数ある税の中でも、ハンガリーには世界的にも珍しい税があります。その名もチップス税 ( chipsadó ) 。健康リスクのある食品・飲料品への税です。
政府は現在、課税品目を 2020 年 1 月から大幅に拡大することを検討中。現行制度はどのようなものか踏まえたうえで、今後、何がどう厳しくなりそうか見ていきましょう。
今の制度 – 糖分、塩分などに課税
チップス税は、2011 年 9 月に導入。当時、物珍しさから日本でも「 ポテチ税 」とニュースになったため、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
砂糖、塩、カフェイン、タウリンなどを多く含むものに課されています。ハンガリーは肥満、そしてそれに伴う生活習慣病が深刻な社会問題となっており、それを抑制するのが目的でした。
まずは、現在、どんなものに税がかけられているのか見てみましょう。
表: チップス税の課税対象品と課税額 ( 2019 年 1 月 1 日~ )
次は何 ? 依存症を改める野心的な試み
政府はこれまでにも、毎年のように制度を改正しています。そのたびに対象品目は増大し、税額も上昇。ただ、現在検討中とされる案は、今までより格段に厳しくなっています。
例えば、「 砂糖不使用 」であっても人工甘味料が入っていれば課税対象に、と言った具合です。
つまり甘いものへの依存症自体を、根本から変えていくのが狙い。これは相当野心的!
具体的には、次の品目が検討されています。( 出所: 日刊紙 Népszava / ネープサバ )
【 甘い食品、飲料品 】 砂糖でなくても、人工甘味料 ( édesítő ) が含まれていれば課税。
ただし、課税額は砂糖含有製品の約 3 分の 1 に軽減。
【 果汁、野菜ジュース 】 非課税対象を、野菜・果物果汁を最低 75%に引き上げ。( 現在は25%以上ならば非課税 )
【 コーンフレーク類 】 100 グラム中の繊維含有量が 8 グラム未満の場合に課税。
【 エナジードリンク 】 現在課税されているタウリン、カフェイン以外でも、他の刺激や覚醒作用のある成分を使っていれば課税。
【その他】 砂糖漬けドライフルーツ、種子類、野菜チップス、ポップコーンなども対象として検討。
これまでの効果は ?
正直なところ、街行くハンガリー市民が全般的にスマートになった印象は受けません。
チップス税は、砂糖や塩そのものに課税するものではないため、そもそも限界があると言えるでしょう。さらに、肥満の大きな原因になる高脂肪分食品も含まれてはいません。
そのため、改正案は「 効果が乏しいためもっと厳しくする 」のが目的かと思ったほどでした。
それがびっくり。そうではなくて
「 とても大きな効果が出ているので、もっと広げる 」
ということなのだそう。
半信半疑で調べてみると、人材省が今年の夏に発表していた効果に関する調査分析資料を発見しました。結果をかいつまんでご紹介しますと…
消費者調査で
◎ 2011 年 導入以来 1 年で、課税対象品の消費が減ったと回答した人は 3 割前後に。
◎ 2014 年に実施した調査では、前回調査から消費量がさらに減ったと答えた人は 20 ~ 30 % ( 食品群による )。
「 価格の上昇 」と「 不健康と学んだ 」が主な理由でした。
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一方で、この税の導入で「 税負担を軽減するために原材料を変えた 」と回答した食品・飲料品メーカーも 40 % にのぼりました。( この税を支払うのは、食品メーカーのためです )
政府ももちろんチップス税のみが伝家の宝刀と考えているわけではないようです。報告書は税の効果を倍増させるためにも、健康な食事、生活習慣について啓蒙プログラムの充実が必要と結んでいます。