ハンガリー滞在・移住で注意したい「 マダニ 」記事の後半です。今回は、身を守る方法について。
まずは「 咬まれないよう」にするのが一番! ハイキングなどでの理想的な服装と虫除けスプレーについてご紹介します。
それでも咬まれてしまったら...。そんなときの対処法についての情報も、体験談を交えながらお届けします。
咬まれないようにするには
まずは服装から見ていきましょう。
① 服装
ポイントは、肌の露出を可能な限り避けること。
理想的な服装は:
✔ 長袖シャツ
✔ 長ズボン
✔ 靴下 ( 裸足でサンダルは ✖ )
✔ 白い衣服 ( マダニが見えやすいように )
特に脚は、マダニが最初につくことが多い場所。用心した方が良いです。地面や草の上にそのまま腰掛ける、というようなこともやめましょう。
ただ、ハンガリーの夏は 35 度近くになることもあるので、「 理想の服装 」はかなりツライですね。お子さんであれば、なおさらかもしれません。
そういう時のために、次のような虫よけスプレーを利用する、または服装と併用してみてください。
② 虫除けスプレー
スプレーは、マダニの絵が描いてあったり、kullancsriasztó ( マダニ除け ) と書かれているものを選びましょう。
選ぶ際には、ぜひ有効成分 ( hatóanyag ) と濃度をチェックしてください!
化学物質としてはディート ( DEET ) とピカリジン ( 別名イカルジン Picaridin ) があります。
最近は、ディートの人体への影響を心配して、ピカリジン使用の製品が注目されているようです。
その他、生化学物質として IR3535 ( エチルブチルアセチルアミノプロピオン酸 Etil-butil-acetil-aminopropionát ) 。
植物由来には、ユーカリ油 ( PMD、P-mentán-3,8-diol ) からのものと、アロマオイル ( növényi illóolaj ) 使用のものがあります。
ただし、全国伝染病センター ( OEK ) がマダニ忌避に有効としているのは、ディート、ピカリジン、IR3535 のみです。
表: 主な虫除け成分と特徴など
有効成分の濃度が高いほど効果は持続します。
濃度が低いと、効果を保つためには 1 ~ 2 時間毎に吹きかけなければならないことに。
同じ製造会社でも、製品により有効成分の濃度が異なることがあるので、外出先や時間、体への影響リスクも考えて総合的にご判断ください。
また、使用の際には製品に記載された用法・用量を守りましょう。特に妊娠中の方、赤ちゃん、小さなお子さんは気をつけてください。
私が地元の薬局で紹介されたのは次の 5 つでした。
○ BITE FREE szúnyog- és kullancs riasztó spray 75ml ( ピカリジン 20% ) 1,550 Ft
○ VAPE DERM Invisible szúnyog- és kullancs riasztó 100ml ( ピカリジン 15% ) 1,684 Ft
○ NATURLAND SZÚNYOG ÉS KULLANCSRIASZTÓ SPRAY 100ml ( エチルブチルアセチルアミノプロピオン酸 20% ) 1,589 Ft
○ GalaktivBio pumpás kullancsriasztó aerosol 100ml ( 植物由来、ユーカリ油、ヤシ油、レモンオイルなど。香料・保存料無添加 ) 2,019Ft
※ Ft = ハンガリーフォリント、100 Ft = 約 43 円
価格はhazipatika.comより 2018 年 4 月 20 日現在。
その他、手首や足首のバンド ( kullancs karkötő ) もあります。
ただし、国家公衆衛生サービス局 ( NNK ) は過去に、当局の許可なしに粗悪な品が輸入販売されているケースがあると注意喚起しています。
効果がないことに加え、香料などでアレルギー症状を起こしかねないとのこと。認可済みの正規の医薬品には OTH engedély száma ( 認可番号 ) 、 JÜ から始まる番号などが入っています。
③ 帰宅後の点検
服装、虫除け対策をしていても、家に帰ったら頭のてっぺんから足の先までチェックしましょう。
マダニは、蚊と違って最初に「 咬まれた 」自覚症状がないことが多いからです。( 咬むときに気づかれないように麻酔のような成分を出すため )
特に、大人に比べて身長が低く、地面近くにいることになるお子さんには注意してください。虫除けスプレーを洗い落とす意味で、シャワーをするのもお勧めです。
マダニが洋服についていることもあるので、家では着替える方が無難。私は洗濯機にさっさと入れてしまいます。
※ 日本の国立感染症研究所が、「 マダニ対策、今できること 」 と絵入りで防護手段を説明しています。ご参考になさってみてください。
.
.
咬まれてしまったら
いろいろと万全の態勢を整えたつもりでも、咬まれてしまうことはあります。
そのようなときは、なるべく早く除去するのが鉄則。咬着時間が長ければ長いほど、病原体を持っているマダニからの感染の危険が高まるからです。
マダニは、咬むと頭を人や動物の肌に突っ込む形になります。
胴体は外に出ているので、除去の際は「 根本 」 をピンセットでつまみ、上に引き上げます。( 必要ならほんの少し捻って引き上げる。 ) 咬みついている部分をすべて取り去ることが大事。
そのため、専用のピンセット ( kullancskiszedő csipesz ) や、スプーンと呼ばれるもの ( kullancs-eltávolító kanál ) が薬局で販売されています。
専門家によると、マダニの胴体は叩いたりしても外れることはありません。
また、焼いたり、針で刺すなどして、殺してから取ろうとするのは厳禁。マダニを不必要に刺激し、よけいに毒を排出することがあるそうです。
オイルやクリームを塗るなど、一部で良いとされているのは「 迷信 」のため絶対にしないでください。
気持ちの良いものではありませんが、除去方法の動画はこちらでご覧いただけます。 ( wmv 形式 )
Dr. Zati Vatansever ( トルコ・アンカラ ) 動画
心配ならば医者に
実際のところ、素人が喰いこんだマダニすべてを取り除くのは至難の業。
ご心配であれば、きちんと医者に除去してもらうことをお勧めします。
咬まれた後 6 週間くらいは、発熱など症状が出ないか経過観察。症状がでたら、かならず医者にかかりましょう。
どのような症状がありうるかは、「 マダニにご注意! ( 上 ) 」 をご覧ください。
薬局では、「 マダニテスト ( kullancsteszt = クーランチテスト ) 」という検査キットが入手できます。これは、咬んだマダニの方がライム病の病原体を持っていたかを検査するもの。
咬まれた方の人間が感染したかを確かめるものではありません。「 咬まれた = 感染した 」 ではないことからも、全国伝染病センター ( OEK ) は検査結果に振り回されるのは賢明ではないとしています。
最後に、管理人自身の体験談です。
昨年 6 月、背中を咬まれました。
気づいたのは朝、ベッドの中。でも、実際に飛びつかれたのは、前日夕方の可能性が大。畑のあぜ道で写真を撮っていたからです。
大慌てで取りましたが、最後に残った小さな黒いものがどうにもこうにも取れず。不安が膨らむばかりで何も手につきません。
そのためプライベートクリニックへ行くことに。そこでは検温の他、血圧や心拍数まで計測したりと随分と大袈裟な印象でしたが、無事、針のようなもので除去完了。
料金は 2 万 Ft ( 約 8 600 円 ) 程度と、大変高額でした。
「 あんな小さいマダニに! 」と歯ぎしりしましたが、感染症リスクを考えれば安心料には代えられません。その日のうちに予約が取れ、実際の診察も待ち時間ゼロ、というプライベートならではの対応も良かったと言えます。
今振り返ると、あの時はショートパンツにサンダルという、完全に NG な恰好でした。しかも、虫除けスプレーもせず同じ場所にずっと立っていました。
幸い、その後の症状発生はなし。相変わらず、あぜ道で写真を撮ったり走ったりしています。でも、あんな思いをするのはもう御免。今では、「 衣服 」&「 虫除け 」の二重装備で向かっています。
.
皆さまも、気をつけながら、アウトドアスポーツなどどうぞお楽しみください。