『 田舎で週末農業 』を楽しむブダペスト在住 A 子さん ( 50 代、女性 ) からの投稿です。10 月も中旬を過ぎたころ、虫など不活発になりそうな時期に、スズメバチ ( darázs / ダラージュ ) に刺されてしまいました。日曜日だったうえに、郊外では緊急で飛び込める病院もなし。その時は少しかゆいぐらいだったので、大したことない、とそのまま作業を続け帰宅すると…。体験の一部始終と、お出かけの際に気を付けておきたいことを綴っています。
週末を郊外で過ごしていたら…
50 代からの農業には少々不安がありました。しかし、忙しい日々の中で、新鮮な空気を吸いながら雄大な大地で体を動かすことは、今は大切な時間となっています。
そんな週末を楽しみ、10 月も半ばを過ぎたころでした。寒くなるとなかなか郊外へ行けなくなりそうで、また良いお天気でもあったので、マイ・ファームへ向かいました。心地よい秋風を感じながら農地作りをしていたその時! チクッと痛みが走ったのです。見ると、スズメバチが二の腕を刺しています !! 本能的にはたいた瞬間に飛び立って行ったので、一瞬の出来事でした。
当時は、スズメバチに対する知識がありませんでした。毒があるのか、刺し傷はどう処置すればいいのかわからず。農作業を手伝ってくれていた近所の男性が、自家製パーリンカ* ( 55 度 ) を患部に数回振りかけて、応急処置 ? 消毒 ? をしてくれました。一緒に来ていた高校生の長男に「アレルギーがなければ大丈夫 」と言われ、あまり深刻には考えていませんでした。
* パーリンカ ( Pálinka ) とは、 果物等を使ったハンガリー産の蒸留酒。アルコール度数は 37.5 ~ 86 % の強いお酒です 。
目立った外傷はなく、「 大丈夫だろう 」と高を括っていました。しかし、夜になると急に赤くなり、かゆみが出始めたのです。とりあえず、炎症がみられるところ ( 刺された箇所以外 ) には、日本から持参したムヒを塗っておきました。
刺されたのは二の腕でしたが、手首までどんどん真っ赤に腫れあがり…。翌日の夜には刺された箇所から 20 cm ぐらいまで赤く腫れているではないですか。夜中には、患部に水ぶくれが現れ…。
かゆみもかなり強くなり、眠れないほどに。人生初めての睡眠薬を飲みました。
内服薬、軟膏、患部の冷却
刺されてから2日目。ついに、お医者さんで診てもらうことに。その頃には、手首まで更に赤く腫れあがっていました。しかし、特別な治療をしてもらうことはなく、内服薬の Lendin ( 抗ヒスタミン薬のビラスチンが主成分 ) のみ処方されました。そして冷却をしてくださいとのこと。
ハンガリーは医薬分業のため、医師からの処方箋を持って薬局へ。薬は 2,300 Ft* ( 約 920 円 ) ほどで簡単に入手できました。
*Ft = ハンガリーフォリント。100 Ft = 約 40 円 ( 2018 年 11 月現在 )
その他、赤く腫れた患部には、処方箋なしで買えるFenistilを塗りました。虫刺され後の皮膚のかゆみ止めとして、当地では一般的な軟膏タイプの抗ヒスタミン剤です。
内服薬と軟膏、冷却で処置を継続。 幸いにも、4日後にはかゆみも腫れも少しずつおさまってきました。1 週間ほどで腫れがひき、2 週間程度で見た目でもわからないほどに回復しました。
恐いのは2回目
前回の診察を受けた際、医師から「 怖いのは次に刺された時だ 」とお達し。自分でもいろいろと調べたところ、2 回目はかなり注意しなければならいことがわかりました。
というのは、1 度刺された私の身体は抗体を作っているはず。再度刺されると過剰なアレルギー反応、つまり「 アナフィラキシーショック 」を起こす可能性があるからです。
この言葉は、昨今では、危険な食物アレルギー症状 (そば粉やナッツ類 ) として聞いたことがある方も多いかもしれません。少量でも体内に入ることで、急激な血圧低下や呼吸困難、意識障害を引き起こし、最悪の場合は死につながってしまうことも。でも原因になるのは、食べ物だけではなく、ハチ ( 蜂毒 ) もあるのです。
スズメバチは攻撃性が高く、今後も農作業中に刺される可能性は排除できません。でも、だからと言ってマイファームを諦めるつもりもありません。
そこで、自然とこれからも付き合っていくために携帯して損はないのは「 エピペン * 」。医師に処方をお願いしました。
*エピペンとは、ハチ刺傷、食物アレルギーなどによるアナフィラキシーに対する緊急補助治療に使用される医薬品。アナフィラキシーを起こす可能性の高い患者さんが常備しておくことで、発症の際に症状悪化防止に役立つ自己注射です。
全ての人がアナフィラキシーショックを起こすわけではないそうですが、万が一に備えておくに越したことはありません。私の場合、作業はたいてい週末で、近くに緊急で飛び込める病院があるわけではないのでなおさら重要です。
エピペン探しに悪戦苦闘
医師からの処方箋を持って、近所の薬局へ。しかし、そこからエピペン購入まで、長い道のりを辿ることになるとは想像していませんでした。
近所の薬剤店を 3 軒を回りました、が… 見つかりません。4 軒目は、息子とともにいった総合小児病院 ( Heim Pál ) の薬局。ここでも置いていないとのこと。その後、5 軒目にも行きましたが、ありません。どこも、取り寄せさえできない模様。医師から処方されたのに、入手困難とはどういうこと!?と驚きました。
数日かけて自宅周辺の薬局を何軒も訪ねたものの、見つからず… 。そこで、当サイト管理人をしている友人の友里さんに相談してみました。
彼女は、西駅近くの 24 時間薬局 ( 比較的品揃え豊富で薬剤室も大きめ ) で聞いてくれたのですが、ちょうど品切れ中。そこの薬剤師さんはとても親切で、エピペンがある薬局を確認し、教えてくれたそう。
「 〇〇 薬局で、15,000 Ft ( 約 6,000 円 ) で購入できるようです! 」と連絡をもらい、翌日、すぐに買いに行きました。すると…まさかの在庫切れ。この短期間で誰かが買ってしまったのでしょうか…。そこで教えてもらった次の薬局へ向かうも、またハズレ。10 軒目、ブダペスト 5 区にある Kígyó ( キジョー ) 薬局で、やっとのことで入手できました。ここでは取り寄せもできるそうです。
住所 : 1053 Budapest, Kossuth Lajos u. 2/A.
電話番号 : +36-1-318-5679
月~金 : 08:00-20:00 / 土 : 08:00-14:00
その他、いろいろな薬局を回る中で、外国人の対応に慣れている薬剤店も教えてもらいました。英語対応可、とのこと。
住所 : 1106 Budapest, Gyakorló u. 4/C. fszt. 2.
電話番号 : +36-1-263-1356
月~金 : 08:00-19:00 / 土 : 08:00-12:00
ハチミツ大国で気を付けること
秋は新しい女王バチが誕生し、成長期に入るのと同時に、餌の幼虫が減り、スズメバチの攻撃性・凶暴性が高くなるそうです。
私が指されたのは 10 月半ば。秋という季節に加え、ハチを寄せ付けてしまう黒い服装 ( ダークグレーの T シャツに黒いジーンズ ) 、甘い香りのする制汗剤を付けていました。今から思えば、自分からスズメバチに刺されに行ったようなものです。
私はもともと頑丈で筋肉質 ( やり投げ選手 ) で、ハチなんて怖くない、刺されてもどうってことない、と他人事でした。しかし、週末農業を楽しんでいたら、次はアナフィラキシーショックを引き起こす事態が起こるかもしれません。医者から言われて、ようやく危機感を覚えました。
冬が近づいてきていますが、ハンガリーは例年になく暖かめの 11月。自然の中へ遊びに行かれる方もまだまだいらっしゃることでしょう。
この痛い体験が、少しでも在留邦人の皆さんのお役に立てれば幸いです。