日本からの小包が届くのは、とても嬉しいもの。それなのに、到着後に受取人が結構な額を支払うことが続出しています。場合によっては内容物よりも高い額、ということも。これは税や通関ルールが一昨年に変更になったためです。送る側も、受け取る側も、賢く気持ちよくいくように、基本情報まとめました。
もくじ
どんなに少額でも VAT 27% が!
まず大原則として、日本から郵送されたものをハンガリーで受け取る場合、必ず通関手続きがあります。そして「 一部の例外を除いて、税金がかかる 」という心づもりでいた方がよいです。EMS ( 国際スピード郵便 ) でも 船便でも変わりません。
それは、付加価値税 ( VAT )* 制度が 2021 年 7 月 1 日に変わり、EU 域外からの物品には、どんなに少額でもその価値に応じて課税されるようになったため。
日本の「消費税」と似ています。ハンガリー語ではáltalános forgalmi adó、略してÁfa (アーファ) と言うのが一般的です。
従来は 22 ユーロまでは免税でしたが廃止に。仮に 100 円のものを日本のウェブショップで購入し、ハンガリーに取り寄せた場合でも VAT がしっかり加算されます。
「 ヒドイ!」と思うかもしれませんが、これはハンガリーだけのことではありません。EU 全体の VAT 関連規則が変更されたためです。
不幸なのは、ハンガリーの VAT の標準税率が 27% ということ。この水準は EU 域内どころか、世界でも最高なのです。
まさに「泣きっ面に蜂」のような制度。例えば、1000 円 のモノが 6000 円の航空便料金で届いた場合の VAT は 次のように計算されます。
( 1,000 円 + 6,000円 ) x 27% = 2,620 円
単純に 1,000 円 x 27% = 270 円、ではないのです。
フォリント換算にすると、1,000 円 ( 約 2800 Ft ) のモノを受け取るのに、VAT を 7,000 Ft も支払う羽目になります !!
さらに、物品の価値が 150 ユーロ以上であれば、関税もかかります。
そして、どの物品にも通関手数料がかかります。
贈答品、学生向けには免除措置も
それでは、家族や友人が送ってくれるものはすべて課税されてしまうのでしょうか。また、引越に伴い、洋服など身の回り品を送る場合はどうなるのでしょうか。
これらの場合は、一部の例外が認められています。
贈物 ( gift ) は、個人から個人へであれば、引き続き 45 ユーロまでは免税扱い。その条件は、
- 商業用の物品ではないこと
- 単発的に送られること
- 受取人の使用や消費が目的 ( Personal use ) であり対価の支払いなしに送られること
EMS などの送り状にある【 内容品種別 】で必ず「 贈物 ( gift ) 」にチェックを入れてください。これが曖昧なものに関しては、個人から個人宛でも基本的に商用品として見なされ課税されるようです。
身の回り品を送る場合は、フルタイムの留学生は免税となります。ただし、食料品や、新品の洋服 ( 値札がついている、未開封など ) は、課税対象になるのでご注意ください。
ただし、これらの場合も受け取り側の支払いはゼロではありません。必ず通関手数料がかかります。
まとめたのが次の早見表です。
便利な早見表
内容物の価値、種別により、課税されるか・非課税になるかが決まります。また課税される場合も、150 ユーロ以上ならば関税もかかります。
香水・コロンはすべて付加価値税が、たばこ・酒類には別途物品税がかかることもご留意ください。
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※ハンガリー郵便は、日々の為替の変動に関係なく、フォリント換算での金額を固定しています。改定は毎年 1 回で、2023 年は以下の通り。
45ユーロまで = 19,000 Ft まで
150 ユーロまで = 64,000 Ft まで
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プロからのアドバイス
この記事作成にあたり、NX ドイツ ( 旧ドイツ日本通運 ) ブダペスト支店の矢野典子さんに、荷物をなるべく快適に受け取れるようアドバイスを伺いました。矢野さんがお客様から聞いた豊富な事例も元にしています。
- 期限内に支払う。荷物がハンガリーに到着すると、Magyar Posta ( ハンガリー郵便 ) から Eメール、または電話の SMS ( テキストメッセージ ) で連絡が来る仕組みになっています。その中に納付すべき金額が書かれており、オンラインで支払い手続きを行えます。極端におかしな金額で、「 どうしても納得できない 」というのでない限り、期限内に支払いを完了するのが良いようです。期限を過ぎて長びくほどに、支払金額が高くなるだけでなく、どんどん手続きも複雑になっていきます。そして荷物もなかなか受け取れません。
- 送り状に記入する値段に注意する。身の回り品を発送する時、コートなど購入時の値段を書いてしまうと、その値段を元に VAT ( 付加価値税 ) が計算されてしまいます。使用済みならば値段を低く抑えて書くのが良いです。値札がついたまま、袋に入ったままのものは新品と見なされ、その額に基づき課税されますのでご注意ください。
- 急ぎでないならば船便。EMS や航空便は郵送料が高く、その分にも VAT が課されるため。また一度に何箱も送ると税関で開梱検査になり細かくチェックされることが多いので、年に何度かに分けるなど小出しにする方が良いようです。( ただ、それでも開梱検査になることはあります。 )
- 持ってこられるものは自分で持ってくる。身の回りのものは、できるだけ自分でスーツケースに入れて持ってきた方が、通関手続きもなく税を支払う必要もなく楽です。航空券で無料で預け入れられるのは 1 個だけでも、有料で「 エクストララゲッジ ( 追加受託手荷物 ) 」をお願いすることができます。料金は各航空会社や重量によりバラつきがありますが、追加 1 個あたり 1 万円前後が多いです。
- サンプル品は商業品と同じ扱い。少額のものでもサンプル品として送られたものは、すべて課税対象です。
ハンガリーでも、Magyar Posta や DHL、銀行、通信会社を装ったフィッシング詐欺のメール、SMS が送られてくる事例が発生しています。
小包が届く予定がなかった時、よくわからない時は、周囲のハンガリー人やハンガリー語がわかる方に尋ねるのが一番です。むやみやたらにリンクを開いたり、カードその他の個人情報を入力したりしないでください。
体験談
いくつかの体験談を集めてみました。中には、「 なぜこの額の請求?」と一般市民にはよくわからないものもありました。
1 冊 100 円の本が 3 冊送られてきたけれど
いまだに「 謎 」
内容物は食料品が中心で価値は 7911 Ft。ですが、郵送料は 0 Ft 扱い。 そして、食料品は課税対象と聞いていましたが、なぜか VAT ( 付加価値税 ) は課せられず。
その代わり、ハンガリー郵便のサービス料 ( 通関手続き料も含まれています ) が 4000 Ft ……と、意味不明。ですが、もう何週間も税関で荷物が止まってしまい、支払ってすぐ届けてもらえるなら、もう払おう、となりました。いまだにこの計算は謎です。
学生さんの受け取りは、基本手数料のみ
郵便局で確認したところ、
- フルタイム学生さんの荷物に関しては、個人の使用済みの身の回り品ならば VAT ( 付加価値税 ) は免税。 ハンガリーの学生証明書の提示が必要。
- 食品は免税対象にならない。また、新品のものも対象外。
- 免税でも、受け取り時に手数料は発生する。
ということでした。
その時の荷物は 10 kg 未満で、手数料は 500 Ft 程度で済みました。ただ、食品が含まれていたので、その分に関しては VAT を支払うことに。
その食品には、当地でも手に入るようなものも含まれていました。日本で買う方が安いですが、その商品の郵送で VAT を払ったり、ハンガリー語での手続きに手間もかかります。現地で買えるものであれば、わざわざ送ってもらうのは避けた方がいいでしょう。
追記 ( 2024.03.22 ) : 当サイト管理人はお荷物の受け取りなどに関わるトラブル対応をしているわけではありません。こちらの体験談で登場する学生さんは友人だったため、お手伝いしておりました。荷物の受け取りに際してのご相談、通訳サポート等のご依頼はお控えください。
誕生日プレゼント、わーい!と思ったら
以前だったらこのサイズは ❝ Small Packet ❞ 扱い。ハンガリーに到着しても、郵便受けにただ投函されるだけでした。今はそれはなくなり、普通の小包扱いとなったみたいです。
申告書も手書きから機械入力に切り替わっていました。ただ、私の連絡先が住所のみだったので、郵便局から事前の Eメールなどはなく、配達員が来た際に約 900 Ft を請求されて直接支払いました。
内容申告額が高くなくても、郵送料や手数料ともにしっかりした額に。
贈物だから 45 ユーロまで免税かと思っていたんですが、配達員に尋ねてもわからないと言っていました。送り主もびっくりの件でした……。
参考サイト
- Magyar Posta ( ハンガリー郵便 ) サイト:
ハンガリー語:https://www.posta.hu/vam
英語:https://www.posta.hu/postal_customs_agent_service
- 海外へのお荷物の送り方 初心者ガイド ( 日本郵便 ) https://www.post.japanpost.jp/int/howto/index.html
- 国際郵便 ( 日本郵便 ) https://www.post.japanpost.jp/int/index.html
その結果、ハンガリー郵便からは E メールで次を納付せよとのお知らせ。
内容物の価値 ( küldemény érték ) +国際郵便代 ( Nemzetközi szállítási díj )の合計3,164 Ft に対して VAT ( 付加価値税 ) 27% で 854 Ft。
オンライン支払の場合の郵送手数料 ( postai szolgáltatási díj online fizetéssel ) を加えて合計 1,253 Ft でした。 ( 当時のレートで 450 円あまり。つまり内容物の価格自体よりも高い額 )。
オンライン支払期限は実質 3 日で、「 期限内に支払わないと、高くなります」という一文もしっかり。後々面倒になることを避けたくてすぐに支払いました。
自分の仕事の成果物を受け取るのに自分で支払うことになり、なんとなく釈然とせず。もしかして「 贈物 」として送っていただくようお願いすればよかったのかもしれません。
ただその場合は、送り主は担当者個人にしなければならず、日本側の会社の経費にできなくなる恐れがあるので、いずれにしても無理だったかもしれません。
今回は少額だったので大きな打撃になったわけではないです。でも今後は、値段が張るもの、重たいものなどは注意して、送ってくださる側ともよく相談しておこうと思いました。