政府による病院改修や設備充実のための投資計画の発表が、ここ最近、続いています。ブダペスト市では 4 つの中核病院が整備されることに。また外来手術専門の施設も拡充されます。その一方で、手術の順番待ち、院内感染、医療スタッフ不足といった足元の問題は残ったまま。この数か月の良いニュース、悪いニュースの両方をお伝えします。
ヤーノシュ病院は、ブダ北部「 中核病院 」へ
政府は 10 月末、ブダペスト市 12 区の聖ヤーノシュ総合病院 ( Szent János Kórház ) を、市内の「 中核病院 」の 1 つにする方針を発表。まずは予算 4.95 億 Ft ( 約 2 億円 )を配分し、ベッド 500 床の入れ替え、リハビリ専門科も設置します。
今後は、救急医療科も設置する計画。また、隣接のクートヴルジ病院( Kútvölgyi Klinikai Tömb Rendelőintézet )については、現在の国立センメルヴァイス医科大学附属からヤーノシュ病院に統合します。 道路を隔てて建つ 2 つの別々の病院棟は、行き来できるようなるとのこと。ヤーノシュ病院の「 中核病院化 」は、早ければ 2022 年春までに完成。
政府はこれまで、市内ではペスト側に 2 か所、ブダ側に 1 か所に「 スーパー病院 」を設立するとしていました。今回の発表により、ブダ側にはヤーノシュ病院が追加され、全部で 4 か所に。これら 4 病院のうち、3 つについては既存の病院を改修や統合でグレードアップするものです。
ペスト側 ( ドナウ東岸 )
● 北部 → ホンヴェード病院 ( Honvédkórház ) が MH 医療センター ( MH Egészségügyi Központ ) に。
● 南部 → 聖ラースロー、聖イシュトヴァーン病院 ( Szent István Kórház–Szent László Kórház ) が統合され、ペスト南部中核病院 ( Dél-pesti Centrumkórház ) に。
ブダ側 ( ドナウ西岸 )
● 北部 → 聖ヤーノシュ病院がグレードアップ
● 南部 → 新たに建設 ( ブダ南部病院、Dél-budai kórház ) 「 スーパー病院 」とも呼ばれています。
これらの中核病院は、ブダペスト市民だけではなく近隣市町村の住民にもサービスを提供する大規模総合病院になる予定。
国内 20 か所に外来手術専門の施設
政府はまた、11 月に、外来手術専門の施設を国内 20 か所に設置すると発表。総投資額は 80 億 Ft ( 約 32 億円 ) で 2020 年 1 月までに完成予定です。
うち 19 か所は、既存の国立の医療施設 ( 病院など ) の内部を改修。1 か所は新たに建設します。( 具体的な場所は未発表 )
外来手術は、術後 24 時間以内にその施設を出て、その後は自宅で自己管理するもの。これにより、病院での看護時間の削減、術後の早い復帰、費用面での効率化を図ります。
外来手術の例としては、ヘルニア、眼科 ( 例えば白内障 )、腎石除去などがあります。
華々しい発表の反面…
華々しい将来の開発計画は歓迎すべきではあるものの、現時点では、良い方向に向かっていると実感はしがたい状況。入院する際は、いまだにトイレットペーパーを持参する必要があるくらいなのです。国家医療サービスの抱える問題のうち、3 つを取り上げます。
院内感染
国内のメディアはここのところ、院内感染の問題を多く取り上げてきました。 人材省 ( 医療や教育所管 ) は「 不必要にパニックを引き起こしかねない 」とデータ公表を長らく拒否。しかし、市民団体 TASZ が情報公開を求めて起こした裁判で勝訴したため、この 10 月にようやく公表に。2017 年の院内感染件数は 1 万 5389 件で、うち院内感染による死亡者数は 440 人でした。( 出所 : ANTSZ )
手術の待ち日数
手術待ちの日数が長引いていることも問題になっています。国内のニュースサイト Mfor.hu が国の健康保険基金機構 NEAK からのデータをもとに報じたところ、2018 年 10 月現在、国内では 3.6 万人近くがなんらかの手術で順番待ち状態。( 2017 年 11 月時点では 2.8 万人強 )
例として、白内障手術は、2017 年の待ち日数 ( 実績 ) は平均 45 日。2018 年 5 月時点 ( 見込み ) では 92 日に伸びています。また、扁桃腺も 21 日から 43 日に。人工股関節の置き換え手術は 104 日から 262 日に。( 出所:NEAK ) 特に、医師や看護師が不足している国の南部、北部などでは深刻です。
人手不足
国立医療機関での医師、看護師、その他の医療スタッフの不足は、長らく問題になっており好転の兆しが見えず。今年の 9 月以降だけでも、ブダペスト市の中核病院の 1 つ「 ホンヴェード病院 」や、アイカ市 ( ブダペストから西 120 km ) のマジャル・イムレ病院などで、救急科や集中治療部 ( ICU ) で医師や看護師が全員退職するというニュースがありました。
国立病院勤務の医師や看護師の給与が低いことは常に指摘されており、国も段階的に引き上げてはいます。しかし、それでも英国やドイツの数分の一。そのため、西側 EU 加盟国での就労を選択する医師が後を絶ちません。加えて近年は、国内のプライベート医療機関で勤務、または個人診療所を始める医師も増加。こうした状況の背景としては、報酬の低さだけではなく、医療機器の不足、残業時間の多さなど労働環境の過酷さが挙げられています。
( すべての情報は 2018 年 11 月現在 )