ハンガリーに来たばかりの学生 Kentoushi さん ( 20代、男性 ) の自転車事故体験談の後編です。病院到着後も、困難や驚きが待ち受けていました。ようやく退院の手続き…となった時、ある痛い事実に気づきます。今回は、病院での出来事、入院生活、滞在するにあたってかならず準備しておくべきことについて綴っていきます。
最怖の瞬間
診察、検査も終わり、ようやく落ち着いてきたと思ったその時でした。急に看護師が、僕をどこかへ連れて行きます。
たどり着いた先は、なんと手術室 !! 緑の服、帽子、特殊なビニール手袋をはめた外科医と助手がいました。台の上にはメスとハサミと注射針…。こんな光景、テレビでしかみたことがありません。
何の説明もなく ( 実際はあったようですが、当時は記憶になく ) 、手術をすることになっていたのです。生まれて初めての手術に戸惑い、恐怖で何度首を振って「 I’m SCARED ! ( 恐いよ! ) 」と言ったかわかりません。
この歳で半泣きになりながら、ようやく手術台の上にのりました。顔の近くに何枚も布をかぶせられ、大量の消毒、そして唇に局部麻酔。あまりの痛さにもがきました…。
大丈夫、大丈夫、と何度も慰めてもらったことを覚えています。でも外科医や助手たちは、英語ではなくハンガリー語で僕の叫びに応答。実際に、何を言ってたかはよくわかりませんでした。
口元が麻痺していたので、身振り手振りを使い、コミュニケーションをとりました。
とにかく言葉がわからず、病院では容易にやりとりができなかったのです。何もわからないままに治療を受ける恐怖は並大抵のものではありませんでした。
試練続きの入院生活
手術が終わり、知り合いの日本語通訳者の方に電話をつないでもらいました。電話で通訳をしてもらったところ、脳震盪 ( のうしんとう ) を起こしていたことが判明。外傷は、口と顎をぱっくりと切っていたので、縫合手術をしたとのこと。数日入院することになりました。
病棟は日本と比べると、作りが古く、看護師はほとんど英語を話さない等、僕にとっては試練でした。時には、入院しているハンガリー人の患者さんが英語で通訳する状況。
出てくる食事も日本とは全く異なります。一枚のパンにバターを塗り、ハムをのせただけという貧相な物が出されるのです。一番豪華だったのは、ソーセージ入りの野菜スープのようなもの。しかし、口の怪我がひどく、そのほとんどを食べることができませんでした。
同じ大学に留学している友人や通訳サポートの方は、衣類や飲食物を買ってきて、お世話をしてくれました。こうした大きな助けがあり、ハンガリーでの入院生活はなんとか成り立ちました。
長い付き合いのある友人が現地にいたことは、心強かったです。また通訳に来てくださった方々も、まだお会いして長くないのに親のように優しく看病してくださいました。
海外留学中の病院生活では、助けてくれる人たちの存在は本当に大きいです。病気や怪我をしている時は、人の温かみこそが、そのつらさを和らげてくれるのだと思いました。
ようやく退院なるも、痛い事実
脳震盪を起こしていたため、 48 時間の入院が課されました。手術した患部の痛みや頭痛はひどく、よく寝ることはできませんでしたが、2 泊 3 日で何とか担当医から退院 OK のお達し。
その直後、ある痛い事実に気づきました。僕はこちらに来たばかりで、まだ現地で使える保険に加入していなかったのです。搬送、診療、CTスキャン、血液検査、手術、入院にかかった費用は、 合計 12 万 4 千 Ft ( 約 5 万円 ) ※ 。当地で利用可の保険がなかったため、その場で現金か銀行カードで一括払いしなければなりませんでした。
※ Ft = ハンガリーフォリント 100 Ft = 約 40 円 ( 2018 年 9 月上旬 )
突然入院することになった僕は、こんな大金の持ち合わせはなく、当地で利用可能な銀行カードもまだ持っていませんでした。さらに、恐怖と疲れで頭はぼんやり。正直、退院手続きや支払いどころではありませんでした。
それをみた通訳さんが、結果的に立て替え払いしてくださることに。状況を理解してくれて、たまたま親切だったからよかったけれど、本当なら大変なことになっていたことでしょう。
退院してからできるだけ早い段階でお返ししましたが、学生である僕にとっては、かなり痛い急な出費です。でも、他人を傷つけることはなく、ハンガリーだったということもあり、この額で済んだようです。外国で滞在する場合は、絶対に保険が必要だと痛感しました。
自転車でのちょっとした不注意がここまで大きな困難を招き、親や友人知人に心配をかけてしまったのです。今後は、よく注意して留学生活を送っていきたいと思います。
これからハンガリーへ来られる学生さんをはじめ、僕に起こった出来事を教訓にしていただけると幸いです。