ハンガリー国鉄MÁV汚名返上なるか 遅延なら一部返金へ

「 しょっちゅう遅れる 」とレッテルを貼られているハンガリー国鉄 MÁV (マーヴ) が、大改革に乗り出します!

2025 年中には、遅れたら運賃の半額を返金する補償制度が開始に。その他にも、快適さと利便性を高める様々な措置が講じられる予定です。

20 分以上遅れたら

国鉄 MÁV (マーヴ) と地方バス Volánbusz (ヴォラーンブス) の運営を担当するラーザール・ヤーノシュ建設交通大臣は、1 月 早々に行った記者会見で、本年は「乗客のための年」にすると宣言。乗客の利益を第一に、10 の措置を実現すると約束しました。

なかでも目玉は、20 分以上遅れた場合に運賃の半額を返金する制度。本年 6 月に開始予定です。

*ハンガリー語で新制度は “ késési biztosítás ” =遅延保険と名付けられています。

 

現在も、遅延の際の補償制度はあることはあるのですが、国内線は最低でも 30 分超、国際線は 60 分超、また乗車券及び座席指定券を持っていて、算出された補償額が 1000 Ft 以上でないと返金されません。また手続きも煩雑で、返金率も低いです ( 返金率は基本 25 %で、2 時間以上遅れたときのみ 50%になります)。そのため、「 遅延 20 分超で返金 50 % 」はかなり野心的。市民には驚きを持って受け止められました。

新制度で、これまで明らかになっている点は、次の通りです。

  • 電車、バスの両方が対象になる。
  • 乗客には遅延を証明する必要はない。
  • アプリやネットでチケットを購入した場合は、利用者の銀行口座に返金される。
  • それ以外の乗客には、目的地到着時に窓口に赴けば、チケット代の 50%が返金される。
  • 返金は、1 日券や定期券利用者にも適用される。

 

加えて、ある路線が 1 か月に 5  回以上 20分超の遅延した場合、翌月の定期券は 10 % 割引される制度も整備するとのこと。

 

ラーザール大臣は、現在、MÁV 運行の電車は、4 本中 3 本は定刻通りだと擁護しました。

ですが、これは逆に言えば 4 本に 1 本は遅れるということ。MÁV の公式サイトで得られる最新データでは、2024 年 11 月の「遅延 15 分以上」は 8,000 本以上、うち「遅延 30 分以上」は 2,400 本あまり でした。その他の月も、だいたい同じような状況です。

ラーザル氏は MÁV に対してかつてないほど批判が高まっているとしたうえで、「遅延問題を克服したい」と強い決意を示しました。

MÁV を巡っては、その他にも昨年は脱線事故が発生 ( 怪我人はなし ) 。また、列車車両や鉄道線路の老朽化も長らく問題になっており、2026 年春に総選挙を控える中、政府も本気ぶりを見せる狙いがあるようです。

 

 

その他の改革措置

その他に、建設交通省がどんな乗客フレンドリーの措置を約束したのか、いくつか例を見ていきましょう。

 

トイレを改修

現在、MÁV の駅 1000 か所、Volán バスターミナルの100か所にトイレがあります。これら「すべて」を 2026 年 1 月までに近代化するとのこと。

改修後は、切符や定期券購入者は無料で使用できるように。その他の利用者には有料になります。

ラーザール大臣も、駅のトイレ 700 か所は劣悪な状況と認めています。

ブダペストの主要駅・西駅の地下道にあるトイレです。近代的できれいですが、ハンガリー全体では例外的な存在。現在の使用料は 300 Ft。

 

清掃員の常駐

快適さの確保では、高速鉄道 InterCity(IC*)で清掃員を常駐させ、運行中にも清掃を実施することに。2025 年 4 月からの予定です。これにより、列車内のトイレ、車両すべてを清潔に保つとしています。

*IC はブダペストと地方都市、国外の都市を結ぶ鉄道で、最も利用客が多い路線です。

現在は、停車中に清掃員が入る仕組み。(※これは国際線です)

 

新アプリのリリース

MÁV と Volánbusz は、新たなアプリ『MÁV Plusz=マーヴ・プルス』をリリースする予定です。( Pluszは、プラス+の意味 )

その最も重要な機能は、遅延した際の返金システムとなります。また、乗車しようとする列車車両に冷房がついているかも確認できるようになります。

 

現在のアプリはこんな感じ👇 2025 年 4 月には新アプリが誕生します。

現在のアプリ

その他にも、建設交通省は、新しいバスや車両の購入などを計画しています。

 

 

懐疑的な見方も

これらの措置が実現すれば、夢のような快適さになりそうです。また、クルマでの移動をやめて電車バス利用に乗り換えようという人も出てくるでしょう。

ただ、ラーザール大臣の「 10 の約束 」は壮大すぎて、管理人の周囲では、「ホントにできるの?」と懐疑的な見方をする人も多いです。ハンガリーでは新システムを導入したは良いものの、直後は特に混乱が伴うことが多く、遅延の際の返金制度もスムーズに機能するのかは未知数。

 

👨‍🦰自分では遅延を証明しなくて良いというけど、技術的にすべてのケースで可能?

👩‍🦰 渋滞や事故でバスが遅れた場合 (バスの責任ではなく) も返金対象に?

👩‍🦱 バスは目的地の停留所に窓口があるわけではないので、紙の切符を持っていた場合、返金手続きはどこですればよい?

などの声を聞きました。

 

また、遅延自体もどれほど減るのか、注目されます。

大臣が発表した数日後も、ブダペスト近郊のタタバーニャ市で列車が故障し、凍てつく寒さのなか乗客が線路伝いに駅まで 800 メートルも歩く羽目になった、というトラブルも発生しました。「 夢のような快適さ 」からはほど遠い出来事でした。

ハンガリー暮らしの健康手帖では、新アプリのリリース後など、随時記事を更新してまいります。

ブダペスト西駅。駅舎は立派です。

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ABOUTこの記事をかいた人

鷲尾亜子

1997年よりハンガリー在住。日本とハンガリーでの新聞記者の経験を活かし、現在、Twitter では「 ハンガリーのニュース 」、また政治経済ニュースレター「 ハンガリー経済情報 」( 有料 ) を配信中。