まさかの骨折、まさかの結末 ( 上 )

テニスの大好きなハイジ大福さん ( 40 代、在ハン歴 14 年 ) 。 ちょうど 1 年前の 5 月、いつものように友人らとラケットをふり気持ちよく汗をかいた後、左足首をひどく捻ってしまいました。

診断は「 骨折 」!  それから自宅で涙々の「 ある処置 」が始まります。この方法、日本ではまずあり得ないこと。でもハンガリーで骨折すると一般的。「 上 ・ 下 」と 2 回に分けてお届けします。

あの 3 センチが…

怪我現場。思わぬところに潜む危険。 Photo by ハイジ大福

「 ゴギッ 」 鈍い音を耳にし、一瞬血の気が引いた。同時に地べたにしゃがみ込んだ。

「 折れたかも ? 」イヤな予感と不注意だった自分への反省や後悔、そして家族のスケジュールが一気に頭の中を駆け巡る。

「 とにかくすぐに冷やしましょう! 」心配してくれた友人達の声でハッと我に返り、更衣室のシャワーで捻ってしまった左足首を冷却した。腫れてくる様子はなかったが、ズキンズキンと一定のリズムで痛みが響く。

急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

怪我をしたのは、テニス中ならまだしも、終わってから。その時の私は、右手にはボールいっぱいのカゴ、左手にはラケット。スプリンクラーの水が迫ってきたのが見えたので、きゃぁ!なんて笑いながらコートの外に逃げようと走った。

その一瞬 ! わずか 3 センチの段差でコケたのである。

あぁ、たったの 3 センチ、されど 3 センチ。甘く見てはいけない ! でも、やってしまった事はしょうがない!

ミニスカおば様と同じ運命に ?

ブダペスト市内の大型総合診療所。受付時点で既に長い列。 Photo by ハイジ大福

まずはとにかく医者に行かなければ。

多忙を極める夫に迎えに来てもらうのは憚れたので、自分で行くことにした。びっこを引けば何とか歩けるし、右足だけでも運転可能。この国ではそれほどメジャーではないオートマの愛車に感謝しながら向かった。

地元の大型総合診療所は、玄関に入るなりまず列ができていた。

ようやく受付を済ませエレベーターのボタンを押すも、故障中。立ちはだかった本日二つめの試練。

しかし、めげずに手すりにつかまりながら階段を上り、何とか待合室  ( = つまりハンガリーでは廊下のこと )  に到着した。そこで待っている人の数を見て、最低でも 1 時間はかかるだろうなと覚悟した。

ツイてないことは重なるもの。

途中、ここまで一人で来た自分へのご褒美、これからの景気づけに、と近くの自販機でコーヒーを買ったまではよかった。が、椅子に戻ろうとケンケンしたら、コーヒーを派手にこぼしてしまった。

あぁ…。

ティッシュを取り出ししゃがんで床を拭いていると、「 あらぁ~かわいそうに ! 」と 60  代後半 ( あくまでも推測 ) の女性から同情された。

よく見るとその女性は、右足にはそれは鮮やかなグリーンのギプス、左足はそれとマッチさせたようなハイソックス  ( でも白 ! ) 。そしてなんと、デニムの超ミニスカートといういで立ち !!

自分のギプス姿が浮かんでしまった。

もしもギブスとなれば、今履いている長ズボンは脱がないといけない。

車の中にはテニスのスコート ( かなりミニ ) ならあるけれど…。このおば様と同じスタイルに !?

きっと折れてない、ただの捻挫 !  心の中で祈りながら落ち着こうとした。

ついに審判下る

思った通り 1 時間程待った後、診察室へ。挨拶をしながら恐る恐る入った。

医師は見るからにお爺ちゃん。優しそうで、経験はありそうだ。

一通りの問診と触診を受け、今度はレントゲン室に行くよう指示された。足を引きずりながらの移動は、僅かな距離が千里にも感じた。

そこでも 20 分程待ってから撮影。

その後、また診察室前廊下で  30 分待ち、ようやく再び診察室へ。

今度はお爺ちゃん医師の隣で、不愛想な看護師さんがオレンジ色の注射器を手に何やらスタンバイしている。

イヤな予感…。

医師が、レントゲン画像を見ながら言った。

骨折だな、こりゃ。2 週間は足を上げて絶対安静に。ベッドから出るのはトイレの時のみ !!

そして恐れていた、ギ・プ・ス 装着の指示を受けた。

医師は、これからズボンを切り裂かないと、と言う。

頭の中であのミニスカおば様自分の姿がシンクロして、真っ先に夫に電話した。

「お願い ! スカート、とにかく長めのスカート持ってきて !! 」

電話をかけている横で、看護師さんがふっと微笑んだ。その手の中にあるのはやはり注射器。

怖い… 何をされるのだろう私 ?!

まさかワタシが ?

骨折確定でかなりのショックを受けたのに、追い打ちをかけるようにさらに驚くべきことが私を待っていた。

看護師が手にする注射について、医師が淡々と説明を始めた。

今からやり方見せるから。これから 4 週間は、アナタが家で毎日忘れずにお腹に打つのだよ。

え ?

ギプスをつける人は、誰でも打つものだから。

え ? え ?

耳を疑った。

頭の中でもう一度医師の言葉を繰り返す。

しかし、どう考えても「 アナタが 」と言ったよね ?

つまり「 ワタシ 」ってこと ?

看護師の資格も経験も無い、ド素人の「 ワタシ 」が自分で注射を打つって ?

えーーー ! ?

唖然としていると、看護師さんが慣れた手つきで私の T シャツを捲り上げ鮮烈な一言。

「 こうやってお腹の脂肪を摘まんでそこに打つの !  刺せる場所があるじゃない !  よかったわっ 」

思ったことがそのまま口に出る典型的なハンガリー人だった。そしてブスッ !

骨折した人が自分で注射をするのは、ハンガリーでは稀なことではないらしい。

ギプスで固定していると、静脈に血栓 ( vérrög ) ができるリスクがあるとのこと。日本では「 深部静脈血栓症 」と言われ、エコノミークラス症候群としても知られている。だから血が固まらないように抗凝固薬を毎日投与するという。

夫がスカートを片手に持って登場。

これまでのビックリ仰天話を一気に説明したが、ハンガリー人の彼は驚く様子もない。

やはりここでは普通なのか !?

そして次は、ギプス室に行くことになったのである…。


次回 ( 下 ) は、自宅療養と一時帰国について、そして大どんでん返し。2018 年 5 月 25 日公開予定です。お楽しみに !

まさかの骨折、まさかの結末 ( 下 )

2018.05.25
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ABOUTこの記事をかいた人

Heidi Daifuku

在ハン約 14 年、天文学をこよなく愛するハンガリー人夫+3人のティーンエージャー ( 女、男、女 ) とブダペスト在住。趣味は、創作料理、生け花、森林浴、和雑貨収集など。友人から預かっているワンちゃんとの戯れ & 無心になれる庭の雑草取りをしている時が最近の至福の時。