温泉大国として日本でも徐々に知名度が上がっているハンガリー。首都ブダペスト市内にも有名な温泉施設がいくつかありますが、今回は、街のまさにど真ん中で温泉脈が見つかったというニュースです。
観光名所から目と鼻の先
ブダペスト市 5 区 ( * ) が、「 温泉脈の発見に成功! 」と発表したのは、2018 年 9 月 17 日のこと。
場所は、ヴァダース通り ( Vadász utca ) の建設現場。観光名所の国会議事堂や聖イシュトヴァ―ン大聖堂 ( バジリカ ) から目と鼻の先のところで、近所にはレストランやカフェも建ち並びます。
温泉脈が掘りあてられたのは、地下 800 メートル地点。市内で最も高いイシュトヴァ―ン大聖堂は 96 メートルなので、いかに深く掘ったかお分かりいただけると思います。
水温は 57 ~ 58 度。5 区によると、泉質は非常に高いため、gyógyvíz ( 療養温泉 ) としての認定を受けることも期待できるとのこと。
(* ブダペスト市内には 23 の行政区があり、5 区と言えばドナウ川右岸の町の中心地になります。)
なんでここで探査?
温泉の探査をしていたのは、5 区の区役所。区は現在、その場所に、50 億 Ft ( 約 20 億円 ※ ) を投じてスポーツ・ウェルネス施設 “ V30 Sportközpont ” を建設しているのです。
ハンガリーはもともと温泉が各地にあります。ブダペスト市内でもセーチェーニ、ゲッレールト、ルカーチなど有名どころが散在。 区は、施設の建設にあたり専門家と協議を重ね、地中深く掘って行けば温泉脈にぶつかるはずと仮定。
区が目指しているのは、環境にやさしい「グリーンな施設」。屋上にはソーラーパネルを設置する他、温泉の発見に成功すれば、施設内のプール等への温水供給と暖房用の熱供給が可能になると考えました。
今回、発見された場所から湧き出る量は 1 分あたり推定 400 ~ 500 リットル。温水にも暖房にも十分な量とされています。
※Ft = ハンガリーフォリント。100 Ft = 約 40 円 ( 2018 年 9 月現在)
温泉水の利用先
建物は 地下も合わせ 6 階分、総床面積は 3800 平米で、次のような機能が備えられる予定です。
・ 25 メートルスイミングプール ( 地下 )、子どもの練習用プール
・トレーニングジム
・バスケットボールコート 1 面。
・ウェルネスセンター ( プール、サウナ、リラックスルームなど )
・ボルダリング用壁
・屋上テラス
区によると、施設は、小さな子どもからお年寄りまで市民の利用を想定しています。
というのは、区内にはかなり長いこと、まともなプールやスポーツ施設がなかったため。以前は、エルジェーベト橋近くにプール完備のスポーツ施設があったものの、諸事情により 2000 年に閉鎖していたのです。
以来、5 区は新施設建設のための候補地を探すことに。ただ中心部は、築 100 年以上の古い建物が隙間なく並び、空き地はほとんどなし。加えて、これらの多くは伝統的建造物として保存指定を受けており、大々的な改修はなかなかできません。
いくつかの候補があがった後、ようやく決まったたのがこのヴァダース通り 30 番。ここにも建物があったものの保存対象ではなく、老朽化していたため取り壊しが決定。現在、2019 年 9 月の完成を目指して、工事が進んでいます。
温泉水のスパプールに、温泉の熱による暖房。温泉大国のブダペストらしい施設になりそうです。
「 ハンガリーの暮らしの健康手帖 」では今後、ハンガリーが誇る温泉についてもアップしていく予定です。どうぞお楽しみに !