日本人がハンガリーで妊娠・出産 ~誕生そして入院生活~

ハンガリー在住 3 年目のまじゃおらさん ( 30代、女性 ) は、当地で第 2 子を妊娠、出産しました。その体験談を綴った連載、第 4 回目は、出産時のお話です。当日の流れや公立病院での入院生活についてのあれこれをレポートしています。

 

≪まじゃおらのプロフィール≫
年齢:30 代
保険:ハンガリーの国家医療保険に加入 ( TAJ kártya あり)
在住地:ブダペスト
妊娠、出産経験:日本で有り、ハンガリーでは初
ハンガリー語レベル:初級 ※英語での日常会話は OK
第2子出産年:2023 年

遂に出産

出産予定日から遅れること数日、いよいよその時がやってきました。2人目といえど、外国での出産は初めてです。

事前に準備しておいてよかったこと、あの時こうすればよかったと思うこと等を当日を振り返りながら、お伝えします。病院内の環境も具体的に細かく書いていきます。

【午前】

05:00  本陣痛が来ていると確信。週末の早朝だったため、上の子のお世話をお願いしていた友人に電話。

05:30  友人がタクシーで自宅まで駆けつけてくれてバトンタッチ。

06:00  アプリでタクシーを呼び、大荷物をもって移動。※入院準備のあれこれは、前回の記事に書いています。

≪メモ📝≫ 日本のような陣痛・破水が始まった妊婦さん向けのタクシーサービスはハンガリーにはありません。なので、タクシーアプリをダウンロードしておくのがベストです。ブダペスト市内の場合は、すぐに配車してくれます。電話口で話さなくてもボタン1つでできるので、このような時にも助かります。

06:30  病院着。深夜時間ではなかったためか、早朝だったにもかかわらず、産婦人科病棟入口は開いており、インターフォンを押して解錠してもらう必要はありませんでした。

07:20  子宮の収縮具合を確認する NST ( ノンストレステスト) を行いながら、紙面での入院・出産手続き。ドクター ( 英語が話せる方が多い ) はまだ居らず、事務員さんとはハンガリー語のみでやりとり。

NSTを受けながら、書類に記入。Photo by まじゃおら

07:50  廊下で待機していた夫と合流し、分娩室へ。付添人も立会い OK助産師さんも英語は苦手とのことで、ほとんどハンガリー語のみでしたが、身振り手振りも踏まえて一生懸命伝えようとしてくれて、とても親切でした。

≪メモ📝≫
事前に自分と夫の個人情報、新生児の名前や住所などをまとめて書いた紙を用意していたので、書類作成はスムーズにできました。個室希望&無痛分娩希望、妊娠中の検査で要注意となっていたことなどを伝えました。

公立病院の分娩室です。バスタブやシャワー、トイレなどが1つの部屋にまとまっています。 Photo by まじゃおら

08:30  この頃、陣痛の感覚は5分を切って 4 分以内になっていました!到着時から痛みレベルがもう一段階上がったと感じ、助産師を呼ぶことに。この時はまだ無痛の麻酔をしてもらえておらず、助産師に強まる痛みを訴えました。

≪メモ📝≫
「 ペインキラー ( 痛み止め ) 」の単語が聞こえ、麻酔をしてもらえるのかと思いきや…… 続きはのちほど、仰天①エピソードで。

09:00  痛みが増強。NST を行いました。この時、無痛分娩の処置はいつなのか確認すると「まだ」とのこと。

09:20  破水。2 名の女性ドクター ( 英語可 ) と 2 名の助産師が入室。母体を見て、分娩の準備に取り掛かっているようでした。再び、無痛分娩を申し出たのですが、一言「自然分娩でいきます」と。絶望の瞬間でした。苦笑

09:30  出産。赤ちゃんは気道に何かを詰まらせていたため呼吸をしていませんでした。助産師の懸命なマッサージや医師が吸引機を使って適切に処置したおかげで、2 分後に大きな産声をあげました。産声をあげない我が子に不安が募る中でしたが、医療スタッフの落ち着いた姿を見てパニックにならずに済みました。

生まれたて。 Photo by まじゃおら

 

分娩後の縫合、新生児の処置、カンガルーケアなどは、分娩室で行っていました。

【午後】

13:00 入院部屋へ移動。個室が空いていたので、利用できることに。( ※個室事情は前回の記事でレポートしています。) 部屋に着くと既に昼食が運ばれていました。時々、私の様子を見に医療スタッフが部屋に入ってきました。

≪メモ📝≫
移動に車いすが必要か聞かれたのですが、断ってしまったため、自力で階段を下りることに。エレベーターはありますが、車椅子を使っている方、医療スタッフが諸々を運ぶためのものなので、普段使いはできません。 皆さんは、くれぐれも産後直後に頑張りすぎませんように。

赤ちゃんは新生児ルームに居て、いつでも会いに行けると説明を受けました。

新生児ルームの様子。 Photo by まじゃおら

 

14:00 夫は、上の子のために一旦帰宅。

16:00 夫と長男が差し入れの食べ物を持ってお見舞い。( 覚悟はしていましたが、昼食があまりにも貧相で、差し入れをお願いしました。)

新生児ルームから赤ちゃんを連れて面会室 ( というよりもはや階段の踊り場兼ロビー ) で、赤ちゃんにご対面。その後、ベビーはまた新生児ルームへ。

公立病院の母子面会はこのような感じです。 Photo by まじゃおら

 

17:00 夕食。昼食の時点でも全く期待はしていなかったのですが、産後の食事と思えないほどのものでした。家族に差し入れをお願いして正解 ! 

左からお茶のティーパック、パン切れ1枚、チーズ、マーガリン、1.5%の牛乳、以上。 Photo by まじゃおら

20:00 看護師の巡回。後陣痛で横になっても寝られず、痛み止めを持ってきてもらいました。

この日の夜は赤ちゃんは新生児室。母子別室で休ませてもらえました。翌朝 6 時以降で会えるとのこと。

【 2日目 】
朝 6 時半から母子同室に。食事の感じや面会の様子は 1 日目同様。医療スタッフは頻繁に巡回していました。
この日の夕方 4 時に、翌日の午前 10 時に退院となることを告げられました。
【 3日目、退院当日 】
午前 04:30  血液検査のため、看護師が子どもを連れて行きましたが、すぐに戻ってきました。
午前 06:30  病院にいる Védőnő ( 保健婦さん ) が部屋に来られて、私の保健婦さん ( 居住区により決まっています )と家庭小児科医を確認。両者に連絡を入れるとのこと。

≪メモ📝≫
担当の Védőnő ( 保健婦さん ) と家庭小児科医の名前と連絡先は紙にまとめて書いておくことをおすすめします。

この時、BCG 予防接種のため、子どもは医師の元へ。言われていた通り、1 時間程度で終了して戻ってきました。

ハンガリー子どもの強制予防接種

2018.04.13

午前07:30 朝食、退院の準備。退院に関する書類にサインをしたり、我が子の名前を確認されたりと、諸々の手続きがありました。手続きの時は、事務員さんが部屋まで来てくれます。

午前11:00 個室利用代金を支払い、退院。言われていた予定より1時間ほど遅くなりましたが、それでも午前中には自宅に戻れました。

 

仰天① 痛み止めには熱~いシャワー!?

無痛分娩を希望していた私。陣痛の痛みが増してきて、看護師に訴えたところ、かなり痛いの?と質問されました。

「めっちゃくちゃ痛い。痛みのレベルが上がってる!」と言うと、「よし!じゃあペインキラーしましょうか!!OK ? 」と返事が。

私は「イエス!プリーズ!!!」と即答。ようやく無痛分娩の麻酔をしてもらえると思い、看護師の案内に従って移動しました。しかし、その先はなんとバスルーム……

Photo by まじゃおら

状況が呑み込めずでしたが、「ペインキラー ≠ 無痛分娩の麻酔」ということはわかりました。

看護師によると、ちょっと熱めのお湯のシャワーを腰部周囲に当て続けると痛みが和らぐとか。

藁にもすがる気持ちだったので、皆の前で素っ裸になって、シャワー室に入りました。ここまでくると、もう羞恥心はありません。苦笑

シャワーを浴び続けること30分。確かに少し楽になり、考える余裕も出てきました。

当時、冬のガス代が高騰している話題でもちきりだったので、「こんなに熱いシャワー出しっぱなしにして怒られないかなぁ?」「出しっ放しでもいいんだよね?大丈夫?」など、旦那と話していました (笑)

何かある時以外は、助産師さんは部屋の外に出てしまって割と放置状態。「もし、このままシャワーを浴びてる最中に破水したり、子宮口が全開!という事になったら、全裸でバスルームで産むんだろうか?笑」とだんだん不安になっていきました。痛みが和らぐので、ずっとシャワーを浴びていたかったのですが、意を決して分娩台に戻りました。

でも、やっぱり無痛分娩を希望していたのに、最後まで対応してもらえなかったのはつらかったです。

 

仰天② 思ったよりもずっと快適!? 公立病院の個室を公開

Photo b y まじゃおら

左上の写真は、個室入口から撮った写真です。

光が差し込む大きな窓、衣類を入れる棚、冷蔵庫に電子レンジを完備。

冬は暖房が良くきいていて暖かく、全く寒くありませんでした。寧ろ、長袖長ズボンで過ごしていた私は、ちょっと暑かったぐらいです。

室内にあるトレイとシャワーは清潔感があり、キレイでした。

個室のシャワールーム Photo by まじゃおら

入院患者さんたちは、キャミソールや半袖型のワンピースを室内着にしている方が多かったです。面会場所に行く時や、ちょっと肌寒いなと言うときようにバスローブを持ってきている方々も!

カーディガンやジャケットより、バスローブは丈も長くパジャマ姿を隠せるうえに、多少汚れても気にならないので、このアイデアには「なるほど💡」と思いました。

相部屋は間仕切りカーテンなし入口扉も開けっぱなしで、トイレとシャワーは部屋の外に共有のものがあります。相部屋の場合は、プライベート空間が全然ないなという印象でした。

1 日 約 10,000 Ft ( 4,000円強 ) を払えば、公立病院でもちゃんとプライベートを確保できる、となると個室がいいなと思います。

 

仰天③ 噂以上にわびしかったお食事メニュー

これを見ておわかりかと思います。

長い夜を前にした「夕食」がとにかく足りない。家族から差し入れを持ってきてもらうのを前提にしているんじゃないかというレベルです。

プライベート病院で出産する場合は、もっとちゃんとした食事のようなのでご安心を。

公立の場合、国家医療保険があれば出産入院費用は、基本は無料。( 個室利用の部屋代や特別治療があった場合などは別途費用 )

一銭も払わずに済むので、文句は言えないんですが……。それでもせめてリンゴやバナナ、欲を言えばゆで卵1個ぐらい添えてあればいいのに、と心の中で呟いていました。

出産に関わらず、ハンガリーの公立病院で入院される場合の食事は、このような感じです。ご家族やご友人、周りの方に差し入れをお願いしておくことをおすすめします。

 

ハンガリーで妊娠・出産の総額

ハンガリーの国家医療保険 ( TAJ kártya ) を持っている私の場合は、

  1. 妊婦健診はプライベートクリニック
  2. Védőnő ( 保健婦 ) による健診は公的機関
  3. 各検査は基本的には公的機関 ( 血液検査、尿検査、妊娠糖尿病検査など )
  4. 出産場所は公立の総合病院 ( 聖ヤーノシュ病院 Szent János Kórház )

でお世話になりました。

①~③までで 174,500 Ft、④は個室利用代の 20,000 Ft だったので、トータルで 194,500 Ft ( 81,000 円程度 ) でした!

ただ過去の記事でも綴ったのですが、 妊娠中期直前に大きく体調を崩してしまう事態に。それもあって①の妊婦健診を定期的に受けられなかったこともあり、健診回数は通常より少ないです。

それらの諸事情や物価の上昇も考慮すると、私のような選択をして出産する場合は、30 万フォリント弱 ( 12 万円程度 ) は最低限必要になると心構えしているといいかなと思います。

※マタニティ用サプリメントや医療機関へ通う交通費などは含まれていません。

次回は、退院後の母子のケアについてなどをお伝えします。日本でいうところの地域の保健サービスを産後すぐに受けられるのですが、ハンガリーは意外にも?手厚いんです!どれぐらいの頻度でどんなサービスを受けられるのかをまとめます。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

まじゃおら

ハンガリー在住 3 年目、二児の働くお母ちゃん。第一子は日本で、第二子はハンガリーで妊娠出産。ハンガリー語はまだまだ、英語も専門用語になると自信がない中でしたが、病院通いにも奮闘し、無事に元気な子を出産しました!その体験談を連載しています。