ハンガリーでは、新型コロナ「 第 3 波 」に突入。急激に感染者が再増加している状態です。そして 非常事態宣言も 5 月 22 日まで延長に。
今後、コロナ制限措置はどうなる? ワクチンはどこのを使い、接種はどの程度進んでいる? そして政府が計画する「 コロナ免疫証明書 」とは? 最新情報をまとめてお伝えします。( 情報はすべて 2021 年 2 月 23 日現在 )
(2月25日更新情報:一連の制限措置は3月15日まで延長となりました)
もくじ
収束する前に新たな波
ハンガリーでは昨年 11 月に一連の厳しい制限措置を導入して以来、12 月上旬をピークに新規陽性確認数は下降傾向を辿っていました。
このままでいけば昨秋以来の第 2 波は収束し、普通の生活に戻れるのではと期待が高まっていましたが……
2 月に入ると日々の新規陽性者は 1000 人台で下げ止まり状態に。そして今度は、増加し始めたのです。
ここ数日、新規数は毎日 3000 人前後 ( 下図参照 ) 。死者も毎日 100 人前後、そして入院患者数および人工呼吸器装着数も増えています。また、「 現在の感染者数 」も増加に転じました。
政府コロナ対策本部も2 月 19 日、「 他の欧州諸国と同様、第 2 波が収束しきらないうちに 第 3 波に入った 」という認識を表明。そして現在は、第 3 波の拡大期にあるとしています。
いったいなぜ、また増えてきたのでしょうか。
対策本部によると、主要因は、他の欧州の国々同様、感染力が強い新型コロナ変異株。
ハンガリー国内では英国型が既に 400 人近く確認されています。ブラジル型、南アフリカ型については未確認です。
加えて一部の専門家は、人々の気の緩みも影響しているのでは、と指摘しています。
制限措置はどうなる ?
20 時以降の外出禁止などの一連の厳しい措置は、今のところ 3 月 1 日まで。そのため、政府は一両日中には今後について決定します。
政府は当初、3 月、そして 4 月に段階的緩和もありうるとしていました。しかし第 3 波が始まり、 3 月 1 日からの緩和の可能性はほぼなくなったと言ってよいでしょう。(2月25日更新情報:一連の制限措置は3月15日まで延長となりました)
今はむしろ、この状態であれば制限措置強化すらありうるという恐れが一部であります。
オルバーン首相や政府対策本部は、これまでのところ強化は計画しておらず、そのような事態が避けられるよう願うというスタンスです。
並行して国会は 2 月 22 日、政府の要請に基づき新型コロナ非常事態宣言の 90 日延長法案を可決。5 月 22 日までとなりました。非常事態宣言の延長=制限措置も自動的に延長、というわけではありませんが、宣言中に政府は独自権限で制限を導入したり変更したりできます。
※ 現在の制限措置については、この記事の一番最後をご覧ください。
「 国民との協議 」
制限措置解除にあたっては、政府は 2 月下旬から「 国民との協議 ( nemzeti konzultáció ) 」 も開始。これは、政府が設定した質問に対し、国民が任意で回答するものです。
今回は、緩和は一度に、もしくは段階的が良いか ; 緩和が始まったらレストラン再開を最初に入れるべきかなどをきいています。オルバーン首相曰く、緩和自体は感染症専門家の意見で決まるが、「 どう緩和するか 」は市民の声を聞きたいとしています。
ワクチン接種
政府は現在、とにもかくにも新型コロナワクチン接種者数を、できるだけ早く、できるだけ多くするのに必死です。集団免疫を確保しない限り、通常生活の再開は不可能という考えです。
そのため、EU が緊急使用を承認した欧米のワクチンの他、ロシア製や中国製など、ハンガリー独自に使用を承認し調達を始めています。これまで契約したのは、EU共同調達の枠組みでは合計 987 万人分、ロシアおよび中国製は合計 350 万人分です。
ロシア製、中国製も配布開始
昨年 12 月末以来、ハンガリーには合計 88.9 万人のワクチンがこれまでに到着。
- ファイザー ( 米 )・ビオンテック( 独 ):38.7 万人分
- アストラゼネカ ( 英 ):8.4 万人分 ➞ 現在は、18~60 歳で慢性疾患のある人のみ
- モデルナ ( 米 ):2 万人分
《 ハンガリー独自調達 》
- シノファーム ( 中国 ):27.5 万人分
- スプートニクV ( ロシア ):12.3 万人分 ➞ 現在は、60 歳以上慢性疾患のない人のみ
※ いずれも 2 回投与が必要
( 2021年2月23日現在 )
2 月 23 日現在、少なくとも 1 回は接種した人の数は 約 46 万人。そのうち 2 回終了は 約 21 万人。接種優先第 1、2 グループ である医療従事者、高齢者介護施設の入所者と職員への接種は実質的に終了し、現在は第 3 グループ(高齢者)、第 4 グループ ( 18 ~ 60 歳で慢性疾患を持つ人) に入っています。
もっともハンガリーの 18 歳以上人口は 800 万人弱のため、まだ僅かです。( 接種は妊婦を除く 18 歳以上が対象 )
政府の計画では、今後は中国製、ロシア製の供給が加速するため、4 月上旬にはワクチン希望登録をした人すべて( 約 250 万人) が接種できている見通し。
ハンガリー人の接種意欲は昨年末時点よりは増大していますが、特に中国製への信頼度は低いまま。政府はどのワクチンも安全性、有効性は 70% 以上なので受け入れるよう促していますが、今後どれほどスムーズに接種が進むかは未知数です。
なお、接種計画は国が一元管理しており、引き続き、国家医療保険に加入している人のみが対象です。非加入の外国人についての制度はまだ確立されておらず、ワクチン投与を行っている民間クリニックは現在ありません。
新型コロナ免疫証明書
ワクチンとセットで注目されるのが、「 新型コロナ免疫証明書 」です。EU レベルでも協議は続いている一方、ハンガリー政府は 2 月、独自で交付を計画していると発表しました。
対象者は次の 3 つのグループです。
- ワクチン 2 回接種完了の人
- 過去に感染、治癒した人
- 抗体検査で抗体が確認された人 ( 医療機関による正規の証明書が必要 )
交付開始時期は未定。また、証明書を所持する人がどのような権利 ( 制限措置から対象外になるなど ) を持つのかも、具体的にはまだ決定していません。
入国条件は変わる?
入国規制は昨年 9 月以降、基本的には変わっていません。
商用目的は制限なしで入国可能(隔離義務なし、PCR陰性証明も必要なし。商用であることを証明する文書は必要)。
ハンガリー人やその家族、また永住許可証、滞在許可証所有の外国人やその家族も入国可ですが隔離義務 ( 10 日間 ) があります。観光目的の入国は禁止です。
今後注目すべきなのは、前述の「 国民との協議 」に、外国人の入国条件に関する質問が含まれていること。
入国は、パンデミック収束まで、ワクチン接種もしくは免疫証明を提示できる人のみにすべきかどうかを聞いています。
「 国民との協議 」は「 質問 」の形を取りながらも、政府の考えが見え隠れするものがこれまでにも多かったため、本件についても政府が検討していることが伺えます。
参考:現在の制限措置一覧
現在の一連の措置の大半は 11 月中旬に導入されたもの。在留邦人が知っておいた方がよい主要項目をまとめました。
- マスク着用義務 ( 公共共交通機関、商店・モール、郵便局や役所など。人口 1 万人超の自治体では、屋外も義務 )
※ 6 歳未満のこどもは義務免除。 - 夜間外出禁止
20 時から翌朝 5 時まで
仕事、通勤、緊急事態は除く - 集会、イベントは原則禁止
家族、プライベートの集まりは、最大 10 人 ( 14歳未満はカウントしない ) - レストラン、カフェ、バーなどは閉鎖
デリバリー、テイクアウトのみ可 - 商店は 19 時で閉店
- ホテルは商用、教育目的の訪問者のみ宿泊可能。観光客は宿泊不可
- 余暇施設は閉鎖 ( 美術館、博物館、劇場、映画館、動物園、公共温泉、フィットネスジム、アイススケートリンクなど )
- 大学はデジタル授業、寮は閉鎖
- 9 年生以上 ( 高校に相当 ) はデジタル授業
- 路上駐車は無料 ( 禁止区域以外 )。 商用の屋外、立体駐車場は19 時~翌 7 時まで無料
- 入国規制 観光目的の入国は禁止
- 病院は面会禁止
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