のランチ用に、パンもなく、パン 1 回焼く分の小麦粉もなく。それで、Facebook でのポストを思い出してやってみました!
チェンバロ奏者でして、実は金曜夜、もう一人の日本人バイオリン奏者と、コンセルトヘボウ / Concertgebouw でコンサートでした。
お陰様で大成功だったのですが、その後フラフラに (笑) 。なので、日曜は買い物に行く元気もなく、家にあるものだけで。
チーズは冷蔵庫にあったフィラデルフィアチーズ、粉は全粒粉と薄力粉半分ずつくらいあったのを使い切り、それで焼いてしまいました。
出来た〜凄く美味しかった。ありがとうございました〜。
コンセルトヘボウでのコンサートは、コロナ後初でして…ですから歴史的というか、歴史を創ったというか。私たちにとって新しい門出でもあり、それに相応しい日曜ランチになりました。
娘たちが先を争って食べてしまったので、写真を撮るときは 3 つしかもう残ってませんでした (笑)
どれも美味しそうです! 皆さん、有難うございました。
Photo by うさん
丁度一年前にブダペストのスーパーで、このお菓子を見つけて美味しかったので覚えておりました。
材料はすべて、地元北海道素材 100% で揃えました。強力粉はコロナ禍で在庫切れのため、薄力粉に。バターは有塩にして、塩は入れませんでした。
トッピングで急遽レッドチェダーチーズを追加。これにも塩が結構入っている感じでした。結果的にこれで塩味が十分でした。
ブダペストで食べたものはキューブ型でしたが、母から貰った昔のクッキーの型が直径 3.5 センチだったのでこれで代用。
卵アレルギーが家族にいるので卵は表面に塗りませんでした。
ポガーチャ、夜中に焼き上げ、ちょっとつまみ、今日はおやつとして頂きました。薄力粉なので少し軽い仕上がりになったと思いますが、おやつにはこの位が丁度かったです。
時間が経つと柔らかいデニッシュっぽい感じも出て来てこれはこれで美味しいですね。少しあたためて食べるとチーズの香りがたちます。
このお菓子にまつわる素敵なストーリーを含め、味わい深く頂き、昨年 2 度訪問したブダペストを懐かしく思い出しました。