
ハンガリー北西部で 3 月 6 日、家畜伝染病である口蹄疫 ( こうていえき ) の発生が確認されました。
発生は 1973 年以来、実に 52 年ぶり。感染していたのは牛です。伝染力が非常に強いため、感染が認められると殺処分され、農場や周囲への立ち入りは禁止されます。
人に感染することはあるのでしょうか、また牛肉を食べたり牛乳を飲んでも大丈夫でしょうか? 口蹄疫についてまとめました。
もくじ
口蹄疫とは
口蹄疫* は、牛、豚、羊、いのしし、鹿などの偶蹄類 (ぐうているい ) の動物に感染するウイルス性の病気です。
*ハンガリー語: ragadós száj- és körömfájás 、英語;foot and mouth disease
感染すると口や蹄、乳頭などに水ぶくれができるのが特徴。発熱や食欲不振を伴い、足を引きずることもあります。
ハンガリーでは 3 月上旬、ジュール・モション・ショプロン県のキシュバィチ村 ( Kisbajcs、下地図の赤丸地点 ) で、1400 頭の牛を飼育する農場で感染を確認。
この病気は伝染力が極めて強く、急激に広がります。治療方法がないため、農場で 1 頭でも感染が確認された場合は、すべて殺処分、埋却となります。
欧州では、ドイツ北東部ブランデンブルグ州で 1 月に感染を確認済み。こちらは 1988 年以来 37 年ぶりの発生とのこと。欧州は陸続きのため、各国とも警戒を強めています。
日本では、2010 年に宮崎県で発生しましたが、その後は確認されておらず、現在は WOAH ( 国際獣疫事務局 ) により「ワクチン非接種口蹄疫清浄国」として認定されています。
次に人やペットに影響があるか、質問形式で見ていきましょう。
人に感染することはありますか?
人に感染することはありません。
偶蹄類 ( ひずめが 2 本または 4 本の草食動物 ) がかかる伝染病です。
感染した家畜の肉を食べたり、牛乳を飲んだりしてしまっても大丈夫ですか?
食品安全監督局による検査や監視システムがあるため、通常、感染した家畜の肉や牛乳が市場に出回ることはありません。
仮に食べたり飲んだりした場合も、人体には影響はありません。
ペットは安全ですか?

イヌ、ネコ、鳥、ウサギなどのペットには感染しません。
また馬も奇蹄類のため、感染しません。
注意すべきこと
「人間には感染しない」と言っても、注意すべきことはあります。
例えば、感染した家畜を触ったりそばに行ったりすると、ウィルスが人体や洋服、靴などにつき、知らない間に運んでしまうことがあるからです。
日本帰国の際
日本の農林水産省は、外国から病原体が日本に入るのを防ぐため、水際対策を強化しています。
一時帰国の際は、ぜひご注意ください。
在ハンガリー日本大使館からも、3 月 10 日付で口蹄疫に関する注意喚起メールが届きました。
- ハンガリーで使用した汚れた作業着や長靴は日本に持ち込まないこと
- ハンガリーで畜産施設を訪れたり、家畜のいる場所に行った場合は日本入国時に「動物検疫カウンター」にいくこと
が求められています。

農林水産省の口蹄疫に関する情報はこちら
また、口蹄疫の感染例あるなしにかかわらず、ハンガリーから日本に肉製品を持ち込むことは基本的にできません。
動物園に行くとき

ハンガリー国内では、病気の拡大を防ぐため、国家主任獣医官が厳格な措置を講じています。この措置は畜産関係者だけでなく、一般市民にも影響を及ぼしています。
感染が確認されたジュール・モション・ショプロン県では、偶蹄類を飼育している動物園への入園が禁止に。再開タイミングは、今のところ不明です。また動物を使うイベントも、3 月 17 日までは禁止です。
また、ブダペスト市営動物園は予防的措置として、10 日から当面、動物ふれあいコーナーを閉鎖すると発表しました。
今後、その他にも自主的に制限措置をとる動物園も出てくるかもしれません。訪問を予定している方は必ず事前にチェックしてください。
暮らしへの影響は
3 月 10 日現在、キシュバィチ村の農場以外での感染報告はありません。
しかし、すでにハンガリー国内から偶蹄類の動物を国外へ輸送することは禁止されています。
また、イギリスは直ちに、ハンガリーおよびスロバキアからの牛、豚、羊、鹿、およびそれらの生肉や乳製品の商業輸入を当面禁止すると発表。
スロバキアが対象に含まれたのは、キシュバィチ村がスロバキア国境からわずか1キロメートルの地点に位置しているためです。さらに、イギリスはドイツに対しても同様の措置を講じています。
日本もドイツ産の偶蹄類の肉製品や乳製品の輸入を一時停止に。ハンガリーについても、同様の措置が取られることでしょう。
ハンガリー国内では、現時点で牛乳や肉の供給不足や価格高騰などの問題は発生していません。
一方で、今後少なくとも数か月、輸出向けの生産が多い畜産農家への影響は深刻になると見られています。
【参考文献】
- 日本農林水産省 口蹄疫とは
- 青森県庁 「口蹄疫とはなんですか」
- ハンガリー食品安全当局(NEBIH)口蹄疫特設ページ