風邪やアレルギー、様々な要因で引き起こる咳。室内外の温度差やたばこの煙、ホコリや花粉でも発作的に咳き込んでしまうこともあります。ここでは、そんな時に役立つハンガリー家庭の知恵袋がテーマです。長引く咳に用いるハーブ、外出時に役立つグッズをご紹介します。最後には、秘宝ハーブの知っトク情報もお届けしています。
つらい咳には、昔ながらのハーブパワー
今回の主役ハーブは、「 ヘラオオバコ 」。日本でも道端や庭で見かける葉の広い多年草「 大葉子 ( オオバコ ) 」の仲間です。ヨーロッパ原産のヘラオオバコは、当地で薬草として重宝されてきました。
ハーブとしての日本語名は、プランタゴ。ハンガリー語では、Lándzsás útifű ( ラーンジャーシュ・ウティフゥー ) と呼びます。
その殺菌作用、抗炎症作用から、ラーンジャーシュ・ウティフゥーは優れた咳止めハーブとして知られているのです。肺や気管支の炎症にも効果を発揮するといわれています。
ハーブを使った咳止めシロップ
ハンガリーでは昔から、長引く咳には、このラーンジャーシュ・ウティフゥーのシロップなのだそう。当地のドラッグストアを見ると、いくつかのメーカーの製品が並んでいます。3歳以上の子どもから飲めるもの、夜のつらい咳用など、年齢や症状に合わせて選びます。これらは処方箋なしで購入 OK 。
先日、私はひどい風邪をひいてしまいました。咳だけが長く続き、夜もなかなか眠れませんでした。そんな時、ハンガリー人の同僚のすすめでこのハーブシロップを使ってみることに。
試したのは、ハンガリーブランド Innopharm ( インノファルム ) のシロップ。ラーンジャーシュ・ウティフゥー自体には、際立った味や独特の匂いはありません。このシロップには、鼻がスーッとするようなペパーミントの香り入り。味はあまめですが、ほどよい酸味もあり、意外と美味しいです。
その甘さで、ある日のことをふっと思い出しました。
それはまだ私が保育園に通っていた頃のことです。風邪をひき、お医者さんから飲み薬を処方されました。幼い私はその味を気に入ってしまい、なんと一気飲み。それに気づいた母はビックリ仰天! 適量以上に薬を飲んだ結果、案の定、お腹を下すという甘苦い経験をしました。
ラーンジャーシュ・ウティフゥーシロップも子どもが好きそうな味なので、がぶ飲みに注意が必要かもしれません。
シロップを飲んでしばらくすると、咳が落ち着いていることに気がつきました。一度飲んだだけで治るわけではないですが、思っていた以上に息をするのが楽になったのです。咳がつらい時に試してみる価値はありますよ。
ビタミン c とエキセアナ ( 風邪に効き目がある薬草 ) 入りです。
≪ 1日あたりの推奨される投与量 ≫
15 歳以上の青年および成人 : 15ml ( 付属スプーン 3 杯 )
7 歳から 14 歳の子どもは : 5ml ( 付属スプーン 1 杯 )
3 歳から 6 歳の小さいこどもは : 2.5 ml ( 付属スプーン半分の線まで )
咳がとまらない時には、ハチミツ入りのハーブ飴
風邪だけでなく、アレルギーなど咳をともなう症状はさまざま。外出中に花粉症で咳が止まらなくなってしまった、なんてことも。そんな時に役立つのは、携帯できる咳止めグッズ。
おすすめは、ラーンジャーシュ・ウティフゥーとはちみつがはいった飴です。1 箱 20 個ほど入って 750 Ft ( 約 300 円 ) 前後。比較的コンパクトで持ち運びにも便利です。
※ Köhögés ( クフゲーシュ ) … 咳、ellen ( エッレン ) … 対して、 cukorka ( ツコルカ ) … 飴
ラーンジャーシュ・ウティフゥーは、口腔・咽頭部の炎症にも良いとされ、当地ではうがい薬としても用いられます。のどが痛い & 咳が出る、ダブルパンチの時にうってつけのアイテムです。
知っトク☆ 気管支の問題におすすめのハーブティ
以前、風邪をひいて咳がつらい、のどが痛い時のハンガリー家庭療法で kakukkfű ( カクックフー )* ティ をご紹介しました。
* kakukkfű の日本語名は『 タイム 』です。
ハンガリーではもう一つ、呼吸器系の病気に使われるハーブがあります。それは Fekete bodza virág ( フェケテ・ボッザ・ヴィラーグ ) 。日本語名は、セイヨウニワトコの花。イギリスの作家 J・K・ローリングの小説 『 ハリー・ポッター 』では、ニワトコの杖が伝説の死の秘宝とされるほど、すごいパワーをもつ植物なのです。
実際に、飲用するとどんな効能があるかというと、
- 熱や風邪の時に汗をかかせる ( 発汗させることで解熱効果を期待 )
- 上気道 ( 鼻から咽頭まで ) の疾患の際には、咳を抑制する
- 副鼻腔炎時に抗菌作用
- 利尿作用 ( 腎臓機能を助ける )
- 血圧を下げる
- リウマチの痛みを和らげる
さすがニワトコ属!その効力は絶大です。風邪や咳でお悩みの際は、ハーブのちからをかりて、温かいティでほっと一息ついてはいかがでしょうか。
bodza ( ボッザ ) … ニワトコ
virág ( ヴィラーグ ) … 花
※ ヨーロッパに生息するセイヨウニワトコは、通常のものと比べて、実は熟すと黒くなります。それに由来し『 黒ニワトコ 』の名がついています。