待った!お部屋探しのその前に ~事例編~


暮しの基盤となる『 住居 』。その揉めごとに巻き込まれると、心身ともに負担が大きくなります。でも、海外生活最初のビザ申請時に、滞在先アパートを確保しておく必要があるため、皆さん慌ててしまいがち。急がば回れ、少し立ち止まって、契約前にトラブルを未然に防いでいただければ幸いです。『 事例編 』では、実際にどのような問題があったのか、その相談事例をご紹介します。

ハンガリーでの新生活に向けて、お部屋探しをされる方、日本に戻る予定のある方、その関係者には、特にご一読いただければ幸いです。

待った!お部屋選びのその前に ~ 基本編 ~

2019.05.08

契約書から読み解く、アパート選びの留意点

こちらの一覧表は『 基本編 』でも掲載しています。これらの注意ポイントを見落とすと、どんなトラブルに巻き込まれる可能性があるのでしょうか。まずは、契約書に記してあるはず ( 記しておきたい ) 内容を見てください。

残念ながら、今までに何件もの相談を受けてきましたが、最多トピックは 8 『 敷金 』 、続いて 10『 備品の損失 』について。さて、どんな問題が発生したのでしょうか。

トラブル事例 No.1 : 敷金が戻らない

水回りの設備は、きちんと動くか ( お湯の出具合など ) 要チェック! Photo by Attila

ハンガリーには礼金なるものはありませんが、敷金 ( 通常家賃 1 ~ 2 か月分 ) は存在します。それは、家賃の滞納や引っ越す際に修繕が必要となった場合に備えたデポジットとして渡すもの。これは、部屋をきちんと使っていれば転居時に返還されます。しかし、この返金を巡る問題が一番多い相談と言っても過言ではないのです。

日本でも敷金に関するトラブルはよくある話なのですが、これがハンガリーで起こると大変。言語も違うので、交渉するにも通訳者を介さなければならない事態になったり… 弁護士を雇うことになったり… 。取り戻すために、予想外の出費や労力を使うことになるのです。

退去時に困らないように、入居の際に必ずしておきたいことがあります。それは、部屋の写真を撮ること

どうして写真が対策になるのでしょうか。その理由は、敷金の返還を拒否する理由に『 家屋のダメージ 』があるからです。

しかし、この原因は借人自身にないこともあります。実は、前の住人が破損したものを修理しなかったり、掃除を怠ったまま賃貸に出しているアパートがあるのです。

本来であれば、入居時に賃主や代理人が一緒に破損部分を確認すべきなのですが、それをしないこともよくあります。自分で部屋の状態をチェックし、写真を撮っておくほうが良いです。普通であれば、撮影を嫌がることはないはずです。

借りている側も丁寧に利用するのは、当然のこと。そのうえで、解約時に敷金問題が発生した場合は、写真が役に立つことがあるのです。

やはりお金に関わるトラブルは、和解で終わることはほとんどありません。写真がなければ、専門家や弁護士に協力をお願いして、返金となる事例ばかりです。( 中には、返還に至らないこともありました。 )  室内のコンディションは徹底的に確認してくださいね。

読者 K さんのアドバイスから

日本では、
入居時の現況確認シートの提出
② 退去時の現実回復義務
この2つが重要です。

ハンガリーではシンプルに、
‣ 普通に住めば出来る汚れや傷は、オーナー負担
‣ 故意過失による汚れや傷は、入居者負担
となります。

あまり神経質に貸すのも良くないし、でも乱暴に住まれたら悲しいし。普通とか価値観って難しいですね。

≪アイデア≫
ハンガリーでは、① の入居時状況確認シートは珍しいですが、これを準備しておくのも一つの手。「普通に住む」ということをどうとらえるか、は確かに難しい判断です。それを客観的にとらえる資料として、アパートを貸す方も借りる方も、トラブルを防ぐために用意しておくといいかもしれませんね。

Q. 入居時に、どんなところを気を付けてみればいいですか。

ハンガリーには古い建物が多く、築 100 年以上の物件は少なくありません。雨の日に湿気で壁にカビが生えたり、塗装がはがれることも。また、冬場は室内外の寒暖の差が激しいこともあり、結露で壁が弱くなることも考えられます。

カビが生えた壁

窓際の湿気で塗装がはがれてしまった壁

普通の賃人であれば、通常の使用による劣化 ( 経年劣化 ) の責任を借人に押し付けることはしないです。しかし、中には修理費欲しさに、敷金の返還を拒みトラブルになることがあります。

入居してから異変を感じる場合は、その経過を写真に撮り、メモを残しておくのが良いでしょう。

逆に、自らの過失でアパートに損害を与えてしまった場合は、すぐに家主に連絡してください。例えば、お風呂の水を止め忘れ、下の部屋に水漏れしてしまった事例もあります。家屋には保険がかけられているはずですが、修理費用等は誠意をもって賃主に相談してください。

その他、苦情になることが多いのは、『 楽器の使用 』可か否か。楽器 OK の場合でも、音に関する規則は建物毎に決められています。いつ、何時から何時まで練習してよいかは事前に伺ってください。その他、ペットも同様に入居前に相談をお願いします。

ルールや契約上の注意事項には、必ず従うのが原則。守れない可能性がある場合は、条件に合う他の物件を探しましょう。

トラブル事例 No.2 : 設備・備品の故障は誰が負担 ?

台所周りの家電製品は、使用や掃除の仕方が悪くて故障することが多々あります。  Photo by Attila

ブダペストの賃貸アパートの多くは、家電家具付き。そのため、家電製品や家具が壊れてしまいトラブルになることが多々あります。長年使っていたためにダメになることもあれば、使う側のミスで故障してしまう場合も然り。

ソファーで飛び跳ねて二つに折ってしまったなんてこともありました。これは完全に使用者の過失です。同等の価値のものを自腹で購入することになります。嬉しいことがあっても、どうかベッドの上でもジャンプされませんように。

自分で壊してしまった場合は、正直に賃主に伝えるのは当たり前ですが、原因がわからないこともあります。その時に備えて、入居時には家電製品は何年物か、まだ保証期間中かを尋ねてください。また、適切なメンテナンス方法の確認も大事! きちんと知っておくことは、借りているものを長く大切に使うためには必須です。

例えば、アイロン。ハンガリーでは硬水ですので、スチーム機能を使用する際、水道水は ✕ 。その他、水回りや台所は特に、日本での生活とは勝手が違うことが多いので、留意してください。

家庭の硬水対策 (1) ライムスケールの予防と除去法

2018.11.28

食器を割ってしまったり、壊してしまったのを自己申告しないで借人に立ち去られて困った、という家主たちの声も。このような問題を防ぐため、契約書とは別途に備品リストを用意していることがあります。それは、入居時、退去時に家主と借主で家屋内の物品状態を見るためです。

リストがないからといって、油断をしてはいけません。無いならば、自分で用意するのがベターです。これも身に覚えのないことで敷金の返還を拒まれないようにする策です。そして何より、借りている側も貸している側に対して誠実でありたいですね

トラブル事例 No.3 : 解約の仕方

3つ目は、敷金や備品の修理で揉めた際に、ネックになりかねないこと。それは、一覧表 13 『 解約方法について 』です。

契約書には必ず退去 〇〇 日 ( 〇〇 か月 ) 前には賃主に通達するようにと記載があります。通常は、60 日前まで ( 2 ヶ月前まで ) です。なぜこれだけの期間が必要かというと、家主が次に住んでくれる方を探す時間を確保するため。突然の転居は、家のオーナーにとって大きな損失になるからです。

ここでもう一つ気を付けることは、不動産契約を解約する際は、必ず書面にて両者の同意を記す必要があるということ。これはハンガリーの法律で定められています。

賃主からは、口頭でもメールでも良いと言われることがあるかもしれません。しかし、万が一、敷金の返金などでトラブルが発生した場合、適切な解約手続きを踏んでいなければ不利になります。念には念を入れて、ご留意ください。

契約期間について

1 年以上は留学するので、賃貸契約期間を滞在年数にしている場合があります。幸運にも、家主と良好な関係で、お部屋も ◎ であればいいのですが、そうでないことが大半。入居してから不便と感じたり、オーナーと相性が良くないなどの理由で、引っ越したいとなることも。しかし、契約期間内の際は、貸している側から同意を得なければ契約違反と見なされ、敷金が返されない事態にもなりかねます。2 ~ 3 年は確実にハンガリーで暮らす方も、 1 年毎に契約を結ぶのが安全です。

最後にもう一つ大事なこと

アパートの家主や管理人がどこに住んでいるのかを確かめてください。建物内でトラブルが起こった時に、助っ人となってくれるはずの人が遠くにいると、問題解決に時間がかかってしまいます。離れたところで暮らしていても、緊急時の対策をしているオーナーならば問題ありません。

お部屋選びの際は、賃主がどこに住んでいるのか、連絡を取りやすい状態かを必ず確認してくださいね。

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2019.03.22

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ABOUTこの記事をかいた人

武田友里

日本ハンガリーメディアート在籍の撮影コーディネーター ( Production Coordinator ) です。神戸大学を卒業後、映画などのロケ地として人気になっているブダペストの大学院でメディアの世界に飛び込みました。現在は、マルチリンガルを活かして、ハンガリーを拠点に中欧・東欧諸国での取材・撮影で走り回っています。